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医療講座

妊娠とタイサブリ(ナタリズマブ)

K Hellwig ら  Multiple Sclerosis Journal 2011,17(8)958-963

はじめに: タイサブリ(モノクローナル抗α4インテグリン抗体薬)は、再発寛解型MS 患者の再発回数と脳病巣負荷、障害の進行を効果的に抑制することが分かっている。この薬は僅かではあるが、進行性白質脳症(PML)という重篤な有害事象を起こすことがあるため、病巣活動度の高い患者に使用が限定されている。一般には、この薬を使用する患者は妊娠しないように完全に避妊するか、妊娠を希望する場合には、懐妊予定の3ヶ月前からその治療を中止するよう要請されている。だからタイサブリによる妊娠に関連した患者での研究はない。

この論文は前向き(妊娠が分かってから出産後3ヶ月まで)の研究で、タイサブリ治療中(最後の月経から少なくとも2ヶ月前まで使用と定義)にまちがって偶然に妊娠してしまったMS患者35名(全員が妊娠を確認後にタイサブリを中止)での妊娠経過中のMS再発、産児の状態などを、疾患修飾治療薬(インターフェロンなど)を使っていない23人のMS患者の妊娠出産と比較してある。

結果:35名のタイサブリ暴露妊娠で、5人(14.3%)は、最初の3ヶ月で流産(うち一人は人工中絶)した。残る29人の妊娠では、28人が健康な新生児を出産した。うち一人の新生児は指が6本あるという畸形を伴っていた。畸形が軽く手術で修正可能であるため妊娠は継続され、37週で早産、体重がやや少なかった。この新生児の母は最後の月経をすぎて5日目までタイサブリの治療を受けていた。

タイサブリ暴露児の体重はコントロール児と変わりがなく、37週の早産率(6,6%)は僅かにコントロール(4.8%)より多い。  タイサブリ治療の母親のMSの再発回数(24時間以上持続するもの)は、妊娠前にはほとんど0回/年であったものが、全員の合計で最初の3ヶ月に1回、次の3ヶ月に2回、最後の3ヶ月に2回であった。再発時にはステロイドパルスで治療された。出産後の3ヶ月ではこれらの人々で再発は無かった。7人(うち2人が産後再発を経験)は出産後1ヶ月でタイサブリ治療が再開された。再発回数はコントロール患者と有意差はなく、コントロール患者でも妊娠中は再発回数が妊娠前より有意に減少していた。

考案:猿やモルモットでの動物実験では、タイサブリで畸形がおこることが報告されているが、今回の患者のデータでは、一般の妊娠による畸形率と比べて有意に高いというデータはなく、また妊娠確認後タイサブリを中止されたMS妊婦に有害事象も見られなかった。
 29出産児のうち一人に指が6本ある畸形がみられたが、健康妊婦の出産でもこの畸形は4%にみられるので、タイサブリとの因果関係を指示するものではない。
流産は一般妊娠の10〜20%に起こるので、タイサブリに多いわけではなく、初期から観察されて数が多くみえるが、むしろ少ないかもしれない。
タイサブリ妊娠ではタイサブリを使用しないコントロール妊娠にくらべて、再発は3〜6ヶ月の間に多い傾向があったが、再発回数での差はなかった。タイサブリ治療患者では妊娠中と出産後には疾患活動度は減少していた。
授乳については、データがない。タイサブリ治療患者では禁止となっている。タイサブリ治療出産後では子宮修復がやや遅れる可能性がある。
                                       (齊田恭子による抄録)











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