中枢神経(脳、視神経、脊髄)のグリア細胞に対する自己免疫による攻撃、破壊が持続し、多発性の炎症性病巣を生じる慢性疾患。病巣のできる部位により、多彩な神経症状が、再発、寛解や慢性進行による障害の進行をもたらす。
NMO=Neuromyelitis Opticaの略
視神経、脊髄の症状が多く、脳症、小脳症状は比較的少ない
視神経、脊髄、大脳・小脳のいずれの症状もありうる
視神経脊髄炎(NMO)と多発性硬化症(MS)の区別が重要。治療が異なる。
症状での区別は、通常困難である。
(1)、(2)のどちらかが有れば診断が確定する
(1)アクアポリン (Aquaporin)-4抗体陽性(血液で)
(2)脊髄MRIで長い脊髄病変(脊髄の中心部に連続する3椎体以上の長さ)を認め、
リンパ腫、サルコイドーシス等の他疾患が否定できる。
(1)、(2)、(3)全てを満足する
IgGオリゴクロナールバンドの出現
MSの50%、NMOの15%で出現するが、いずれかは決定できない
IgGインデックスの上昇はMSで多い
髄液のリンパ球の分析
細胞数が50以上だとMSはほぼ否定できる
数の変動などで疾患活動性の判定が可能だが、利用しにくい
星状グリア細胞膜のアクアポリン-4(water channel)分子の消失が特徴
その結果、アストログリア(星状グリア)が破壊され消失する
アクアポリン-4分子は星状グリアの細胞突起が血管内皮細胞や脳軟膜へ接する
部分に多く、免疫的攻撃の対象となっている
(MSの場合の攻撃標的である髄鞘(ミエリン)・乏突起グリア細胞と異なる)
特徴
女性に多い(男女比=1:9)
発症年齢が高いことが多い(平均40才)
脊髄の中心部(灰白質)に病巣がでやすい(アクアポリン-4分子の発現が多い)
脊髄、視神経に症状で初発が多い
再発回数が多い
頑固なしゃっくり、嘔吐、呼吸障害が多い
失明、車椅子(両下肢の強い麻痺)が多い
強い脳障害・意識障害を生じることがある
視床下部病巣で生理不順、尿崩症など分泌障害がでることがある
中枢神経の主に白質に、脱髄病変が反復あるいは慢性的に生じ、多発する
中枢神経系(脳、脊髄、視神経)の白質(神経線維が多いところ)に主な病巣
神経細胞のある皮質の病巣や神経線維の軸索の病巣が時間とともに増え、回復
神経細胞とその軸索の障害が多くなると回復が難しく、障害が固定・進行する
髄鞘が主に攻撃され破壊されている
髄鞘とは 希突起グリア細胞の突起が神経細胞の主要な突起である長い軸索をぐるぐると
10-50回も取り巻き、突起の細胞膜のみが重なり合い、厚い膜を形成して
できたもの
脱髄病変とはどのような病変か
脱髄病巣=主に髄鞘(ミエリン)が破壊される、神経細胞の軸索は比較的に保たれる
ことが多い
小静脈周囲にTリンパ球、食細胞(マクロファージ)等の炎症細胞が浸潤
抗体を分泌するBリンパ球の侵入もみられる
個人差 細胞種、抗体の有無など、病変のでき方は多様で個人差がある
抗体が沈着している病巣をもつ場合は、血漿交換治療が有効と言われている
時期の差 初期は、血液脳関門の破綻があり、細胞、タンパクなどが血管から侵入して攻撃する
後期は、血液脳関門の破綻がなくなるが、中枢神経を囲む軟膜にリンパ濾胞ができ、
中枢神経内で慢性的炎症が持続するようになり、これまでMS治療に利用されている薬物が
効果を発揮しにくくなる
MSは戦前の日本に殆ど無かったが、近年増加し続けている NMOは地域差なく増加していない? |
発病を決定するのは体質、環境、感染の3要因の組み合わせ |
NMOではほとんど研究が無く、まだわかっていないが
MSと類似していると想像される。以下はすべてMSでの研究による。
環境因子・感染が原因の65%(欧米人のMSで)
子供の時代に感染や環境の影響を受け発症の可能性が固まる
緯度 赤道近い地域では患者が少ない。
太陽光の紫外線が免疫能を高めるビタミンDを体内でつくり
ビタミンDが発症を抑制する可能性がある
ビタミンDは感染に罹りにくくすることがわかっている
感染因子 (ヘルペス属などウィルスや細菌?)が発症の引き金。
食品では長鎖飽和脂肪酸(魚油)が発症を抑制する?
遺伝的体質が原因の30%
欧米人では家族内発症が約10%
日本人では家族内発症は100人に1人程度
白人の一卵性双生児で一人がMSの時に、もう一人の双生児もMSとなる可能性が30%
少なくとも30個程度のMSを発症させやすくする遺伝子(疾患感受性遺伝子)の組み合わせ
で決まる。
家族でも全く同じ体質組み合わせは稀
HLA(白血球組織適合性抗原)、女性ホルモンなどが知られている
遺伝病(遺伝が決定的原因)ではない
自己免疫疾患の一つである |
発病や再発のきっかけ
発病しやすい体質を持つ人に、何かの感染が引き金となり、免疫のバランスが崩れて、
自己免疫による攻撃が始まる。
ストレスも発症を促進するが、原因ではない。
正常では生じない自分自身の細胞の抗原物質(分子)に対する免疫(=自己免疫)
が生じ、自己の組織に対する、間違った攻撃、破壊を仕掛ける
自己免疫疾患には関節リュウマチ、甲状腺炎、Ⅰ型糖尿病など多数の病気が含まれる
免疫とは
通常は侵入者であるウィルス、細菌などを排除する自己防衛の仕組み
リンパ球が主役でT細胞とB細胞(抗体=IgG, IgM, IgA 等を分泌する)よりなるが
他にNKT細胞、食細胞(マクロファージ)等も
感覚異常:感覚低下
しびれ感(シビレと言う言葉は使わない)、かゆみ
痛み、持続的な痛み
発作的な神経痛
NMOでは痛み、しびれ感が特に多く、強いことも多い
筋力低下、運動麻痺:足、手、顔面。歩行困難が多い
視力低下:白くかすむ、暗い暗点、欠損
(眼鏡をかけ、片目をおさえ、片目ずつ調べること)
複視(二重に見える、片目では一重に見え、視力低下ではない)
言語障害、嚥下障害
精神症状:物忘れ、我慢できない、思考が遅くなる、積極性がなくなるなど多彩
排尿・排便障害:
頻尿(我慢しにくく回数が多い)、尿失禁(もらす)
尿閉(出せない)、出しにくい
排便障害と同時にでることもある
レーミッテ徴候:首を前屈すると、背中を電撃様の痛みが足に向かって走る
有痛性けいれん:時々、手足など体の一部の筋が勝手に強く収縮し、自由がきかなくなり、痛い
ウートフ現象:体温が上昇している時(風呂、運動時、室温・気温上昇、湿度上昇などで)、過去に
出現し回復して消えた(軽くなった)症状が、一時的に出現する
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