Q(MS-275) 初めての再発進行防止薬の選択を迷っています。 | KB 2018.9.19-14:29 |
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Q | 49歳、女性、愛知県在住。今回の再発をきっかけとして、サイトを拝見させて頂いております。MSです。
現在まで再発進行防止薬は利用していません。 8月に再発、入院し、パルス点滴治療をし、退院後約3週間経過しています。 現在はプレドニン内服もなく、次回受診日に再発・進行防止治療薬を決める予定です。
一生内服する薬であることや、途中で変更することも可能であることも説明されています。テクフィデラが2017年に承認された薬ではありますが、これしかないのかなとも思いつつ、迷っています。内服した方がよいのか、どの薬がよいのか決めかねております。 どの薬も使用してみないと副作用がどうなのか分からないと思っていますが、リンパ球減少や皮膚症状などを考えると、日常生活や仕事ができるのかなど考えています。 抗JCV抗体: 検査結果待ち。
今回、内服薬を利用した方が良いと、下記の説明をされています。 ・ガイドライン上、第一選択はインターフェロンだが、効果と副作用のバランスを考え、新しい薬であるテグフィデラも考えている。 ・症例数が多いフィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)も入院モニタリングで治療開始すれば使用できるが、定期的に心電図チェックが必要である。 完全右脚ブロックと上室性頻拍があるため、できれば避けたいところである。 ・活動性が高くないためタイサブリは考えていない。
病歴: 2004年 初発は頚髄の脱髄(現在は消失)病巣。 左上肢脱力感から両上肢の脱力感、しびれ感と知覚鈍麻。 体幹の知覚鈍麻。両上肢のしびれ・知覚鈍麻は現在も残る。
最近の症状と脳MRI: 現在、移動や運動に問題なし、歩行問題なし 2018年8月8日頃 :右眉毛の触感違和感あり、神内クリニック受診。 8月23日 :17日のMRIにてMS再発と診断され入院 【症状の経過】 ・右眉毛〜右額・生え際・頭皮の触感違和感・ツッパリ感・貼りつき感 右上口唇と舌尖のしびれ感。 右目の見にくさと異物感(眼科的には問題なし) ・以前からの両上肢しびれなどの症状は変わらず。 8/23〜入院治療 8/23〜 パルス1回目 症状改善わずか 8/29〜 パルス2回目 症状改善変わらず 退院後、プレドニン内服はない 抗アクアポリン4抗体 :陰性 脳MRI:白質変化は大脳15個あり・脳幹に1個。MS的、・活動性はないと言われている。
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A | 早期に再発・進行防止治療を開始するべきです。 脳MRIの病巣数は少なくありません。脳MRIに活動性は無いとのことですが、造影MRIでの観察頻度が不十分だったのではないでしょうか? また、通常MRIでは全ての活動性が分かるわけでもありません。比較的高齢で発症していることも障害リスクが高い要因です。
日本のガイドラインは時代遅れであり、欧米の専門家は自己注射薬を第一選択に利用することは無くなっています。 副作用の可能性が無いのであれば、より効果の高い治療薬を選ぶのが得策です。いずれの薬も一生利用する必要はありません。もっと効果があり安全でもある薬が、何れ利用可能となります。現在の薬でも、状況により変更することは珍しくありません。
ナタリズマブ(タイサブリ)は抗JCV抗体が陰性なら安全です。また陽性でも0.9以下であればほぼ安全です。6月毎の再検査は必要ですが。
2番目に効果の高いフィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)での徐脈、不整脈の可能性は最初の1,2日のみです。以後は安全です。私はこれまで670名に利用し、不整脈や心疾患の患者でも注意して開始して、問題はありませんでした。しかし、常に可能といえるわけではありませんし、経験の無い先生の場合は利用を躊躇するのは無理ありません。 リンパ球数は減少しますが、リンパ節中に残っていて免疫応答には利用されていると考えられ、絶対数の減少ではなく、感染症の増加もほぼありません。欧米人では皮膚のメラノーマと基底細胞癌の増加が認められていますが、元々、欧米人では日本人の7倍ある腫瘍ですが、切除で治癒するのがほとんどであり、日本人ではほとんど在りません。
従ってジメチルフマル酸(テクフィデラ)が一番利用し易い治療薬です。3番目に効果の高い薬ですが、前2者には及びません。 皮膚の紅潮や痒みは3,4割の人が経験しますが、1,2月で軽減し、薬は要らない方がほとんどで、中止の理由になったのは360人で5人でした。副作用を軽くする注意点があります。 この薬で早期に治療を開始するのが、貴女の場合、最も現実的ではないでしょうか。しかし、もし一度でも再発を経験したり、MRIで新病巣が出たら、治療変更を考えるべきです。
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