MSの診断・治療 | 症状(痛み・しびれ感以外)[共通] |
NMOの診断・治療 | 痛み・しびれ感 [共通] |
抗MOG抗体疾患の診断・治療 | 再発・見分け方 [共通] |
MS/NMO/抗MOG抗体疾患いずれか不明の場合の診断・治療 | 妊娠・出産 |
リハビリ・回復の見込み・後遺症 [共通] | その他 [共通] |
2016/12/5更新
A: 脳幹に病巣が1個MRIでみつかり、ステロイドパルス点滴を3クール反復して左眼の左方(耳側)への運動が出来ず、複視が残っているとのことです。
脳MRIでの脳幹病巣の形態で、MSらしさがどの程度かを言うことが可能です。年歴と回復の悪さからはMSである可能性が高いと推測されます。
病歴の記載に、少しわからない点があります。
発病時の両眼の視野障害と、目の奥の痛みがあったとのことで、視神経あるいは視交叉の障害があったように記載されていますが、その後どうなったのか、疑問です。
複視(二重に見える)のことを視野障害とお書きになったのでしょうか?
もし両眼の視野障害があったのなら、視神経脊髄炎の可能性が強くなります。大脳の後頭葉に病巣があった可能性も考えられます。
MRIでは見つかってないようですが。
また、脊髄検査というのは脊髄のMRI検査か、脳脊髄液検査なのか、誘発電位検査なのか、いずれでしょうか?
髄液検査をしているなら、そのデータは貴重ですので、結果のプリントをご自分で保存して下さい。
正常と言われていても、正確な数値、何を調べたかを知ることが必要です。
A: MSと診断されているが、発症時以来、再発や進行が全くないとのことです。MSは再発や進行や慢性の活動がある疾患です。臨床症状や検査データを総合して判断します。
貴方の場合は、当初の診断が正しかったのかが問題となります。MS疑いであり、確定していなかったのが本当かもしれません。
最も多い間違いは、急性散在性脳脊髄炎という再発が無い疾患(時には再発が1,2回あることもある)をMSと誤診することです。
発症当初に正しく鑑別することは容易でないことも多く、MS専門医でも間違うことがあります。
また非常に稀ですが、MSで初発から2度目の臨床再発の間隔が15年あったり、NMOで初発、再発が1,2年以内にあった後、無治療でも15年間再発の無い方もあります。
そうした方では、治療をしないで経過を観察することもあります。
もの忘れを気にしておられるようですが、脳MRIで強い病巣が残っており、それで説明可能なら後遺症ということになります。10年、20年経過して、残っている病巣の症状がゆっくりとあらわれることもあります。
貴女の場合、当初のMRIが残っているでしょうから、見せていただければ、MSか急性散性脳脊髄炎か、診断の材料となります。また、現在のMRIで物忘れの説明が可能かの判断も可能でしょう。
(2015/3/12現在)
A: 貴女はMSと診断されていると理解しておられるようですが、先生はMSではない可能性がかなりあると、考えておられると思われます。
治療方針を立てるためには、正しい診断がなにより重要です。
画像が珍しい形の病巣であると言われているとのこと、推測で意見をいうのは難しいです。
MSは通常、臨床症状の2回目の悪化(再発)があり、1回目とは異なる部位に病巣が出現して、初めて診断がつきます。
臨床症状では2回目の悪化がなくても、MRIで(通常は脳)新しい病巣が潜在的に出現していることが確認され、MS以外の病気ではないと確定が可能であれば、MSであると診断が可能となります。
貴女の場合、そうしたMRI上の病巣の新しい出現があったのでしょうか?
プレドニンを経口で長期間のんでいただくのは、MSではない可能性が高い場合です。悪性リンパ腫、あるいは他の疾患の可能性が完全に否定できないので、MSの治療は開始しないのではないかと推察します。
A: MRIを撮れないのは残念ですが、1985年以前にはMRIなしでMSの診断をしていました。経過を拝見しますと、MSの診断に疑問は無いと思われます。NMOではないと思われます。
CTで萎縮は明らかではないのでしょうが、認知障害記憶力低下を家族が感じているのであれば、認知症が始まっている可能性が高いでしょう。
3年間と短い期間にかなり重症になっており、活動性が高いと言えます。
こうしたMSの疾患活動性の高い方にはアボネックスは効果不十分の可能性が高く、フィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)かナタリズマブ(タイサブリ)を使うべきと考えます。
アボネックスなどのインターフェロンに比べて明確に有効性が高く、患者さんの負担も少なく楽です。担当医に一定の知識があれば、安全に使えます。
ナタリズマブでも約2年間は安全に使えますし、40%の方では、その後も安全に使えます。(2015/2/14現在)
A:可能です。
ただし、全てのMS患者さんでMRI画像だけで診断可能であるわけではありません。
また、撮影条件選択、見方、解釈には知識と経験、熟練が必要です。全く症状が無くても、診断可能な事さえあります。
A: ステロイド点滴で非常に回復が良かった、脳に病巣が1個見つかった、抗アクアポリンが陰性だったことなどは、多発性硬化症の初発症状であった可能性がかなり在ることを示唆しています。
脊髄液検査、大脳誘発電位検査などを実施するべきですが、もし実施していないのなら、より専門的にMSの診断をしてくれる先生を受診し、調べるべきだと思います。MRIの画像でもMSの可能性がどの程度あるか、言えるはずです。造影MRI撮影を実施していれば、もっと詳しくMSの可能性を言えますが、3割よりも確率は高いと思います。
抗アクアポリン4抗体もどこに検査を依頼したのかが重要で、依頼先により信頼性が違います。
A: ご記載の情報では残念ながら明確に返事することができません。情報不足です。しかし、MSと確定も否定もできない状況ではないかと推測します。
脊髄にのみMRIで病巣が見つかったとのことですが、画像を見ないとMSらしさがどの程度かは判定できません。脊髄に病巣があったのなら、脊髄液検査、感覚誘発電位などの追加検査をするのが普通です。 MSでも脳MRIで病巣が見つからないことはありますので、完全否定の根拠にはなりません。
A: MSの特徴の一つは、病気の初期には特に改善し易く、急速に改善することがあることです。このために心因性を疑われ、放置されることが、稀ではありません。初期でなくても急速な改善があり得ます。
改善し易い理由は、神経の軸索が損傷されないで、その表面を覆っている髄鞘(ミエリン)のみが免疫の攻撃(炎症)で壊される(これを脱髄と呼ぶ)ためです。軸索が裸になって一時神経の信号が伝わらなくなり、麻痺が生じます。しかし、髄鞘を作る細胞が近くにあり、急速に髄鞘を再形成するため、短期間で回復することがあります。
MS以外の多くの他疾患では、神経の軸索も破壊されるため、回復してもわずかで、時間がかかるのが特徴です。 MSの長期療法を開始しなければ、自然経過で、次第に障害の回復が悪くなり、回復しなくなり、進行固定化します。早期に進行防止治療を開始するべきでしょう。
A: MSとして典型的な経過をたどっていると思われます。MS確定が可能で、治療を開始するべきだろうと思います。診察と画像を拝見していないので、断定はできませんが、確定できない場合でも、clinically isolated syndrome (CIS)(MSの初発の疑いが濃い)として治療を開始するべきと思われます。
A: MSの患者さんでも、髄液検査で異常が見つからないことはまれでありません。異常があっても、軽度のことが多いです。 MS専門医でないと、オリゴクローナルバンドやIgG indexという重要な検査をしていなかったり、正確な検査が可能なMBL以外の検査センターに依頼していたりしていることがあり、 再度の検査が必要なこともあります。
A: 症状とMRI所見からMSが疑われるが、未だ確定できない状態と先生が判断しておられるようです。次に何か症状が加われば検査をすれば良いと考えておられると推測されます。
MRIで脳に多数の病巣があるとのことですが、画像のみでMSと診断可能なこともありますので、専門医の診察を受けることをお勧めします。病巣の変化を定期的にチェックすることも必要です。症状が残っているのであれば、診断確定を急ぐべきです。
A: (1)痛みについて
MSで疼痛がでることは珍しくありませんが、ほぼ全身の強い痛みが、長期にわたり出ることは非常に稀です。私の1000人ほどのMS患者さんの中に、胸部以下、特に両下肢の慢性疼痛がある方が1人おられるだけです。
最も可能性のある診断は、MSによる足の痛みと異常運動(ジストニー)から始まった、あるいは誘発された、「複合性局所疼痛症候群」の合併です。これは、交感神経の過剰な活性化が関っていると考えられる慢性の強い疼痛です。明らかな先行した損傷がなくとも発症することもあります。MSに誘発されて生じた第二の病気ということになります。
発汗の異常を伴うことが多いのですが、いかがでしょうか?
また、MSは中枢神経(脳、脊髄、視神経)に病巣ができる病気で、痛みを感じる神経に障害ができることもあります。脊髄、脳幹の後部にある感覚神経、大脳の中心部の視床などです。
首以下の全身の痛みがあるとのことですので、頚の上部の脊髄や視床に病巣がある可能性が考えられます。MRIではどうでしょうか。
MSで痛みだけの再発(新規の病巣の出現や、病巣の拡大に伴う悪化)が起きることは稀で、感覚鈍麻の出現や拡大、運動障害など、その他の症状があるのが普通です。
MSの再発、増悪ではないなら、ステロイドパルス点滴治療は行いませんし、効果もありません。
痛みの治療には、記載されているもの以外にもあります。ペインクリニックを利用することもあります。
(2)MS診断について
元のMSの診断が正しいかどうかは、文章から判断することはできません。これまでの詳しい症状の経過や脊髄液の検査結果、MRIでの病巣の特徴などの記載が必要です。神経内科の先生の診断でしょうから、正しいのだろうと推定するしかありません。
一般に再発がある再発緩解型MSの方が多いのですが、MS全体の5%程度の方は最初からゆっくりと症状が進行する一次進行型MSであり、その可能性もあります。進行型ですと、再発が全く無いこともあります。担当医の病型診断はどうでしょうか?
(2015/5/11現在)
A: インターフェロンの効果は、開始後3カ月頃からははっきりとします。
しかし、3割程度の方は、体質的(遺伝で決まる)にインターフェロンの効果が期待できず、治療開始後も自然の経過と変化せず、再発が減りません。研究では、そうした体質を調べる方法がいくつかあります。大阪大学で研究しているSema-Aを調べる方法もそのうちの一つです。残りの7割の内にも、全く効果がないわけではないが、効果が不十分な方は、半数以上おられ、時々、再発があります。
貴女は、そうしたインターフェロンの効果が期待できないMSである可能性が高いと思われます。MSであれば、プレドニンを服用し続けるのは間違っています。効果があるように見えたのは、偶然に運がよかったと解釈されます。プレドニン15mgを長期服用すれば、一定の副作用は避けられません。
MSであり、インターフェロンの効果が無いかたでは、現時点では、フィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)が推奨されます。私の患者さんでも、そうした方が多数おられます。
もう一つの可能性は、診断が間違っていて、視神経脊髄炎NMOである可能性です。NMOであれば、インターフェロンでは再発が減りませんし、プレドニン服用が有効です。プレドニン15mg服用が有効であるとお考えのようですので、NMOの診断が本当に否定できたのか心配です。抗アクアポリン4抗体測定を、感度の低い研究室や検査センターへ依頼している可能性もあります。そうであれば、改めて検査し直すべきです。
抗体測定を、先生が東北大へ送ったのであれば、信頼できます。そうであれば、MSであるとの診断に自信をもち、フィンゴリモド治療を開始するべきです。
ファンピリジンは、歩行を改善する薬ですが、再発や進行を抑える効果は全く期待できません。再発、進行防止薬の選択がより急がれます。MSが確実な方だけが、治験に参加出来ますが、締切がありますので、両方の選択を急ぐ必要があります。
A: 3年半前に左手の脱力が始まり、昨年には左下肢の脱力も加わったが、脊髄、脳にMRIで明確な病巣を確認できていないとのことです。(脳に小さな点が1,2個あるが)
これまで症状の改善は無かったのであれば、頚髄や脳の一つの病巣による症状がゆっくりと拡大、進行しつつある可能性がかんがえられます。
MSの可能性も否定はできませんが、MSの診断には他の疾患を否定することが最も重要です。
MSの一次進行型の場合、かなり症状が進行して初めてMRIで病巣が確認できるようになることもあり、初期の診断は難しいことがあります。 記載内容だけでは、MS疑いに留まるか、確定可能かの判断は困難です。
(2015/5/14現在)
A: MSの診断は神経内科の専門医でしかできません。難病(特定疾患)の手続きも、神経内医にしかできないと決められています。 MS診断は多数の他の神経疾患を否定することに大きな比重があり、かなり困難で熟練のいる医療行為です。 他の科の先生が診断をすることが時にありますが、運よく診断が正しかったとしても、正しい医療行為ではありません。危険な医療行為です。必ず、専門医の確認が必要です。まして、MSの治療を専門医以外がすることは全く間違っています。
A: 多発性硬化症や視神経脊髄炎の初期診断にはMRIは非常に重要です。その後の経過や治療効果の判定にも重要です。
まず、正確に手術で挿入されたものがなにであるかを把握するべきです。 MRIでもテラ数によるとのことですが、もっと具体的な記載を調べてもらい、正確な判定をしてもらうべきです。
MRIが利用できないと、確定診断が遅くなります。しかし1985年以前はMRI無しで診断していたのですから、可能です。 臨床症状、神経学所見、大脳誘発電位、髄液検査を利用します。(2015/7/5現在)
A: CISと言うのはMSの初発で再発(2回目の悪化)がまだ無い時期の診断名ですので、MSが強く疑われる場合にのみ用いる診断名です。総合的な判断ですが、MRI所見が判定基準の最も重要な項目です。
CISの診断で最も多い間違いは、急性散在性脳脊髄炎(acute disseminated encephalomyelitis: ADEM)とNMOSDの初発です。ADEMは原則として再発の無い、一過性の疾患ですが、MSの初発と区別が難しい場合があります。男児ではかなり珍しいですがNMOSDでも記載のような症状で初発することもあり得ます。
先ず大切なことは正しい診断を早期に確定することです。お書きになった病歴や検査結果だけで、書面で判定することは無理です。どんな専門家が見ても、早期判定は困難と言う場合もあります。
次に、早期治療が必要か、必要ならどんな治療を選ぶか決めることになります。
息子様の症状は初発症状としては重い方に属します。脳幹という生命に直結しうる部位にかなり大きな病巣が出現したと思われ、侵された神経系統も小脳系、脳幹系、感覚系と多いと言えます。
MSである確率が高いと言える可能性が高いとは思います。上記したように初発症状が重いと言えることもあり、そうした場合には完全に確定できなくても、安全な長期的再発防止治療を開始します。9才であることを考慮しても、一定の注意を払えば安全に利用できる有効な治療はあります。
現在の病院では専門家が居ないのであれば、紹介状を頂き適切な専門医師を受診することが大切です。
(2015/11/2現在)
A: 非典型MSと診断した根拠が問題です。世界的にも定義、診断基準は在りません。日本の医師が使うことが多いというのが、印象であり、明確な基準を持っている方は無いと思います。
MSを典型的、非典型的に分けることに私は賛成しません。具体的な典型的でない特徴を追加的に記載することに留めます。非典型的といわれるMSには腫瘍型の病巣をしめすMSや劇症型のMSなど治療効果が出にくく、治療選択に困る方も含まれます。逆に非常に経過の良い方を含める事もあります。
典型的MSでない場合、診断に慎重になり、誤診の可能性があるかもしれないと考え、診察や検査を慎重に反復するため、早期のMS治療開始を躊躇することとなります。
重要なことはMSであるかどうかです。
非典型的であってもMS確実なら治療は早く始めるべきです。治療効果はMS一般でもそうであるように、様々です。
(2015/12/5現在)
A: セカンドオピニオンとは意見を聞くだけの意味で、保険外の診療となります。
一般論として、知識が正確で熱意があり、貴方の人生観に一致する方針を提案してくださる医師を見つけることは重要だと思います。
しかし貴方の地域でそうした医師を探せるか、別の医師へ移るのか、現在の先生との比較の問題ですので、私が判断できることではありません。
いずれにしても、妊娠、出産、育児と、しっかりしたMS治療は両立します。障害の無い人生、普通の社会、家庭生活を送れることを祈ります。 (2015/12/30現在)
A: 症状の再発があり、MRIでも古い脳白質病巣があったがうすくなった、しかし新病巣の出現もあったとのことですので、複数の病巣にもとづく症状があり、時間的にも再発があり、MRIでも新病巣が見つかっており、MSかNMOが強く疑われます。MSの可能性がより高いと思われます。
脳MRIの形態と部位を観察すれば、MSかNMOかを判定できる可能性がかなりあると思われます。
抗アクアポリン4抗体が陰性であることはすぐ確認できます。
MSやNMOと紛らわしい他の病気をどれだけ否定できたかが重要ですが、質問文ではわかりません。
専門医の早期の正確な診断が必要ですし、可能と思われます。 (2016/1/10現在)
A: MSには「再発緩解型」、と二次進行型、一次進行型(両者を合わせて「進行型」とも言います)があります。「進行型」においても、持続する進行に上乗せした「再発」が有りえます。
「再発」は一般に「新しい病巣(新MS病巣)や病巣の拡大(拡大病巣)(合わせて活動性病巣とも言う)」があって発生するものですが、MRI画像で原因となる新病巣や拡大病巣が確認できるとは限りません。「軽度の再発」では、病巣が有るはずの部位にMRIでは見つからないが、再発と判定せざるを得ないこともあります。「重い再発」では、急性期なら必ず対応する病巣は見つかります。
問題は、「新MS病巣」の出現の確認は現時点ではMRI画像で判定しますが、MRIで全ての病巣を見ることができるわけではない事です。
機器と画像化ソフトの進歩が続いていますが、検出できる最小病巣のサイズには一定の限界があり、医師の肉眼で判定できる大きさであり、こまかな変化は検出できません。又、通常の撮影では、撮影時間を短くするため、機器の能力限界での撮影はしません。
MS病巣は非常に細い静脈の周囲や、脳室壁などにできることが多いのですが、細かな病巣や顕微鏡レベルでの細かな病巣は通常のMRIでは検出できません。
顕微鏡での病理観察や特殊な検査では、MRIや肉眼では正常に見える脳の部分(normal appearing white matter) に、再発緩解型でも、発病初期から顕微鏡レベルの神経繊維の障害、切断が「再発」とは関係無く、継続して生じていることが判っています。
(1)
「再発緩解型」では1日以上持続する症状の増悪が有った後に、治療の有無に関わらず、一定の回復があります。その後、一定期間は症状の変化が無い緩解期があります。6月以上にわたって持続的に症状が増悪し続けることはありません。
しかし、症状が安定しているかに見える緩解期にも、上記したように細かな病巣の増加、変化が生じていることが分かっています。
(2)
「進行型」では6月又は1年以上ゆっくりとした症状の悪化が持続(一時停止していても改善は無い)します。症状・障害の重さの変化のベースラインが持続的に重くなりつづける状態です。再発が上乗せすることもあり一時改善があることもありますが、直ぐ進行あるいは一時停止の状態にもどり、長期的にみればベースラインはゆっくりと悪化が継続する状態です。
「進行型」では持続する進行に対応した病巣の確認が出来ないことが多いのですが、新病巣や造影病巣が見つかることもあります。新病巣、造影病巣が見つかる方は、効果の高い治療を開始することで進行が止まったり、進行速度が遅くなることもあります。
「再発緩解型」の方は無治療あるいは治療開始が遅れ、発病から10年、20年経過しますと「二次進行型」に変化することが多いのですが、進行型に移行した後には、脳のMRI病巣の体積はむしろ縮小し始めます。しかし、脳の表面の神経細胞が集まっている皮質の病巣が多くなり、脳萎縮は年月を経て次第に強くなってゆきます。「一次進行型」でも年月が経過すると同様です。 (2016/1/25現在)
A: 上記Q&Aに再発緩解型と二次進行型、進行型の定義を記載しています。
貴方は最初2年間落ち着いていたのであれば、それまでは再発緩解型であったと言えます。その後、二次進行型に移行したかどうかは、ご記載の内容では判定不能です。先述した定義のどちらに当てはまるか、ご自分で判定可能だろうと思います。
また、担当の先生にも質問するべきです。もし私を受診くだされば、判定します。 (2016/1/25現在)
A: MRIが撮れなくても、診断は十分に可能です。症状が消えたり、無い時の早期診断や、潜在的病巣の評価、治療効果の判定にMRIは大変重要です。しかし、1980年代後半まではMRI無しでMS診断をしていました。
髄液のオリゴクローナルバンドは陰性のMS患者さんがあり、日本人では約半数が陰性です。否定の材料には全くなりません。専門の医師でない場合には等電点電気泳動法で血清と対比する正しい方法で検査していないこともしばしばあり、実施した方法の確認も必要です。
心因性の要素が少し上乗せすることは珍しくありませんが、様々な方法で、心因性でない症状、所見と、心因性の所見を見分けることが可能なはずです。
記載された経過からはMSであろうと推定されますが、診断は診察をした医師でしかできません。
診断を確定し、MSであるなら再発進行防止の治療を早急に始めなければなりません。MS治療薬のリスクを過大視している、安全対策の有効性を軽視しているのではないかとも思われます。(2016/2/5現在)
A: 結論的には、提供された文章での情報のみで確定は困難です。
脳と脊髄のMRI画像所見が鑑別に最も重要と思われます。
初期の脳MRI画像のみでMSと診断できる特徴は無いようですが、完全にMSを否定も出来ないようです。記載所見であればNMO,ADEMもありえますが、見てみないと十分には分かりません。
症状が強かった初期に胸髄MRIが撮れていないようです。
ピーク時ではない6月の胸髄MRIで、ほんとうに長い病巣があるのか否か、横断画像でどのような分布か、明瞭に連続しているのか、などが疑問です。しっかりした撮影と観察がされたか不明であり、判定は困難です。正常で中心灰白質が淡く濃くうつりますので、それではないのかが疑問です。
髄液で細胞数が記載されていませんが、正常であったならADEMらしさは低いと言えます。MS、NMOでは正常数もあり得ます。
「脊髄に3椎体以上にまたがる明瞭な長い病巣が連続し、横断で主に中央に位置していた」なら抗アクアポリン4抗体陰性のNMOSDである可能性が高いですが、再発が無いのでまだ断定できません。1度限りの他疾患の否定が重要となります。MSは否定できます。
ADEMでも長い病巣がでることがありますが、熟練した医師であればほぼ鑑別可能です。 (2016/2/20現在)
A: CISとはMSの初発症状の出現、一回目の悪化があったのみで未だ再発が起きていないが、MSである疑いが濃いという状態です。MRIでの脳病巣の形、部位などでMSらしさがある場合に使う言葉ですが、MSらしさの検討をしないで適当に用いる医師が多いので、実際に画像を見ないとわかりません。
最近の症状に初回症状には無かった左下肢の脱力があるようです。そうであれば再発が強く疑われます。MRIでの検討も必要です。脊髄のMRIが正常であったのは初期であり、最近ではないと推定しての話です。
MSが強く疑われる状況のようですので、早期に診断確定し、MSと判断されたら早く治療を開始するべきです。
(2016/2/30現在)
A: MRIの病巣が大脳の脳室周囲、小脳、脊髄に見つかり、放射線医の診断はMSの可能性があるとのことです。
そうした分布に病巣が出現する疾患はMSを除けは非常に稀です。MSの可能性が高いと言えますが、病巣の形態の特徴の記載も重要です。
片頭痛で大脳白質に病巣が見つかることが有りますが、MS病巣とは特徴がことなり、脊髄に病巣はでませんし、大脳でも脳室周囲には出ません。症状も片頭痛のようには思えません。
全ての検査の結果、MRI所見の記載、MRIデータのCDなどを全て自分で保管しておくことをお勧めします。
髄液の検査でオリゴクローナルバンドが陰性だったとのことですが、日本人MSでは半数以上が陰性で、MS診断の否定の材料にはなりません。欧米人では90%で陽性であり、大きな相違です。
症状で痺れというのが、単に異常感覚、ピリピリ感のみであるのか、感覚の鈍さが一定程度ともなっているのか、脱力、運動麻痺もあるのか、しっかりした評価が必要で、記載では良く分かりません。
米国中西部であればCleaveland Clinic のMSセンターが有名な専門施設ですが、日本人の特徴はあまり知らないかもしれません。 (2016/5/25現在)↓
A: シビレ感が症状の主体であり、出たり消えたりしているとのことです。これらは機能低下ではなく過敏症状であり、症状が持続しないということは障害が軽いことを意味しています。
感覚が鈍い部位があるかどうかは、「楊枝」のような物で皮膚を刺して痛覚を、テイッシューペーパーで皮膚を軽くこすり触覚を、また冷たい金属や氷や温かい金属や陶器で温覚を調べ、左右、上下の身体部位と比較します。正常な部位と較べ分かり難いかどうかを判定します。いずれかの感覚が鈍いのであれば、感覚神経の機能低下があることを意味し、シビレ感や痛みよりも重い障害であると言えます。
顔面や頭に症状が無いようですので、問題を起こしている病巣は脊髄にあると推定されます。
少しずつ症状が強くなりつつあり、既に機能低下も出ているのかも知れません。様子を見ながら、7月まで待っても、恐らく大丈夫でしょうが、誰も保障は出来ません。
こうした時にはステロイドのパルス点滴治療 (methylpredonisolone pulse infusion) を実施します。診断が確実でなくても実施しますし、長期の再発進行防止治療(
disease modifying therapy) より先に実施して差し支えありません。
ご心配であれば、米国での医療保険があるのでしょうから、シカゴ大学病院のMSクリニックを一度受診されたら良いと思います。シカゴであれば、他にも大きなMSセンターがあるはずです。
日本でも、どの病院のどの医師を受診するかで、大きな差があります。私は予約の待ち時間が無い対応をしていますが、一般には予約に時間がかかることが多いと思います。また、日本に一時帰国しても、日本の健康保険が利用可能かどうか、現住所を米国に移していれば、手続きが必要です。
(2016/5/25現在)
A: 身体各所のチクチクしたシビレ感があるが、脳、頚髄、腰MRIで軽度ヘルニア以外に異常ないとのことです。
多発性硬化症では通常はMRIで病巣が見つかります。軽度の末梢神経疾患の可能性もあり、神経内科を受診するべきです。多発硬化症の可能性は低そうです。MSや類似疾患の疑いが有るか否かの判定は、一般の神経内科医師で可能です。その結果、心療内科受診をすすめられるかもしれません。
また、本ホームページのトップページから「症状と再発の自己判定法」をクリックして、内容を一読してください。
軽度の脊椎ヘルニアでは症状は出ず、貴女の症状とは関係ありません。 抗SSA抗体とIgGが高値でリウマチ、橋本病など自己免疫疾患の遺伝的素因があるようです。現在の症状と関連している可能性もあります。 (2016/6/22現在)
A: MSの症状は様々であり、頻度に多い少ないはありますが、主な症状として決められた症状はありません。
症状が出た時の、神経学的診察、検査の所見、MRIの所見を参考に、MSの再発か、他の原因による症状かを決めます。
診察時の所見や、MRI検査の部位、時期などが分かりませんので、書面で判断は困難です。
しかし症状に変化があれば、受診が必要であるのが通常であり、むしろするべきです。
もし、既に他疾患があると確定されていて、その疾患で説明可能な症状であったり、心因性の症状であると確定されていれば、対応は異なります。 (2016/6/30現在)
A: 経過をまとめますと、
約10年前に約1月強の間隔を空けて脳幹症状である複視が2回出現し、さらに6月程度を経ておそらく脳幹(あるいは頚髄?)の症状として右半身の感覚障害が出現した。
MRIで脳幹に複数個の病巣が確認された。
その後、明確な臨床症状の再発増悪が無く、MRIでも新病巣の出現は確認されていない、とのことです。
診断はやはり、再発性急性散在性脳脊髄炎(ADEM)かMSかでしょう。経過の長さから後者の可能性がかなり高いと推測されます。
しかし、最終判断には画像の特徴と推移、髄液を含む詳しいデータ、大脳誘発電位検査のデータなどを熟練した医師が見て、総合的に判断する必要があります。
治療はADEMであれば必要性は無く、年1回程度のMRIでの追跡をします。
MSであれば、現在は軽症ですが、データを見て総合的に判断します。5種類の治療薬があり注意点は異なりますが、いずれでも安全な治療は可能です。変更することも可能です。
ベタフェロンでの痛みが強かったようですので、自己注射でよければ他の自己注射のアボネックスとコパキソンでは、アボネックスの方が注射頻度が少なく、痛みが少ないでしょう。経口薬フィンゴリモドでも問題が無い可能性が高いでしょう。
効果の最も高いタイサブリ点滴で開始する必要はないでしょう。 (2016/7/15現在)
A: 腫瘍型多発性硬化症であっても多発性硬化症の診断が正しいのであれば、治療は多発性硬化症としての治療をしっかり実施するべきですが、出来ていないようです。
MS以外の疾患で否定しきれていない他の疾患があるので、担当の先生がMSの治療開始を躊躇しておられるのかどうか、文面では判断できません。
特定疾患にまだならないという意味、理由も理解できません。
推測で意見を言うべきではないので、これ以上の意見はひかえさせていただきます。(2016/8/1現在)
A: MSを診断する時にはMRI所見は非常に重要で有用です。
一定以上の強さの新しいMS症状が出ている時、その症状の原因があるはずの神経組織の部位を、適切な撮影方法でMRI撮影をしたならば、必ず画像で病巣の存在が確認できます。
しかし、時にMSの発症から数年以内に限りMRI画像で病巣が確認できないことも有り得ます。診察して医師が客観的な症状に一致した異常所見を見つけ得ることが前提です。
それは撮影時に症状が軽い時、回復が始まっている時、撮影した部位には病巣が無く他の部位に病巣がある時、シビレ感や痛みが主な症状である時、などです。
貴女の場合はこれに相当する可能性があるかと考えます。
症状があっても、長年MRIで病巣が見つからないのは、身体表現性障害(心因性)であることが多いです。この場合は神経内科的診察や検査では異常がみつかりません。
(2016/8/25現在)
A: 診察をしていない患者さんに正確な返答をすることは、多数の不明のことが有り、難しいことですが、返答します。
MSの治療に安静はほとんど不要ですし、むしろ有害です。不快な症状があるのですが、その症状に対する治療薬があるなら服用しつつ、無いなら我慢をし、可能なことは全て積極的にするほうが、回復を早めます。正確な診断、治療の継続が前提ですが。
現在も残っている症状は病巣が少し残ってしまっているか、完全には修復できていないための症状だろうと思われます。ゆっくりと消えるか、長期に残ってしまうか、1年ほど様子をみないと分からないだろうと思います。
頭痛はMSと無関係の可能性がかなりあります。先生に原因と治療方針を聞くべきです。
先ず、貴女のイタリア語の能力が充分なら、疑問点をまとめて(文章で渡せばより正確に伝わる)担当の医師に質問し、回答を求め、相談をするべきです。イタリア・ミラノにはミラノ大学などに有名なMSセンターがあり、正しい選択をすれば、間違った医療がなされる可能性は低いでしょう。
また、MS協会(MS society に相当、イタリア語は分かりませんが、日本とは違い、患者さん主体の組織であり、相談できます)、他にも多くの組織、ボランティア団体があるはずです。積極的に利用すれば、情報はいくらでも得られるはずです。
重要なことは診断の確実性です。48歳日本人女性であればNMOsdの可能性がかなりあり、正確な除外が必要です。MRI、髄液所見(cerebrospinal fluid study)などがMS典型的でないなら、精度の高い抗アクアポリン4抗体(anti-aquaporin 4 antibody by cell based assay not by ELISA assay)の測定で陰性であることの確認が、一度は必要です。
MSであるなら、長期的治療薬の選択が重要で多数の選択肢があります。アウバジオは日本には入っていない新しい経口治療薬で、使い易さが特徴ですが効果は高くなく、第一世代の自己注射薬(インターフェロンやコパキソン)と同等です。長期使用のデータはやや不足しています。
同じ経口薬であるテクフィデラ(tecfidera)も利用可能だろうと思います。古い薬ですが効果はより高く、安全性も高く、第一選択に適していると思います。一部で腹部不快感などで利用しにくい方もありますが。
(2016/9/20現在)
A: 最初に使う長期の再発・進行防止薬としては、2種類のインターフェロン注射薬(アボネックス、ベタフェロン)とフィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)があります。
それらのうちのどれを選ぶかは、個別患者さんの再発頻度、障害の程度、MRI(脳、脊髄)でどんな病巣が見えるか、患者さんの個性、生活状況などを総合し、 医師としてのお薦めするものを提示します。最終的には患者さんと家族に決定していただきます。
インターフェロンを先ず使用するのが基本であるとは思いません。3者のいずれもが第一選択であり得ると思います。 各々に長所があり、欠点もあり、各人の状況、理解、希望と、対応する医師、医療機関の対応力により決定するのが正しいと思います。
私のMSセンターではフィンゴリモドを最初から選択する人が多くなりつつあります。 インターフェロンを先ず使用し、それでも再発の多い人にだけフィンゴリモドを使用するべきであるとの意見が多いことは承知しています。
その根拠は、「副作用が多く危険である」、「未だ長期の安全性がわかっていない」、「長期的な効果の高さの証明は確実では無いかもしれない」のいずれか、またはその組み合わせです。
私はその見解は、フィンゴリモドの効果と安全性に関する情報伝達の不足、医師の収集努力の不足、経験不足、経験の少ない治療法を採用する時のリスクと負担増加の拒絶などによるのではないかと思います。
多数の論文や学会発表を医師が自分で読む努力が必要です。ベタフェロンが日本に導入された時にも、副作用への拒否反応、躊躇、混乱が続いたのとよく似た経過であると思っいます。
A: ご質問にはありませんが、貴女のMS治療には非常に問題があります。
先ず、過去の治療ですが、免疫グロブリンは治験を実施し、効果なしとの結論がでています。
インターフェロンβ(アボネックス、ベタフェロン)は3割の方では有効ですが、効果不十分や無い方が多いです。
アザチオプリン(イムラン、アザニンなどの商品名あり)も効果は低く、副作用に比較するとお勧めできません。
他の治療の継続に不利となることもあり得ます。
現在の貴女の治療はプレドニン(隔日/10mg)、プログラフ(日/2mg)、リウマトレックス(週/6mg)とのことです。
いずれも関節リュウマチでの治療としてはあり得ますが、MS治療とは言えません。現在はMSに関しては無治療の状態であり、MS診断が正しいなら適切とは言えません。
タクロリムス(プログラフ)はMSには無効です。(NMOには有効です)
プレドニン、リュウマトレックスも有効ではありません。
MSも関節リュウマチも自己免疫疾患で発症機序に一定の類似点はありますが、治療にはかなりの違いがあります。
関節リュウマチに有効なくすりの多くはMSでは有効ではなく、逆に悪化させたとの報告もあります。
私の1000名のMSの患者さんの中に、明確な自己免疫性関節リュウマチを合併した方はありません。
貴方と類似した症状を訴えるかたは、5名ほど記憶がありますし、軽度の方はもっと多いと思いますが、関節リュウマチではありませんでした。
MSの方での自己免疫疾患の合併で多いのは甲状腺機能亢進症や低下症、シェーグレン症候群、1型糖尿病、自己免疫性溶血性貧血などです。
喘息、アトピー、花粉症は多いです。何れも、MSの無い方にくらべMS患者での増加は確認されてはいません。(2015/3/16現在)
A: 肝障害の経過はよくわかりました。
確かにフィンゴリモド服用をつづけるのは難しい可能性が高いと言えます。
フィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)に対するアレルギーとの解釈は間違っている可能性が高いと思います。元々NASHがあり、
フィンゴリモドの薬剤性肝障害が上乗せされたと考えられます。服薬開始前の肝機能が正常であれば、もう少し服薬を続けて数値が下がる可能性を見ることも有りますが、NASHによる障害があるのであればお勧めできません。
JCV抗体のindex value が3,70ですが、残念ながらかなり高い数値です。ナタリズマブ(タイサブリ)治療を開始し2年を経過すればPMLのリスクが始まると予測されます。
2年を超えると年に400人に一人程度の頻度でPMLが生じるリスクがあると言えます。
ただ先にも書きましたが、担当医がしかるべき観察を反復することで、PMLの発症の極く初期に、通常は症状の無い潜在的な小さな病巣が大脳の上部に出現した時期に、発見することが可能です。
担当医や放射線科医師の知識と努力が必要ですが。
PMLを無症状の潜在病巣の時期に発見し、ナタリズマブの点滴を中止し血漿交換治療などを開始すれば、ほとんど障害進行なくPML治療を終えることが可能です。
A: タクロリムス(プログラフ)はMSの治療薬としての有効性は証明されていません。使用するべきではありません。
間違いなくMSのようですので、MSで効果が証明された治療薬に変更するべきです。
1990年代に私達はプログラフの「多発性硬化症」に対する効果を調べる治験を実施しました。
その結果、当時の診断での「多発性硬化症」患者の全体では有効とは言えないが、半分くらいの患者さんでは改善があったと報告し、開発を中止しました。
しかし、2000年代になり、MSとNMOが区別可能となり、1990年代の治験当時にはMSと診断していた患者さんの約半分がNMOであり、プログラフはNMOの患者さんには有効であったことを見出しました。
一方、プログラフと非常に類似した薬であるシクロスポリン(ネオーラル)という薬がありますが、1990年代にヨーロッパで多数のMS患者さんで治験が実施され、全く有効ではなかったとの結論が発表されています。
プログラフはアレルギー、アトピーに有効です。また、視神経脊髄炎(NMO)や重症筋無力症、関節リュウマチ、臓器移植の拒絶反応抑制などにも有効です。
腎機能が悪くなければ、適切に血中濃度をチェックしていれば非常に安全です。私は多数例に用いて、腎機能が正常な方での副作用の経験はありません。
副作用が色々記載されていますが、移植用に高用量を使用した場合の副作用であり、低用量では殆ど問題は生じません。
関西MSセンターではフィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)をこれまでに420人に、最長で7年以上にわたり使用し、この薬剤によると思われる深刻な副作用はなく、十分に安全使用が可能でした。
下記のような問題はあっても、安全な使用が十分に可能です。
@軽度の肝機能値の上昇が30%程度で出ますが、ほとんどの患者さんは服薬継続が可能です。時に検査値が高く中止が必要な例がありますが、中止により正常化します。
A400人に一人に約6ヵ月以内に黄斑浮腫が生じて服薬中止が必要。しかし、眼科OCT検査で症状なく発見でき、正常化することがほとんどです。
B服用初日に軽度の徐脈、まれに軽度の不整脈があるが、症状はほとんどない。2日以後にはそうした症状は出ない。
Cリンパ球数の減少がありますが、感染症の増加は無く、心配する必要はありません。帯状ヘルペスの若干の増加があるかもしれませんが、一定の注意を払えば安全に使用可能です。
私の多数のMS患者様のなかにも、アレルギー、アトピーの方は多く、インターフェロンでのアレルギーの悪化で使えないかたもありました。
そうした方の殆どは、フィンゴリモド、ナタリズマブ(タイサブリ)でMSもアレルギー、アトピーも安定した状況を維持できています。
A: 進行型には一次進行型と二次進行型があります。二次進行型は先述してあります。
一次進行型とは、最初に症状が出た時、即ち発症時から、継続してゆっくりとした症状の悪化が続き、途中で止まっているような時期が有っても、改善することがない状態です。再発の上乗せがあり、改善することがあっても、またゆっくりとした悪化が始まります。
二次進行型の治療では、再発やMRI上の新病巣出現が見られる場合にはインターフェロンβ1b(ベタフェロン)、フィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)、ナタリズマブ(タイサブリ)などで一定の効果が証明されています。
一次進行型では現在利用可能なもので効果が証明できたものは有りません。昨年、オクレリズマブが進行抑制効果があることが報告されました。未だ海外でも使用が承認されていません。
進行型で再発や新病巣の出現が無い場合には、現在の治療薬は効果が出にくいのですが、少しは効いているだろうと考え、利用しているのが現状です。新薬の治験は進行しています。
(2016/1/30現在)
A: 以下の疑問があり、正確な回答が難しい状況です。
(1)まず、診断についてです。 セカンドオピニオンで非典型的MSと言われているのですが、なにが非典型的なのかが分かりません。病巣の形や分布なのでしょうか?非典型的MSという言葉は、使う人によって、その中身が一定ではありません。
貴女は再発が反復していますので、MS かNMOのいずれかである可能性が非常に高いと思われます。 NMOの診断は抗アクアポリン4抗体が陽性か、MRIで脊髄に3(2以上でも)椎体長以上にまたがる長い病巣が出現したことがある、のいずれかが陽性です。
脊髄に再発があるようですが、そうした指摘は無いようです。この何れもが無くてNMOと診断することはありません。 唯一の例外はMRIで視神経の交叉部に病巣が出現した、
あるいは「頑固なしゃっくりが2日以上連続し、MRIで脳の最下部、延髄の中央に縦長の特徴的病巣がでたか、だけです。 あるいは、悪性リンパ腫、Clippers,サルコイドーシス、ベーチェット病、などの他の疾患が完全には否定しきれない、などで、MS疑いまたは非典型的MSという診断で、MSとは区別して追跡することがあります。こうした疾患であれば正しい診断が急がれます。
一方、たとえ非典型的でも、MSとの診断に自信があるのなら、MSとしての治療を行うべきです。私はMSを典型的、非典型的に分けることは、あまり意味が無い、MSかMSでないかが重要で、MSならMSとしての治療をし、問題は生じていません。
治療への反応が無い、異常な病巣が出るなどの問題が出てくる患者さんは、MSであるとの診断が間違っていると考えるべきです。正しい診断は何か、緊急に検査を追加し、診断を確定することが何よりも重要です。
もし、@MRI のCD (特に、最も強い病巣がでたときの脳、脊髄の)を私宛てに送付してくだされば画像診断は可能です。A臨床経過や、検査データがあれば、さらに正確に意見を言えます。
(2)治療については、ジレニアで効果が無かったとのことですが、何時開始し、どのような問題がいつごろ起きたのか、正確に1カプセルを服用したのか、何時止めたのかなどを、お教えください。
私の7年近い、MSでのジレニア治療350例での経験では、再発を反復していたMSの方で、効果が全く無かった方は、一人もありません。 ただ、初期の3ヵ月、時には6ヵ月までは、活動性の高い方では再発が有ったり、MRIで新病巣が見つかった方はあります。また、6ヵ月を超えても再発が時にある方はあります。しかしそうした方でも、インターフェロンに比べて再発は減り、長期的に追跡しても障害進行は無くなっています。
ただ、MS以外の疾患やNMOでは、効果は無く、むしろ悪化することがあります。
A: 発症して21年経ち、ベタフェロン使用が11年間で、固定障害が無く、経過は比較的良好と言えます。
ベタフェロンの副作用で皮膚症状が強く、注射の回数を減らしているが、それでも苦しく、止めたいとのことです。
MSの自然経過では、時間経過とともに再発は減ることが多いのですが、脳病巣蓄積や脳委縮、障害進行が持続するようになるのが大きな問題です。
私として、MRI写真を見ず、診察もしていませんので、正確なことは言えませんが、一般論として治療の中断はお勧めしません。
再発があれば別の治療を開始する考えは、危険ですし、そうしたリスクを冒す必要は無いと思います。
貴方のような場合には、以前であれば2006年から日本で利用開始となったアボネックスをお勧めしました。
皮膚症状がでることは稀ですし、週1回の自己注射ですみます。注射時の痛み、発熱は、回数は少ないが同様です。
3年前からは、フィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)が使用開始となり、ほとんどの方でインターフェロンより効果が高く、かつ安全で、優れています。このHPの関連記事をお読みください。
A: 障害が強くなりつつあるとのこと、ご心配のことと存じます。主治医の先生は再発が無いと判断しておられるのでベタフェロンが効いていると考えておられるのだと思いますが、
この10年間再発がなかったのでしょうか。いつからゆっくりとした進行が始まったのでしょうか? 御質問への返答はお答えにより影響を受けます。
私の患者様の中にも、ベタフェロンやアボネックスを長期に使用し、ほとんど再発が無かったにもかかわらず、次第にゆっくりとした進行が始まった方がたくさんおられます。
多発性硬化症の二次進行型とは、最初は再発、寛解の時期があった方が、ゆっくりとした障害の進行が1年以上続くようになりますと、その後も進行が継続するようになる状態のことです。
ゆっくりとした進行の上に、時に再発が上乗せする場合と、再発が無くなる場合とがあります。
悪化状態が1日以上つづき、その時に体温上昇が無いのであれば、再発であると言えます。 脊髄での軽度再発は、MRIの性能にもよりますが、MRIで病巣が確認できないことが半数程度あると報告されています。
MRIで見えないから再発ではないとは言えず、診察をしていないので断定はできませんが、再発の可能性があると思います。
インターフェロンは進行型への移行や、その後の進行の速度を抑制する効果が、ある程度あると考えられます。
現時点ではMSは未だ一生の病気ですが、出来るだけ早い時期から、長期に、より有効な治療を続けることで、長期の経過が改善すると考えられます。
ベタフェロンを21年間使用した患者さん達と、2,3年遅れて使用を開始した患者さん達の間で、
21年間にMSの為の死亡(寝たきりとなって、嚥下障害や感染により)が2倍の差があったことが証明されました。
ベタフェロンでは、時に再発がある二次進行型の患者さんで、一定の効果がありました。 フィンゴリモドでは、未だそうした研究結果が発表されていません。
現在、一次進行型という、再発が最初から無く、進行が持続している患者さん多数で、研究が進行しており、あと1〜2年で、発表がある予定です。
しかし、これまでの多数の発表されたデータから、フィンゴリモドはインターフェロンの約2倍の再発、進行、脳萎縮抑制効果があり、
神経へ直接はたらき、神経再生を助ける効果もあると考えられます。まだ、明確な結果がでてはいませんがが、二次進行型MSにおいてもインターフェロンより効果が高いと予測されます。
実際に、私の200人以上のフィンゴリモドを使用している患者さん達の過半数の方々は、先にインターフェロンを使用し、効果不充分あるいは副作用でフィンゴリモドへ切り替えた方々です。
こうした方で、これまで、インターフェロンの効果の方が良かった、あるいは副作用が少ないとの理由で、再度インターフェロン使用へもどった方は、一人もおられません。
私が貴方の立場であれば、フィンゴリモドへ切り替えると思います。
A: 甲状腺の数値が高いとのことですが、甲状腺の治療を勧められておられないようなら、マイクロゾームテストかサイロイドテストが陽性であっただけであろうと推測します。
欧米での多数例の治験では、インターフェロンを使用しても、そうした数値の上昇はみられなかったことが報告されています。甲状腺の病気の発症を誘発する可能性は低いと言えます。
また、甲状腺疾患は頻度が高く、MS治療薬での治療と平行して治療することも、稀ではありませんが、通常は治療は非常に容易ですので、万が一発症しても、あまり心配はいりません。
また、MSの薬が発症させたとは、即断はできません。
従いまして、インターフェロンも一つの選択肢であると思います。
しかし、現時点では、フィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)が、第一選択となるとおもいます。フィンゴリモドより効果はやや低いが、BG12も選択肢であると思いますが、治験ですので、
偽薬に当たる可能性があるなど、いろいろの制約、条件があります。(2013/5月現在)
結論としましては、フィンゴリモド、インターフェロン(2種)、BG12治験のいずれもが選択肢だとおもいますから、良く比較検討して判断してください。
臨床再発、症状(障害)の進行、MRI上での新病巣、造影病巣が出現しない状況を目指し、安定した家庭、社会生活を維持しましょう。
A: ベタフェロンを再開することは可能です。しかし痛みで止めたのであれば、再開で同じ問題が生じます。 週1回注射でよいアボネックスが利用可能となっていますが、頻度が少なくなりますが、疼痛は、あまり変わらないでしょう。
従って、現時点では経口薬のフィンゴリモドを使うのが普通です。負担無く仕事を続けることが可能です。 変化が無かったことは無論よいことですが、脳MRIでの病巣の蓄積が進行している可能性がありますので、時々、MRI評価を受ける方が安心です。
生涯、通常の生活ができることを目指すべきです。無治療のMS患者さんの平均寿命は10年短いのですから、自然にまかせるべきではないと思います。
7年前にはアクアポリン抗体が一般的には測れませんでしたが、一度検査をしたほうが良いでしょう。(2013/8月現在)
A: 診断が確定していない理由はMRI画像が典型的または診断基準をみたすものでないのが理由でしょうか。しかしMSのかなりの部分は、一定期間は必ずしも典型的なMRI画像を呈しません。非典型的と言われている理由も良く分かりませんが、脊髄液でIgGインデックス高値やオリゴクローナルバンド陽性が出ていないからかもしれません。しかし脊髄液の所見は日本人MSの過半数では陰性ですので、否定の理由にはなりません。
こうした理由でMSの長期な再発進行防止治療(疾患修飾治療:disease modifying therapy, DMT)(フィンゴリモド、インターフェロン、タイサブリ)を利用しないのは間違っていいます。
プレドニンの長期使用はMSの治療としてはあり得ません。@先生が治療を間違っているか、A視神経脊髄炎と判断しているが貴方に説明をしていないか、BMS・NMO以外の稀な神経の免疫疾患(脳血管炎など)を疑っているが診断を確定できていないか、のいずれかでしょう。
NMOであれば、すでに5年間の経過がありますので、長い脊髄病巣がMRIで見つかるか、血液検査で抗アクアポリン4抗体陽性がみつかるかのいずれかが出ているはずです。この可能性も少ないようです。
従ってMSである可能性が非常に高いと思います。担当の先生は典型的MSでなければMS疑いとして、プレドニン長期投与で様子を見るべきであると考えている可能性が高いと思います。
MSの診断は他の疾患を否定することが最も重要ですが、私は診察をしていませんのでMRIや血液、髄液の検査データを見せていただければ、もっと明確な意見が言えます。
A: フィンゴリモド内服治療をMS発症初期から利用することは可能で制限はありません。実際に、そうした利用をしている人も増えつつあります。 本薬の治験でも初めての治療薬として選択した方が多数含まれています。そうした方でも長期に利用をつづけておられます。
担当の先生の根拠は日本神経学会のガイドラインの記載であろうと思います。 そこでは先ずインターフェロンを利用し、それでも効果が不足しているか、副作用で利用できないかたはフィンゴリモドを使うことを勧めています。
3年前の本薬利用開始時に作られ、長期の安全性情報が未だ不足していることを理由にあげています。
しかし、その当時でも既に最長で7年、多数例では4年の長期追跡の結果が発表されていました。一般の利用が開始されて世界で4年半、日本で3年半が経過しました。 日本での治験の患者さんもすでに7年半経過して、大きな問題が生じていません。
担当の先生が、そうした事実を理解しておられないことが、原因であろうと思われます。(2015/5/24現在)
A: 私はフィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)またはナタリズマブ(タイサブリ)への変更をお勧めします。
可能であれば、月1回点滴のタイサブリの方が良いのですが、地元の先生の同意を得るのが難しいかもしれません。後者の方が効果出現が早く、有効性も高いです。
妊娠が確定して、治療を中止することも可能です。
2年を超えて使用するには、一定の条件が必要ですが、そこで変更することも可能です。
本年に発症し、再発が反復しており、既に一定の障害が残っていますので、活動性が高いと言えます。効果の確実な治療へ早く切り替えるべきです。
ベタフェロンとアボネックスでは、ほとんど効果に差はありません。
ただ、最近の症状の変化は、主に異常感覚やツッパリの増強のようであり、修復過程での症状の変化であって、再発や進行では無い可能性があります。 担当医の慎重な評価が必要です。
再発でなければ、パルスを追加する意味はありません。
重要なのは再発進行を抑制する効果の高い治療を始めることです。(2015/9/12現在)
A: 担当の先生が何故、確立されたMSの再発進行防止の治療薬をお勧めしないのか、理解に苦しむところです。 MSに定期的なパルス治療は若干の効果があるかもしれないデータはありますが、経口のプレドニン治療はほとんど効果がありません。
リウマトレックスを一時使用したとのことですが、MSに使用することはありません。
病歴を読む限りではNMOではなくMSである可能性が高いと思われます。
ご希望でしたら、京都へ2,3回来ていただけるなら、診断を再度確定し、治療を決めて、東京で治療を続けていただける先生を紹介できると思います。 MSであればフィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)が選択肢だろうと推測します。3回のタイサブリ点滴の度に発熱があったとのことです。
中和抗体が出現すると、点滴中に気分がわるかったり、かゆみがでたり、若干の発熱があることは経験があります。 しかし高熱が副作用ででることは私の100名あまり、4年間の経験には全くなく、文献にも無いと思います。(2015/9/9現在)
A: MSの治療として長期にプレドニンなどのステロイド剤を服用することは、原則としてありません。
インターフェロン・β1a筋注薬であるアボネックスはMSの治療薬ですので、併用はしません。
貴方の担当の先生は、MSかNMOか区別が難しいので、何れであっても良いようにと、MSとNMO両方の治療を並行して行っておられるが、貴方に説明をしていない可能性もあります。
病歴を拝見しますと、貴方の診断はMSではなく、抗アクアポリン4抗体陰性の視神経脊髄炎(NMO)である可能性が高いと思われます。 抗MOG抗体陽性疾患である可能性も若干有り詳しい検査が必要ではないかと思われます。その最大の根拠はMRIで脊髄に長い病巣がみられたことです。
抗アクアポリン4抗体が陰性だったとのことですが、どのような方法で調べたかが問題です。
脳のMRIのみでMSかNMOかを判定することは不可能であることも珍しくありませんが、可能であることも多く、しっかりした画像診断をすることも大切です。
正しい診断の確定が先ず、何よりも重要です。
もし、NMOであればアボネックス治療は効果がなく、逆に悪化させる可能性もあります。 NMOに現在の量のプレドニンは有効ですが、副作用は避けられませんので、安全性の高い免疫抑制剤の使用を中心にするほうが優れていると思います。(2015/9/13現在)
A: ベタフェロンを使用して2年間再発が見られなかったわけですから、フィンゴリモドへの変更が急がれる状況ではありません。インターフェロンでも充分な効果が期待できる可能性があると言えます。
ただ、注射そのもののストレスや、倦怠感、発熱、皮膚反応などが少しでもあるのであれば、変更をお勧めします。我慢をしたほうが良いとは思いません。
私はこれまで340人以上の方でフィンゴリモドを利用していただきましたが、その半数以上の方はインターフェロンからの切り替えでした。最長で6年半経過しています。その全員が切り替えて良かったと評価しています。これまでに一人もインターフェロンの方が良かったと訴えた方はおられません。
先ず効果の面ですが、インターフェロンの方がより有効であった方は一人もおられません。
安全面でも、フィンゴリモドの副作用で中止せざるを得なかった方は極くわずかです。回復しない副作用を経験した人はありません。(だるさ、めまい、しびれ感、腹部不快感などを、副作用であると自己判断し、中止した方が少数おられますが、明らかにフィンゴリモドと関係はありません)一人、ウィルス感染に伴う血球貪食症候群で死亡された方がおられますが、全世界で2人目であり、現在まで約9万人に利用されていますが、その後の追加報告は無く、現時点ではフィンゴリモドとの関連性は無いと判定されています。
リンパ球数が減ることを心配する医師が多いのですが、抗癌剤などでリンパ球新生などの造血能力が抑制され感染症が増えることと混同し、誤解していると言えます。感染症が増加したとのデータはありません。
フィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)は、セカンドラインではありません。 北米、スイス、オーストラリア、ニュージーランドそして日本でも、医師の判断で、ファーストラインとして使うことが可能です。各地域の医薬品行政当局がそれを許可しています。確かにEUの行政当局はセカンドラインとして利用するように指示しています。EUでの判断の根拠は明らかにされていません。
日本では神経学会のガイドライン委員会が作成したガイドラインで、セカンドラインとしての利用が勧められています。ただ、2年前にこのガイドラインを作成した先生方自身のフィンゴリモドの使用経験が少ないため、自らの経験で評価出来なかったことが最大の理由です。長期の安全性が確立されていないとの理由も記載されていますが、インターフェロンでも長期の安全性のデータの収集の報告は、フィンゴリモドとほぼ同様の状況です。日本では、MS患者の数が少なく、一般の医師の診断が難しく、視神経脊髄炎の患者に間違って利用されるリスクがあるとの理由もあげられていました。そうした位置づけに明確な根拠は無く、経験ある専門医は自身で判断するべきであると言えます。
MSの初期にこそフィンゴリモドのような有効性の高い治療を続け、障害の無い一生をおくれることを期待できると思いますので、私なら、先ずナタリズマブやフィンゴリモドを選びます。医師がしっかりした知識を持ち適切な使用をすれば、安全に利用できます。
A: ジレニア・イムセラは効果が高く利用し易い薬剤です。MSは妊娠を希望する親にとっての大きなリスクであり、同時に生まれてくる子供の人生にも親の健康は影響があります。MS治療には効果の高い治療を早期に始めることが重要であり、治療のリスク(副作用)は知識と熱意のある医師であれば防止が可能です。
フィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)を服用していて妊娠に気づき、妊娠を継続して出産をした女性が269人あり、生まれた子供の奇形率は6人(2.2%)であったと報告されています。無治療の健康女性の出産での奇形率が2.1~4.1%であり、流産などの異常の増加もありませんでした(2015年10月ヨーロッパ多発性硬化症学会発表)。さらに例数を蓄積する予定で、それまでは妊娠を希望する2月前には服用を止めるようにと勧告されています。
しかし、妊娠が分かったら服用を中止することで、大きな問題はなさそうな結果であると言えます。
しかし現時点では妊娠希望の2月前に服用を中止するようにとメーカーの添付文書は記載してあります。
アボネックス、タイサブリではもう少し多数例での結果が報告されており、奇形の増加は無さそうなデータです。タイサブリ、コパキソンでは妊娠中もそのまま治療を続けたが、出産も新生児にも異常が無かったとの報告があります。
こうしたデータは有りますが、アボネックス、タイサブリ、コパキソンでは、妊娠が判明した時点で治療を中止し、妊娠中は治療しません。
妊娠中、特に後期では再発は少なくMSは安定します。出産後には再発のリスクが通常より高まりますので、しっかりとした治療の早期開始が必要です。
私もこれまではフィンゴリモド服用中に妊娠を希望する場合は、希望の2月前に服薬を中止していただき、タイサブリ、アボネックスの何れかへ変更し、妊娠すれば治療を再開し、問題は経験していません。一方、時に妊娠希望時や出産後に治療中断を希望する方があり、重い再発を経験しています。
上に書きましたようにフィンゴリモドを妊娠判明まで服用していても大きな問題は無さそうですが、断言するにはもう少し時間がかかると思われます。 (2015/12/30現在)
A: 先ず第一に、ご主人のMS診断が正しいかどうか、やや疑問があります。
1月に初めて症状が出て診断を下されたとのことですので、未だ2度目の増悪(再発)を経験していないのではないかと思われます。その場合、初回のMRIで造影される病巣と造影されない病巣が混在しているか、初回MRI以後にMRI新病巣が出現したことを確認するか、いずれかの確認があれば慢性の活動があることが確定してMSの診断が可能です。
MSが確定しているか、可能性が非常に高い状態であると判定され、脳や脊髄に一定の病巣が残っているのであれば、MS再発進行防止治療を開始するべきで、次の再発を待つのは正しくないと考えられます。
理由は、@再発して障害が残るリスクがあり、A再発が無くても正常に見える脳白質にも潜在的な神経線維の切断が次第に増えることが報告されている、B存在する治療は発病初期にこそ効果が高い、C治療に伴う安全性のリスクより治療の効果の利益の方が、はるかに大きいこと、等です。
フィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)は治験開始から約10年、市販後5年(国内で4年余)の歴史があり、タイサブリは国内では治験から5年、販売後2年弱の経験ですが、海外では市販後でも13年の経験が有ります。医師の知識と対策により安全に利用できるノウハウがこの数年で明確になってきました。何れも新薬ではなく、全世界で何れも10万、20万人以上の利用経験があります。
ハイリスク・ハイリターンという表現は間違いです。医師が勉強をしないで、必要な対策をとらなければ、そのとおりかもしれません。治療をしない損失、リスクを軽視し過ぎていると思えます。
ご主人を診察しているわけではありませんので、あくまでもネット上での情報にもとづく一般論であり、特定の病院や医師につき批判をする意図は全くありませんし、間違っているかもしれませんのご誤解の無いようにお願いします。
(2016/2/1現在)
A: 出産直後から再発のリスクは妊娠前以上に高まります。
従って、出産後にこそ、より効果の高い治療を早期に開始するべきです。
私の治療方針では、出産後1ヵ月は無治療で母乳を与えて頂きます。途中MRIで脳の潜在的な活動性病巣出現が生じていないことを確認します。1ヵ月後から効果の高いフィンゴリモドやタイサブリなどの治療薬で治療を開始します。
この方針で多数のMS女性が問題なく出産、育児をしておられます。
本ホームページ、Q&Aで反復していますが、“MSにより回復しない障害や認知症を生じるリスク”の方が“効果の高い治療薬を使うことにより回復できない副作用障害を生じるリスク”よりはるかに危険です。治療薬のリスクは医師が正しい知識を持ち、正確に対応すれば十分にコントロール可能です。こうした事を患者さんに正確に理解していただくことは、医師の責任であると考えます。
一般論ですが、副作用により責任問題となることを非常に恐れるが、治療しない、あるいは不十分な治療による損失は医師の責任では無いかのように考え、行動する医師が存在することは残念なことです。
(2016/2/20現在)
A: (1)
年齢、肥満度、脂肪肝や肝炎の病歴の有無、などの情報がありませんので、不正確な返答となります。
コパキソン治療中に発生する肝機能障害は非常に稀であり、肝障害は発生しないという論文もあります。しかし極く稀に肝障害が発生したとの報告もあります。その頻度は無治療の一般人でも発生する原因不明の肝障害の頻度に較べ多いとも言えない程度です。
発熱も副作用ではなく、何かの感染が考えられ、肝障害も関連ある可能性があります。
私もMS患者さんで無治療の時に原因不明の肝障害を生じた患者さんを複数経験しています。
従って、貴方の場合も、コパキソンが原因とは断定しないで、原因を追究したほうがよいと考えます。
(2)
フィンゴリモド(ジレニア)服用後に心電図異常が出て、服用を中止したとのことですが、詳細が分かりません。
フィンゴリモドにより心電図異常がでても、初日の服用開始10時間以内であり、その後に異常がでることはありません。翌日以後に出たのであれば、関連のない異常が強く疑われます。
私の510名でのフィンゴリモド処方経験では、元々心疾患が有ったり、心電図異常が軽度にあった人を含め、治療が継続できない異常を生じたことはありません。極く軽度の異常が6時間目までのみに出た人が3名ありましたが、その日の夜からは問題なく、全員継続して服用し、その後は問題が起きていません。貴方の場合も、同様である可能性は無いでしょうか?
いずれかの治療を再開、継続できる可能性が高いと考えます。(2016/2/10現在)
A: 私の現在の治療方針では、妊娠した場合、通常は全ての治療を中断し、妊娠中期の4月目に脳MRI検査をして潜在的再発が脳に生じていないかを調べます。 MS女性の妊娠では妊娠中、特に後期では再発はかなり減少し、経験することは稀です。
私も妊娠の中期までに1度だけ軽度の再発を経験することがあり、パルス点滴を実施したり、軽度であれば、希望により、経過観察してきました。妊娠中の再発により後に残る障害が進行・固定化した方は経験していません。
MSの再発進行防止薬治療を中止しますと、特にフィンゴリモド(イムセラ、ジレニア)やタイサブリのような効果の比較的高い治療の場合、再発を経験することがあります。中止して2月、3月目の再発が多く、特に注意をしています。
貴女の場合はフィンゴリモド中断から再発までの期間が短く、治療中断が一つの引き金でしょうが、疾患活動性そのものも高くなっていたと思われます。フィンゴリモド治療中でも軽い再発を経験することはあります。
貴女の場合、11月からの1回目の再発時の障害が重いにもかかわらず、対応がやや遅れたようです。結果論ですが、妊娠初期であっても症状が重ければパルス治療をするべきだっただろうと推察します。
MS治療としての血漿交換は42%の方では有効だが、逆に58%の方では全く無効であることが示されています。無効かもしれないがやむを得ず行う治療です。また、一部の方で効果が証明されているのは単純血漿交換療法のみであり、貴女に実施された免疫吸着法での有効性は証明されていません。私はNMOSDで免疫吸着治療を使用することがありますが、MSでは使用しません。
妊娠中に疾患活動性は次第に低下し安定化する可能性が高いと思われます。
もし、妊娠中にさらに再発があるなら、より有効性の高いナタリズマブ(タイサブリ)治療が選択肢です。コパキソンとタイサブリは活動性が高い妊婦で妊娠中に継続して使用し、問題が無かったとの報告があります。いずれも、一般的に勧められているわけではありませんが。
(2016/2/20現在)
A: @もし将来に妊娠を希望しているが予定は無く、アボネックス治療中に脳に新病巣が見つかったので、より有効性の高いMS治療薬への変更を考慮しているのであるなら、フィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)かナタリズマブ(タイサブリ)のいずれかへの変更を検討すべきです。タイサブリでなければならない理由はありません。
将来妊活を始める時には再考が必要です。
Aタイサブリは2年以上の使用は難しいのは、約半数の患者さんでの話です。抗JCV抗体インデックス値が一定以上の方では確かにそうです。低い場合は、陽性でも使用継続可能です。
インデックス値が高い時には、フィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)への切り替えをお勧めします。来年中にはおそらくフマル酸ジメチル(テクフィデラ)が利用可能となり、有力な候補になると思えます。
B私の場合は、効果と安全性、利用しやすさ、妊娠をすぐ希望するかどうか、などを総合し、お勧めする順位をつけ、患者さんに選んでいただきます。極く稀なリスクをのぞけば、何れの治療でも一定の注意を払えば安全な利用は可能ですので、効果が重要だと考えます。
(2016/8/10現在)
A: MSの診断は、視神経、脳、脊髄に2カ所以上の病巣があり、かつ時間的に2回以上の悪化(初発と再発)があることで確定します。
同時にそうしたことを起こし得る他の疾患、たとえばサルコイドーシス、リンパ腫、脳梗塞などの他の疾患ではないことを確認するなど、が必要です。
MSの初発時に治療を開始したグループにくらべ、遅れて治療を開始したグループは、その後長期の年月がたっても、平均障害度(重症度)が重く、その差を詰める事が出来なかった結果があります。
初期の、一見なにも起きていないように見え、安定しているように思える時期にも、水面下で、脳に細かな障害が蓄積しつつあることが証明されており、
初期にこそ治療の効果があがりやすいことが判っています。
早期診断の意義、重要性を理解する専門医師の診療をうけることをお薦めします。
A: (1) MS診断が確実で、標準的なMSであれば、最初からフィンゴリモド(ジレニア/イムセラ)を開始しても、全く問題はありません。貴女の場合、副作用がでていないようですので、変更の必要は無いと思います。
一番大切なことは、MSの診断の確度です。 初発の症状があり2月後には症状が消えてからMSと診断されたとのことですので、再発の無い状況です。
MSの診断は、@2回目に臨床症状の再発があるか、AMRI(あるいは他の検査でも)で、新しい病巣の出現、活動を確認することで確定します。貴女の場合、@ではなく、Aであるはずですが、その情報が記載されていない点が少し気になります。いかがでしょうか。
Aではないのであれば、MRI、脊髄液のオリゴクローナルバンドなどの所見が非常にMS的であるのかもしれません。この場合、MS確定ではなく、非常にMSである可能性が高いが、再発がまだない状況ですので、CIS
( Clinically Isolated Syndrome )であることとなります。この診断にはかなりの経験、熟練が必要となります。
(2)パルス点滴治療をしないでフィンゴリモドのような長期の再発進行防止治療を開始することに、全く問題はありません。
発症から2月経ち、症状が消えていたのですから、パルス治療をする必要性は全くありません。パルス治療は新しくでた症状や病巣を改善する目的で実施します。
長期的効果はあまり期待できません。
A: 遅すぎることは決してありません。
ただ、出来るだけ早期に治療を開始するほうが、遅く開始するのに較べて、効果が高く、将来に障害が発生する確率を低くすることは事実です。
再発があれば、急性期治療としてステロイド治療を短期間実施するのですが、その間、長期進行防止治療を開始できないのではありません。開始に必ずしも入院を必要とはしません。
現在、アボネックス、ベタフェロン、フィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)のいずれかを使うことが可能です。
いずれを使うのか、長所、短所、医師の経験など、その選択の根拠を良く理解してください。私は初期から、有効性が高い治療を開始することで、将来の障害進行をしっかりと防止することを薦めています。どの治療でも、適切に注意を払うことで、重大な副作用を避けることが可能です。
A: 本ホームページに繰り返し書いていますが、治療を早く開始するべきだろうと思います。
これまでのところ比較的軽度の悪化があったが、幸いに回復し、脳病巣の数も多くないようです。 しかし、今後の10年、20年も同様であろうと期待するのは、危険すぎると思われます。 そうした良い経過が長く継続するのは、幸運な少数の方であり、それを確実に予測すること、現時点では困難です。
治療の副作用や面倒さをいやがってこられたのだろうと推測します。
しかし、MSの障害の重大さ、本人や家族に与える影響、育児に対する責任を考えますと、そうしたリスクは比較にならないものだと思います。
神経組織は、病巣が出来、障害が固定化されると、回復は困難です。
治療効果は、発症からの経過年数が経てば、次第に低下します。同じ治療でも、初期に開始するのに比べ、遅れて開始すると、低い効果となります。 早期に治療を開始してください。
ただ、視神経脊髄炎でないこと、抗アクアポリン4抗体と脊髄MRIで一度の長い病巣が出現したことが無いことを、確認しておくべきだと思います。(2015/7/18現在)
A: 御記載の内容からは、貴方のお嬢様はMSの初発状態で未だ再発の無い時期であるCIS (clinically isolated syndrome:臨床的な初発時症候)
です。CISの欧米での追跡研究では短期間で再発が生じ障害の進行もみられるグループから10年を経ても再発が起きていない少数のグループまで、経過は多様です。しかし、お嬢様の場合はその中でも楽観できるグループに入っているとは言えないと思われます。
従って、私はMRIを直接に見ていませんので確定的ではありませんが、長期的な再発進行防止治療の開始をするべきだと思われます。経過をみるのみで治療を開始しないのは消極的だと考えます。有効性と安全性の高い治療の選択が望まれると思います。
MSの再発進行防止薬はその効果の程度により4群にわけることができます。 第1群は1990年台に開発された第一世代薬であるベタフェロン、アボネックス、コパキソンです。これらの効果はほぼ同程度で再発抑制率は30%程度です。
第2群はフィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)で効果は第1群の2倍程度です。
第3群はタイサブリとミトキサントロン(ノバントロン)で第2群のさらに2倍程度の効果があります。後者がやや効果が高いかもしれませんが、重大な副作用として白血病があり、回避策が存在しませんので、他の全てが無効か利用困難なときのみに考慮する選択肢です。
第4群はアレンツーツマブ(レムトラダ)でさらに高い効果がありますが、国内では未だ使用できません。
私の20年間、約1000人での第1,2、3群の使用経験では、群間の効果の差は明確で、個人により逆転するということはありません。
薬剤により安全性・副作用と利便性が異なっていて、有効性を含めた総合評価を、個人の身体条件、合併症、生活様式、好み・希望・人生観を考慮に入れて、私がお勧めする治療を、順位をつけて選び提案しますが、最後にはご本人(家族)が決めることとなります。
お嬢様は15才ですので、体重にもよりますが、ほぼ成人に近く、1,2、3群のどれでも選ぶことができますが、私はフィンゴリモドがお勧めだと考えます。私は11歳以上でのフィンゴリモドの長期使用経験がありますが、16歳以下での副作用の経験はありませんし、成人と異なる副作用を心配する必要は無いと考えますし、成人同様に安全な使用が可能です。
現在、10〜16歳での全世界での臨床治験が進行していますが、日本は参加させてもらえていません。
フィンゴリモド使用でも再発やMRIでの新病巣の出現が見られた場合には、タイサブリの使用をお勧めします。小児での使用のレポートも多数あり、私も経験があります。(2015/11/22現在)
A: MRI病巣が増えれば、治療を開始するか、変更を考えるべきです 現時点で新病巣の出現がなくても、比較的最近に増加・出現したのであれば、治療を開始するか、治療中であれば、その治療を変更しより有効性の高い治療へと変更するべきです。臨床再発とMRI病巣出現の意味は同等です。(2015/12/5現在)
A: 多くの他の疾患でもそうであるように、MSでも早期治療を開始するほうが、遅れて開始するのに比べて、同じ治療でもより高い効果を期待できます。
貴女は、約6年前に発病し、10月に再発があり回復したが、下肢が少し弱弱しいとのことで、極く軽度の障害が残っていると思われるが歩行に問題は無い。脳と脊髄にMRIで病巣が見える。しかし、未だ無治療とのことです。平均的な発症年齢と経過のほぼ典型的MSの女性だと言えます。
北米で1993年までの初めてのMS治療薬であるインターフェロン(ベタフェロン)治験に参加した多数の患者さん全員を、その後21年間追跡調査した研究があります。初めてのベタフェロン治療を2(〜3)年間受けられた人達(実薬群)と、2(3)年間偽物薬を使用した人達(偽薬群)が、治験の2(〜3)年間の終了以後は、全員が本物のベタフェロン治療を受けることが出来ました。
その後の経過を比較しますと、当初の2(〜3)年間のみ偽物が当たった人達(偽薬群)では、2(〜3)年間先にベタフェロン治療が開始されていた人達(実薬群)と較べ、21年の間に、MSが重症化して、嚥下性肺炎や膀胱炎などの合併症で死亡していた人が2倍ありました。
現在の評価では、ベタフェロンは約7割のMS患者さんで有効ですが、効果はそれほど高いものではありません。それでも当初の2年間のみ先に治療が開始された人達は、遅れて治療が開始された人達に較べ、21年後までの死亡が半分であったということは、治療を早期に開始することの重要性を明確に証明していると言えます。
他にも、早期治療開始の重要性を示すデータは多数存在しています。
従って、私は早期の治療開始をお勧めします。現在はさらに有効性と安全性も高い治療があります。早期治療を開始すれば、現状以上の障害を来たさず、普通の人生を送れる可能性が高いと言えます。
担当医が治療を開始しない理由は、早期治療の重要性の認識が無いことと同時に、恐らく副作用などの治療に伴う問題の可能性を過大に考えておられる為であろうと推測します。
しかし、このホームページなどで繰り返し記載していますが、そうした副作用リスクは担当医の知識と熱意で充分にカバーできます。私の約1000人のMS治療経験で、副作用で生じたと判断される後遺症が残ったり、死亡した例は1例もありません。(2015/12/22現在)
A: 症状が無い初期の段階で治療を始める必要性を理解するには、MSという病気を理解することが前提だと思います。私のホームページに書いてありますように、MSは潜在的に進行し、初期には症状を出さないのが普通です。
そうした時期にこそ治療の効果が高く、将来障害が固定化するのを防止し、一生普通の生活を送れるチャンスが有ります。
一生薬をのみ続けるのかとの気持ちも良く分かりますが、15年前までは効果のある薬は全く無かった状態から、現在は5種類、世界には12種類の薬がある状態へと進歩しています。
将来は一度の治療で、その後の治療の不要な、治癒が可能な薬も出現するでしょう。それまで、現在の薬で進行を完全に抑えることが可能になってきていると理解し、現在の最善の治療を始めるべきです。
現在の治療は、貴方に大した負担をかけるものではありませんし、十分に安全です。 (2016/1/5現在)
A: 脳と視神経のMRI画像だけでも診断がつく可能性が有ります。
早期に診断を確定し、障害が残らないように治療を開始する必要があると思われます。
この投稿の後まもなく、本ホームページの「MS電話医療相談」へお電話をいただき、翌日に診察にこられました。
視神経造影MRI検査を実施しますと、右視神経の中央部に軽度腫脹を伴う病巣を認め、一部に造影が陽性であり、炎症を伴う新しい増大しつつある病巣があることが判明しました。
脳造影MRIでは、楕円形(オボイド)の病巣が大脳白質に散在し、一部は脳室に接し、一部は表面近くの脳皮質直下の白質のU型の病巣であり、いずれもMSに特徴的形態と部位でした。それらは古い病巣、比較的新し病巣の混在であり、時間的にも慢性の経過をたどっており、視神経の病巣は現在進行中であることを示しています。
問診では、昨年の夏に一時手足のシビレ感が続いたことがあったことを思いだされました。
診察では両下肢の深部腱反射が明確に亢進しており脳・脊髄の病巣による運動神経系に影響が出ていることが分かりました。
これらを総合しますと、MSの診断が充分に可能であると判断されました。視神経の障害は進行中であり、早期の治療開始が重要であることを説明申し上げ、ステロイド点滴(パルス)療法を開始しました。
また特定疾患の手続きにつき説明申し上げ、早急にMSの再発・進行を防止する長期治療を開始することを決められました。
治療開始にあたっては、妊娠の希望があり、それを考慮に入れた、効果の高い治療を開始することとされました。
(2016/2/15現在)
A: @
RISとはradiologically isolated syndromeの略であり、臨床症状が未だでていないが、画像所見がMSの特徴を有しており、かなりの確率でMSであろうという状態を意味します。
画像所見により、確実性にはバラツキがあり、1枚のスライスの画像のみでもMS確実と言えることもよくあります。読影医師の判定能力に大きく依存します。貴方の場合はMSの特徴をかなり有しているとの前提でコメントをします。
比較的短期間に新病巣が連続して出現しています。そうであればMSであれば造影病巣がかなり発見されるはずですが、いかがでしたでしょうか?その所見もMSらしさ判定に重要です。
病巣の増加速度が速いということは、活動性が高く障害進行が速い可能性の高いMSであることを意味しており、有効性の高い治療を選択するべきであると言えます。
MS病巣の分布が脳、特に大脳に限局している限り、症状の変化をとらえることができないことが多いのが特徴です。一定のレベルを超えますと情報処理速度の低下、認知障害、歩行のバランス障害などがでますが、そうした時には治療効果が期待できないのが普通です。
A
有効性の高い治療とはフィンゴリモド(イムセラ、ジレニア)かナタリズマブ(タイサブリ)が該当します。
ナタリズマブは最も有効性が高く、疲労感が無くなることが多いのが特徴ですので、私の患者さんであれば、貴方のような方にお勧めします。恐らく強力な炎症の抑制によりサイトカイン分泌が減少することによると考えられています。
(2016/5/20現在)
A: 診断はおそらく正しいのでしょうが、診断の正しさについて判断するには、もう少し情報が必要です。再発性急性散在性脳脊髄炎であった可能性と、これまでは非常に経過の良かった「良性MS」である可能性とが有ります。後者であれば、楽観はできません。将来も良性である保障はありません。
以下のような情報が必要です。
初発症状の複視が出現し、同症状の再発があったようですが、時間的な間隔は?
それから、右半身の麻痺があったようですが、それまでの時間間隔は?
髄液検査の詳しい結果は?
MRIで再発時に新病巣が出たのか、調べたのか? 病巣はMS的かどうか、その後どうなったか?現在は?
その後、MRIでの検査の間隔、方法、結果は?
こうした情報を持参くだされば、相談に乗ります。(2016/7/10現在)
A: 脳MRIに30個程度の病巣がみられ、歩行は杖を使ったり、使わなかったり変動があり、ほぼ普通の生活をしておられるとのことです。
恐らく初発症状の出現から15年経過しているが、今さら治療を開始する意味が有るだろうか、不安であるとのご質問です。
15年経過していても治療を開始する意味は大いにあります。貴女にとって一度だけの人生です。諦めて自然の経過に任せるのではなく、少なくとも現状の維持を目指し、治療を始めるべきです。このホームページを見つけて下さり、本当に良かったと思います。
現在の日本にはMSの再発・進行抑制に5種類の治療法が有りますが、何故コパキソンを選ばれるのか、それがベストであるのかについては、お手紙だけでは十分には分かりません。
杖を使うことも有ること、脳病巣が30個は有るとのことですので、MRIを見ないと分かりませんが、恐らく脳萎縮がある程度あるのではないかと推測されます。比較的有効性の高い治療薬の使用が望まれるように思われます。
ステロイドパルスの後、予防治療開始まで1月以上待つというのは間違いです。そうした待ち時間を置く必要は全くありません。パルス療法と同時に予防治療を開始することも可能です。少量のプレドニンを継続するのも、MSの治療としては意味がなく、むしろ有害です。(2016/7/20現在)
A: 入院する必要はありません。6時間病院にいなければなりませんが、泊まる必要はありません。
ただ、事前の検査や聞き取りで、心臓の障害が疑われる場合には入院して頂くことがあります。
A: フィンゴリモドの副作用としての徐脈は、普通の多発性硬化症(MS)患者様にとっては全く危険なものではありません。 治験での副作用情報が出回っていますが、現在では利用しない1.25mgやそれ以上の多い量を服用したために副作用が多かった患者さんの情報が混じっていることを、医師が
理解しておられない可能性もあります。
医師が未だ経験が少なく、副作用に関する正しい情報が伝わっていないことも多く、MS専門と称する先生でも必要以上に不安がっておられる事が多いと感じています。
脈拍は55〜75程度で、ほぼ規則正しいのが普通です。フィンゴリモド(ジレニアまたはイムセラ)0.5mg錠を初めて服用しますと、 脈拍が減少し始め、3〜6時間後に、平均で10程度低下しますが、その後次第に元に戻り、2日目以降に1錠の服用を毎日繰り返しても、
同じように減少することはありません。初日に脈拍数が少し減少しても、ほとんどの患者様では自覚症状の変化はありません。
日本人では約5%の方で瞬間最低脈拍数が50を切ることがあり、軽い浮遊感を感じることがあります。 また、2%程度の方で短時間だけ心電図で2度心房心室ブロックという軽度の異常が出る方があります
。稀にこうしたことがあるため、海外では初回の服用時に6時間、日本では24時間心電図でモニターすることが薦められています。
大切なことは、事前の心電図検査などで、重大な心臓疾患が無いことを確認することです。MS患者さまで、そうした心臓の合併症を持っていることは非常にまれですが、
一定の心臓の問題が有る場合には、循環器の専門医と相談をして、慎重に初回投与を実施します。軽度の問題であれば、まず問題なく服用できます。
私はこれまでに200名近くのMS患者さんにフィンゴリモドの投与を行いましたが、臨床的に問題となる異常を来した方は無く、全員で安全に服用できています。 特に危険性の無い心電図の変化が数時間後に出現した方が2名ありましたが、症状は無く、その後は出現していません。 また、元々徐脈で服用前に脈拍数が40台だった患者さんでは、
数時間後に瞬間的に32の徐脈がありましが自覚症状は無く、 また以前から心房細動があり脈拍がかなり不規則な患者さんでも問題なく、その後も安全に服用出来ています。
必要であれば、初期のフィンゴリモド投与を関西MSセンターで実施し、遠距離の方の場合は、短期間で、地元の先生の管理へとお返しすることもしています。
必要な場合は電話でご相談ください。
A: 移動が多い方は注射を携帯しにくいので、経口薬フィンゴリモドに切り替える理由になります。より効果が高いので、問題は有りません。
ただ、切り替えの当初の3月間は、2週、1,2,3月目に採血検査を受ける必要があります。地元や旅行先などの開業医のクリニックに依頼状を持参し、検査していただくことも可能です。 また、4月間に眼科を2〜3度受診しOCT検査を受けることをお薦めしています。
一般に服薬開始時には入院が必要だとされていますが、私は入院無しで、外来で開始しており、これまで250人で問題は生じていません。
処方期間は診察の頻度により決り、服用開始初期には上記のように検査があり、その度に出すのが普通です。
遠隔地の方には、私は電話再診や近くの医師との協力で、色々の便宜を図っていますが、担当医師により大きな違いがあるでしょう。
いずれにしても、処方する医師が状況を把握していることが必要で、処方期間に特別の決まりはありません。
A: フィンゴリモド治療開始時には、1,2、3ヵ月後に検査し、その後も1年間は3ヵ月に1回は検査を続けてください。 1年間異常がなければ、其の後は4ヵ月に1回程度の検査をお勧めします。
A: 水痘帯状疱疹(ヘルペス)の抗体が陰性の場合には、パルス後3週間ほど経ってから生ワクチン接種可能です。通常は3月後に2回目の接種をすることがお勧めです。その後1月も経てばフィンゴリモド開始が可能です。
(2016/1/25現在)
A: フィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)による肝障害は軽度なものがほとんどですし、定期の検査で完全に把握できるのですから、使用しないで怖がるのは間違いだと思います。
私の200人以上の患者さんで軽度の異常値が一度でもあったのは、30%程度の方ですが、中止が必要な程度の数値となったかたは一人もいません。 インターフェロン(アボネックス、ベタフェロン)でもかなりの率で肝障害がありますし、中止せざるを得ない強い悪化は、私はインターフェロンでしか経験していません。
フィンゴリモドで腎障害が起きることはありません。
関西MSセンターではフィンゴリモドをこれまでに225人の方が利用しました。使用開始後に中止した方がありますが、最も多いのは妊娠希望です。 受胎を希望する場合は、性行為の2月前に服用を中止するようにというのが、メーカーの希望ですし、私の患者さんでもそうしたルールを守り、すでに正常な妊娠、出産をしておられます。
しかし、妊娠を予定せず、ジレニアを中止しないままに妊娠してしまった女性が、全世界では昨年の夏ごろまでに100人を越えていました。そのうち約50人が出産をしていましたが、奇形率が特に高くはありませんでした。
流産率もほぼ通常でした。しかし、まだ集計された人数が少ないので、1000人までデータを全世界で集めています。
妊娠を希望して、漫然と無治療の時期を作ることは、かなり危険ですので迅速な判断をし、科学的に受胎可能性を高め、無治療期間を最短にするべきです。専門的な対応が必要です。
A: フィンゴリモド服用中の男性は、パートナーが妊娠するにあたり、服用を中止する必要はありません。
ナタリズマブ(タイサブリ)では、男性が奥さんを妊娠させる前に使用を中止するように、と記載されています。しかし、実際には、使用中止しなくて妊娠してしまった例がたくさんあり、生まれてきた子供に、特に問題は起きていません。
A: フィンゴリモドを妊娠判明時に使用していた269人での出産、流産などの結果は薬を使用していない健康女性の妊娠、出産と全く差がありませんでした。健康女性でも一定の割合で問題が生じており、それと差が無かったという意味で、問題が起きないと保証するものではありません。
一方、インターフェロン、グラチラマー酢酸塩(コパキソン)、ナタリズマブ(タイサブリ)は歴史が長く、より多数の同様の事例が報告されています。それらでの胎児、新生児の奇形、流産などの結果は、いずれも上記のフィンゴリモド269名での結果よりやや異常の頻度が高いが、ほぼ正常範囲内であると考えられています。
また、MS活動性が高いため妊娠期間中にも利用した結果も次第に集積されています。
タイサブリ、コパキソンでは、これまでの報告では、妊娠中に利用しても問題の発生が無かったこと報告されています。
γ-グロブリンも同様ですが、MS治療薬ではありません。しかし、旧い間違った情報に基づき、現在でも利用する医師が有ります。
グラチラマー酢酸塩(コパキソン)が妊娠に対し比較的安全性が高いとされている唯一の根拠は、米国FDA(医薬品の審査を担当)が約20年前の同薬承認時に、妊娠に対し比較的影響がすくないと考えられるグループであるcatergory
B に分類したことによります。これは動物実験で奇形発生が無かったことに基づいています。人での実際の使用中の結果を反映したものではありません。
全ての薬で開発の初期に基礎的な催奇性を調べる動物実験をし、当局へのデータ提出が求められます。人間に使用する量の100倍などの高用量の薬を妊娠マウスなどに投与し、胎児の奇形発生がどのような頻度で出るかを調べます。グラチラマー酢酸塩以外のMS薬では、非常な高用量でマウスなどには一定の奇形や流産を誘発しています。フィンゴリモドは人間での治験の初期に利用した5mgの10分の1である0.5mgでも有効であり、低い量の方が肝障害などが少なく、より安全であったので0.5mgを利用することになりました。
また、人での治験ではすべてのMS治療薬で妊娠しないことが求められていて、正式のデータが存在しないため、薬務当局はコパキソンを含めた全てで妊娠したい時には利用しないことを求めています。しかし、実際には市販後に何れの治療でも使用中に妊娠した女性が多数あり、その結果の報告が集積されています。また、MSの活動性が高いため妊娠中にも利用した結果も報告されています。
殆どの医師はこうした報告を直接に自分で調べないで、添付文書やたまたま目に触れた一部資料、主張を参考にして判断、行動しておられますが、旧い資料に基づくことが多いのが実際です。
重要なのは実際に人間のMS患者さんで利用してどのような問題が起きているかです。これまで集積された人間でのデータでは、インターフェロンMS治療薬、コパキソン、フィンゴリモド、タイサブリなどでの奇形や流産の発生は、治療無しの健常女性での結果と殆ど差がありません。そうした多数の報告をもとに、以下、返答します。
1. イムセラからコパキソンに切り替えた場合、再発のリスクは上がるか?
A: 上がります。インターフェロン(ベタフェロン、アボネックス)への変更でも、同様です。
私は、一定のMS活動性がある方には、妊娠を希望したらナタリズマブ(タイサブリ)への変更をお勧めし、多くの方が利用しています。再発を経験することは、これまで有りません。
2. イムセラを中止した場合、すぐにコパキソンを使用できるのか、休薬期間があるのか?
A: 休薬期間を設けるべき理由、根拠はありませんが、多くの医師が休薬期間を設けているようです。MSの治験期間にはそうしたことが、その薬の効果、問題点と出現する時期のデータを集積する目的で要求されるのが一般的です。それを慣習的に継続している医師が多いのが理由でしょう。
全てのMS治療薬において、休薬は不要というより、休薬することは危険でMS再発のリスク上昇を予期する必要があります。どの治療への変更の場合でも同様ですが、本人の活動性が高いほど、また有効性の高い治療薬ほど、休薬は危険です。
3−1.妊娠直前までコパキソンを使用して、妊娠したらやめるのか、
A:全てのMS薬の添付文章では事前に中止するように求めています。
しかし、これまでの実績から判断すると、妊娠が判明したら中止することで充分に安全です。
生理が来なかったら直ぐに投薬を中止し、妊娠診断をしてください。陰性なら、直ぐに再開。
妊娠なら、そのまま出産まで中止します。
3−2.妊娠中もコパキソン治療を継続したほうがよいのか?
A:妊娠中をとおして利用した報告はまだ少なく、通常は妊娠判明と同時に中止します。初期ほど再発リスクがありますが、実際には再発の経験は少なく、通常のMS女性ではあまりご心配する必要はありません。
4.胎児のリスクはどうなのか?
A:上記したとおり、胎児へのリスクが完全には保障できないから、中止します。
5.出産後は再発リスクを考えイムセラに切り替えたいですが、テクフィデラが発売される予定のようで、その事も知りたいです。宜しくお願い致します。
A:テクフィデラは来年中には発売されると予想していますので、出産後には利用可能でしょう。ただ、イムセラより優れているかどうかは問題が有ります。効果は少し劣ると思っています。イムセラの使用になれていない、あるいは問題があった患者さんには良いかもしれません。
(2016/4/30現在)
A: (1)フィンゴリモドは妊娠希望日の2月前には服用を中止するように勧告されています。タイサブリ治療を開始してすぐにPMLリスクが始まることはありません。1年半はどの人でも問題がありません。
タイサブリ治療中、あるいは中止直後にPMLが生じるのは、JCV抗体インデックスが一定以上高い方のみであり、陰性や低値の方では、いつまでもPML発生は有りません。
またインデックスが高く将来はリスクが始まる方でも、1年半まではPML発生はありません。
インデックス1.5以上の場合で1年半〜2年で1000人に1人のPML発生リスクであり、2年以後は100人に1人の頻度です。
0.9以上の方は2年を超えると1000人に1人のリスクが始まります。
従って、そうしたリスクの始まる前に使用を中止し、リスクを回避することが可能です。
JCV抗体インデックスは事前に調べることが可能です。しかし、データに関係無く、1年半は問題がありません。その間に妊娠できるように、時間を無駄にしない科学的な作戦を立てることをお勧めします。
(2)ディメチル・フマール酸(テクフィデラ)は来年には利用可能となると期待されています。この薬剤でも妊娠の2月前には中止が勧告されています。発売から2年程度ですので、間違って妊娠し出産した新生児のデータの蓄積は多くありません。
(3)タイサブリかフィンゴリモドを中止した場合、平均するとタイサブリを使用していた人の方が再発の増加が多いのですが、その理由はタイサブリを使用している方は使用前のMSの活動性がより高かった方が多いためです。どの治療でも中止後に再発を増やすということはありません。どの治療の場合でも、利用開始前に再発が多かった方や、利用中にも再発が有った方は、中止後に活動性が高まる可能性が高いので、無治療の時期を設けることは危険です。そうした方では有効性の高い治療の継続が必要です。
(2016/8/15現在)
結論的には、早急にフィンゴリモド治療かナタリズマブ(タイサブリ)治療を開始するべきだと考えます。
貴女のMSは決して活動性が低い良性とは言えないタイプです。無治療ですと重い身体障害や認知症、脳萎縮の状態が来る可能性が高いでしょう。そうなりますと回復は望めません。
フィンゴリモド治療を受けた欧米の多数の治験参加者では、偽薬にくらべ感染症の増加はありませんでした。
血管内のリンパ球数の減少が生じることが多いのですが、他の免疫抑制剤のように核酸に結合したりしてリンパ球の分裂・増加を抑制し、
全身からリンパ球が無くなっているのとは異なり、リンパ節を含む全身のリンパ球数の減少は無いと考えられています。もともと血管内リンパ球は全リンパ球数の2%以下しかなく、
ほとんどはリンパ節内にありますが、その割合がさらに減少しているだけです。また、リンパ球数と感染症の頻度にも関係はありませんでした。
私の420人のフィンゴリモド使用の経験でも、感染症の増加は全くありませんでした。
従って、添付文章や、説明書きに書かれている、感染症が増えるとの記載は根拠がありません。
リンパ球数が減れば感染症が増えるという、他の薬剤や、癌、白血病での経験を機械的に当てはめた推測にすぎません。
無論、フィンゴリモドを使っても、使わなくても感染症はあり得ます。
十分な注意を払い、万が一感染があれば、適切な初期対応、治療開始をおこなうことが最も重要です。
感染症が多いとのことですので、事前に免疫能の詳しい検査を受け、いくつかの感染症への免疫の状態も確かめることをお勧めします。(2015/3/11現在)
A: 眼瞼下垂の手術は非常に軽い手術です。フィンゴリモドを中止したり、開始を遅らせたりする必要は全くありません。これまでの多数例での長期間の観察では感染症が増えたり、癌の発生が増えたりすることは無いことが確認されていますので、中止の必要性はありません。万一、手術後に感染が生じたとしても、抗生物質による通常の治療をしていただき、フィンゴリモドは中止する必要はありません。
A: 小児で罹患する水痘(すいとう、みずぼうそう)を起こす水痘帯状ヘルペスウイルスは、ほとんどの人が小児期に自然罹患し、抗体陽性となります。日本では有料で乳児にワクチンをうつことが多く、その場合も抗体陽性となります。
抗体陽性ですと感染しても免疫が守るため再感染で発症することはほとんど有りません。成人での陰性者はかなり稀です。
一度感染してからは皮下の感覚神経に持続的に感染していますが通常は活動しません。しかし、抗体陽性の人でも30歳頃からは抗体価がかなり低下します。さらに老齢化とともに、他の感染症やストレスによる免疫能の低下などによって、あるいは強い免疫抑制剤の使用、癌などで免疫能の低下などがあると、抗体陽性の人でも帯状ヘルペスの発症が多くなります。
子供の水痘のように全身性の感染症状や全身の皮疹ではなく、一部の神経の走行にそった発疹ですが、手当が送れると、一生、神経痛を残すこととなります。
まれに脊髄炎や脳炎を生じることもあります。帯状ヘルペスは成人、特に老人ではかなり一般的に見られます。 アメリカでは60歳で再度ワクチンを打つこととなっており、日本でも近く老人用に利用可能となる見込みです。
成人となってからも抗体陰性の方が稀に存在し、水痘帯状ヘルペスウイルスが初感染しますと重症化しやすく、全身の発疹、肺炎、脳炎、全身の臓器不全などを起こすことが多くなり、死亡する場合もあります。帯状ヘルペスにはなりません。はしか(麻疹)でも成人での初感染は重症化し、危険であることは昔から有名です。 従って、水痘やはしかの抗体陰性であることが判明すれば、小児に使われる弱毒生ワクチン使用を薦めるのが普通です。
フィンゴリモドを使用する前に水痘帯状ヘルペス抗体が陽性であることを確認してください、と使用説明書に記載しています。 抗体が陰性であればどうするかは記載されていませんが、ワクチンをうち(6000円余り)、2週以上経ち、抗体陽性となったのを確認して使用するのが普通です。
抗体陽性であることを確認するようになった理由は、フィンゴリモドの国際治験の途中で、韓国の1人の患者さんが、劇症の水痘感染を生じ、診断が遅れたため抗ヘルペス薬の使用も遅れ、結果として死亡したことがあります。 この方は抗体陰性で初感染で、フィンゴリモドは現在の使用量の2倍を服用していました。フィンゴリモド使用との関連が疑われるとして当局へ報告されました。
A: 上記の回答の中で記述した水痘ヘルペス感染で死亡した例のあった国際治験の2年間とその後の2年半、計4年半の治験に参加した多数例での感染症を含めた副作用調査が行われて、発表されています。
ヘルペスや、他の普通の感染一般は、フィンゴリモド使用者と非使用者(偽薬使用者)で差がありませんでした。 2年間の治験中にくらべ、その後の2年半でも、感染症やその他の副作用と思える問題事象が増加する傾向はありませんでした
。こうした、多数患者での比較報告がもっとも信頼がおけるデータであり、個別の問題事象は、偶然に発生した事象である可能性が高いと言えます。 従って、感染症一般にあまりに過敏になる必要はないと言えます。もし感染があれば早期に適切な治療を受けるのは当然です。
韓国のヘルペスによる死亡例も、現時点ではフィンゴリモドの副作用で感染が生じたというより、 抗体陰性であったために偶発的に生じた可能性の方が高い、と判断されます。同様の例はその後、報告されていません。
当局への副作用報告は、その時点でフィンゴリモド使用で感染が生じたことを担当医師が完全に否定できなければ、「薬剤服用と関連した有害事象」と報告することとなっています。
しかし、薬をのんだ後に発生した問題事象(有害事象)の全てが、その薬によって生じたとは言えません。薬をのまなくても発生した可能性もあるからです。
その後、同様の例がどの程度報告され蓄積されるかで判断されます。どの薬剤でも「副作用」として様々な現象が記載されていますが、
記載した時点で担当医が副作用では無いと言いきれなかった「有害事象」が、いつまでも「副作用」として記載され続けている例を多くみます。
非常にまれな副作用の可能性を、長期のデータ蓄積でチェックすることは、メーカー、医師、当局の共同の責任であり、注意深い観察をつづけるべきなのですが、
いつまでも必要以上に恐怖をあおることは、逆に有害であると思います。
A: ジレニアを再開して差し支えないと判断します。
フィンゴリモドを使用開始し、初期には十分な効果がでず、6カ月まで次第に効果が高まり、安定するようになります。他のMS薬でも同様の現象がありますが、フィンゴリモドでは、やや時間がかかります。
再発は無いほうが望ましですが、フィンゴリモドでも時に再発が有る人が一定程度あります。
しかし、インターフェロン(アボネックス、ベタフェロン)に戻すと、再発はもっと増えますので、元に戻す事はおすすめしません。
フィンゴリモドで再発があれば、私はナタリズマブ(タイサブリ)点滴をお勧めしています。もし変えるなら、ナタリズマブでしょうが、もう少し継続して判断することをお勧めします。
パルス療法をして服薬を止めたようですが、止めるべきではありません。継続しつつパルス療法をして、なにの差支えもありません。
真菌感染はパルスの影響の方が多いと考えます。適切な治療の併用で、根治をするべきです。
A: (1)
早く、しっかりした歯科治療をうけるべきです。放置することのほうがはるかに有害です。
フィンゴリモド服用中にリンパ球数は低下することはあっても、感染症の増加にはつながりません。多数例での2年間の偽薬群との比較、その後2年間の追加観察で、偽薬群に比しフィンゴリモド群で感染症の増加は認められませんでした。
また、リンパ球数が強く減少した群と減少しなかった群の間にも、感染症の頻度に差はありませんでした。
こうした事実がありますので、私は様々な手術をする場合でも、フィンゴリモド投与を中断していませんが、感染症の合併で困った経験はありません。
貴女のリンパ球数減少の程度はフィンゴリモド服用中によくある程度であり、特に減少しているとは言えません。特別の配慮は必要が無いと思います。
無論、歯科手術をすれば、フィンゴリモドを服用していなくても感染するリスクは0では無く、絶対に感染が生じないとは誰も言えません。通常の予防処置をしても、万が一感染が生じてしまったら、通常のように適切な処置、抗生物質の投与などを受けるべきです。
私の1000人以上のMS患者さんでの経験で、様々な手術、出産、歯科処置などで再発を生じた方は有りません。出産してしばらくして再発することはありますが。
(2)
もし、どうしても不安であれば、タイサブリ治療に切り替えれば、リンパ球の減少はありませんし、MSの再発防止効果もより高く、1年半の間は誰でも安全に治療が可能です。
(2016/6/22現在)
A: 不整脈があっても、状況により経口薬フィンゴリモド(ジレニア/イムセラ)を利用できることもあります。
アブレーション治療を受けているとのことですので、問題が無い可能性が高いでしょう。あきらめる必要はありませんので、一度受診してくださることをお薦めします。
循環器専門医と相談をして、評価をして最終的に決定します。不整脈が有る方でも、これまでに慎重に使用開始をすることで、問題なく経過しています。
一方、2013年5月から非常に安全性が高いといわれているBG12という経口薬の治験が始まります。その他にも近く始まる新薬の治験があるのですが、年齢制限があります。(この記述は2013/5月現在)
A: フィンゴリモドは心臓病があっても、多くの場合は利用可能です。ペースメーカーや植え込み型除細動器(ICD)が入っていると安全性はむしろ高いです。投与開始日だけ入院して注意を払えば、翌日から問題が生じることは、理論的にはありません。医師が誤解していることが多いようです。
A: フィンゴリモドの副作用に「痙攣」はありません。
MSの症状に変化があったと推定しますが、「痙攣」と表現されている症状が、どのような症状を意味しているのか良くわかりません。 しかし、フィンゴリモドは有効性が高いですが、服用開始から6ヵ月、特に3ヵ月以内には、一部に軽度の再発が生じることもありえます。
あるいは、元々あった下肢の突っ張りが、やや強くなっているが、再発では無い可能性もあります。診察しないで、文面だけで状況を判定するのは危険です。
痙攣ということは下肢に反復する筋肉の収縮があるのだろうと推定します。意識は失っていないようで、てんかん発作では無いようです。 最もよくある症状として推定されるのは、下肢の痙性が高まって、勝手に下肢がガクガクとリズミカルに動いているのではないでしょうか。
以前から下肢に痙性が強かったのが、少しだけ突っ張りが強くなったのか、運動麻痺が増強していないのかなどを、識る必要があります。
下肢のどの筋肉にでるのか、反復する時間のサイクルは1秒に何回か何秒に1回か。どの部位に、どんな時間に、どのような状況で出現し、どのくらいの時間続くのか?
神経内科の医師であれば、こうした症状を分析し、原因を説明し、治療方針をだせるだろうとおもいます。痙攣には、いろいろな治療薬があります。
A: ウルソ、フィンゴリモドの何れでも、生理不順が生じることはありません。
私もフィンゴリモド服用中に肝機能値が少し上昇することを良く経験します。 そうした時に何時もウルソを処方しています。一定の効果が明らかにあります。
ウルソの副作用として、生理不順は全く報告されていませんし、私の多数例での経験でもありません。
フィンゴリモドでもありません。
ある薬をのみ始めたら問題症状が出ても、また中止したら症状が消えても、副作用であると断定することはできません。確かに疑いは持ち、詳しく調べるべきです。
しかし、もし既に多数例の方が飲んでおり、同じ報告が無い現象であれば、偶然であったと考えるべきです。
私の情報を持って、婦人科を受診し、相談、検査をすることを、お勧めします。(2015/7/16現在)
A: リンパ球の減少は心配の必要は無いと思われます。私のこれまでの485人の経験では、貴方と同じ程度や、それ以上にリンパ球が減少した場合でも、感染症の増加は認めていません。
内服を中止したり、減量したりする必要はありませんでした。
フィンゴリモド内服開始の初日にのみ徐脈が見られますが、翌日からは影響は見られません。
徐脈や動悸が時にあるとのことですが、本薬と関連の無い現象であると思われます。内服開始前にも、同様のことが時に無かったでしょうか? 同時に始まったとしても、他の原因があると考えられます。問題がある徐脈や不整脈であるかどうか、調べることは可能なはずです。(2015/10/4現在)
A: フィンゴリモドで白血病や悪性リンパ腫の発生が増加するとの証拠はありません。
8年前に日本で171人がフィンゴリモド治験に参加した中で、悪性リンパ腫の方が2名発見されました。
1人は12年経過していたMSの方がフィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)治験に参加し、3年服用した時に脳に悪性リンパ腫の発生が見つかりました。現在は治療により安定した経過をとっておられると聞いています。
もう1人は、発病して比較的早い時期に治験に参加し、約6月後に悪性リンパ腫が発見され、その約半年後に死亡しておられます。しかし、死後の解剖での病理医の診断では悪性リンパ腫のみで、MSがあったとは記載されていません。
即ち、最初から悪性リンパ腫のみがあった方が、フィンゴリモドを服用し、6月後に、悪性リンパ腫と診断されたが、治療の効果無く死亡されたということです。従ってフィンゴリモドにより悪性リンパ腫が発生したとは言えません。
しかしこの事は治験参加した臨床医師により報告されていませんので、現在でも公式文書ではフィンゴリモド服用中のMS患者に悪性リンパ腫が発生したと記載されています。
治験が始まって約10年、一般の利用が開始され約5年となり、12万5千人以上がフィンゴリモドを服用しています。この間、日本をふくめた全世界でのフィンゴリモド服用者で悪性リンパ腫やその他の悪性腫瘍、癌などが増加しているかどうかの調査が行われ、米国、ヨーロッパ、日本などの保健行政当局にデータを提示し協議が行われています。
これまでのところMS患者一般、健康人、他の病気を持つ人達と較べて、悪性リンパ腫やその他の悪性腫瘍(癌)がフィンゴリモドを服用している人で増加しているとのデータはありませんので、発病した方は治療と無関係に起きたと推定されます。(2015-12/5現在)
A: ご心配のことと思います。
検査数値の単位がないので詳細が分からず、数値についてコメントが難しいです。
一般論で返答します。
ジレニアの多数例での世界治験で、服用中のリンパ球数と感染症の頻度の関係が4年にわたり、詳しく調べられました。
その結果、ジレニア服用群と偽薬服用群で感染症の頻度に全く差が無く、またリンパ球の減少は感染症の増加に関係していませんでした。強く減少しても感染の増加は無かったということです。
この結果に基づき、治験が終了した約5年前から、我々はリンパ球数が減少しても、服薬を中断したり、減量しないで、注意をしつつ治療を継続してきました。それによっても、感染の増加は認めていません。リンパ球が200を切ることが反復しても、同様です。
治験からの8年間、約500名での経験です。未だ論文に書けておらず、現在準備をしています。
薬の添付文章には現在も9年前の治験開始時の注意喚起と減量の指示が残されています。担当の先生はその指示に従っておられるのでしょう。(2016/5/15現在
)
A: 先ず、本ホームページ1ページ目の新着情報のニュース(トップ、最上段)に書きました内容を熟読して良くご理解ください。
担当の医師、病院の理解、対応能力、熱意が最も重要です。関連するいくつかの論文を読み、理解していただくことが必要でしょう。
貴方のMSの活動性、MSとしての時期、MSによる障害進行のリスクの頻度、障害の残る可能性を、以下に記載するPMLの発症のリスク頻度、障害ののこる可能性と、総合的に比較することが必要です。
私は貴方を診察していませんし、病院や医師のことも知りませんので、以下の記事もお読みいただき、正確に事実を知り、最後はご自分で判断してください。
現在までの7人のPML発症者は発症までに2年5月から4,5年までの治療継続者ですので、フィンゴリモド治療が2年以上経過したら、7100人に1人のPMLリスクが始まると考えるべきでしょう。
世界でのJCV抗体陽性率は平均で55%程度であり、陽性者でしか発症は有りません。従ってJCV抗体陽性者に限れば、2年以上経過すれば、以後は4500人に1人のリスクが始まるという計算になります。
貴方の場合、JCV抗体が陽性ですので、今年の10月以降で2年が経過して、この頻度のPMLリスクが始まるということです。
これまでのPML発症者は定期的なMRI撮影で症状がでる前に発見する努力をしておらず、全員が認知症や運動障害、視野障害などの大脳症状がでてきて、久しぶりにMRIを撮りました。最初はPMLを疑わず、症状がでてから数か月たって診断している例が多く、そこでフィンゴリモド服薬を止めています。
服薬中止から数か月病巣拡大、症状進行があったのち、拡大と進行は止まり、徐々に回復に向かい、死亡例は有りません。しかし、かなり重い症状が残っていて、後遺症となるであろうと推測される方が多いようです。
一方、タイサブリでのPMLは歴史が長く、発症者も多いため、対応方法についての提言がされています。
それはリスクが始まる時期から3月毎に、PMLを早期発見するための撮り方でのMRI撮影を反復し、しっかりと前回の画像と比較をすることです。これにより症状が出ていない早期に小さな新しいPML病巣を発見でき、症状が無いうちに治療を停止します。病巣が大きかったり、複数あるときには血漿交換を実施します。
このようにして症状が出る前に発見できれば、平均して障害の進行はあまりなく治癒しています。ただ、100%そうなるとの保障があるわけではありません。
こうしたタイサブリでの対策法をフィンゴリモドでも採用するべきですが、会社側からそうした明確な提言は有りません。私はすでに実践していますが、日本では未だほとんどの医師が対応していないようです。こうした対応ができるか否かで、PMLのリスクは同じでは無いと考えられます。
(2016/8/20現在)
フィンゴリモドでも再発や障害の進行はあり得ます。
私のこれまでの420名、最長で7年間、での使用経験で、インターフェロン(ベタフェロン、アボネックス)使用時より再発が増えた人はなく、効果の点では確実により優れています。
しかし、再発が2年に1回程度だが長期にわたり反復する、MRIでも新病巣が時々出現する効果不十分の方が、5〜10%おられました。
また、全体に初期の6カ月、特に3カ月の間はやや効果不十分であり、臨床再発があったりMRIで脳病巣が増えたりし、7か月を超えて安定することが約40%程度でみられました。
さらに再発型から進行型へ変化しかかっている方では、進行を止めることができないことがしばしばあります。
貴女の場合、MRI検査はどの程度実施しているのでしょうか?
症状の変化は治療変更から何ヵ月目にあったのでしょうか?
7か月以降にそうしたことがあったのであれば、効果不十分で、今後も悪化がある可能性がかなりありますので、ナタリズマブ(タイサブリ)への変更をお勧めします。フィンゴリモド以外に治療は無いとの考えは正しくありません。
一方、治療開始からあった症状が時に出現するのは、再発ではなく後遺症だと考えられます。(2015/3/15現在)
A: フィンゴリモド使用開始後、再発を抑える効果は毎月、徐々に強くなり、3月後で75%程度の効果、6ヶ月後にはほぼ100%の効果に達します。
最初の12ヵ月間での再発率は、IFN-β1a筋注(アボネックス)治療中の再発率の半分程度です。しかし、その再発の半分程度は最初の3ヵ月以内に発生しています。
従って貴女の場合、次第に再発が減ってゆくことが期待できます。ただ、一部のMS患者さまでは、その後も時々再発がみられることもあります。
インターフェロン(アボネックスやベタフェロン)で再発があり、フィンゴリモドに変えた患者さまで、その後も再発が時々有る場合、インターフェロンに戻すことはお薦めしません。
来年にでもタイサブリが使用可能となりそうですので、その時には、タイサブリに変更するかどうか、改めて判断するべきです。現在は、その他に治療法がありません。(2013年7月現在)
現在進行中の治験薬への変更の可能性も無いわけではありません。
しかし、フィンゴリモドを使用している方が、使用を中断しても、6ヶ月の治療中断期間を置いて初めて治験参加が可能となるとの条件があります。
そうした長い治療中断期間を作ることは、非常に危険であり、お薦め出来ません。
A: フィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)の服用開始から3日で左上肢、両下肢の脱力が出現したとのことです。MSの再発が発生したと考えられます。
MSの再発・進行抑制治療薬はどの場合でも、治療を開始してから最大の再発抑制効果が得られるまでに一定の時間が必要です。
どの治療の場合でも治療開始後の1ヵ月、特に1,2週間以内に再発が一定の割合で発生します。一定期間は、治療していない場合より再発頻度の平均は低下していますが、100%の効果発現とはなりません。
フィンゴリモドの場合は、7ヵ月経過すると高い効果が安定して得られることが多いのですが、最初の3ヵ月には、再発減少がやや不十分です。
インターフェロンでも最初の3ヵ月の再発減少は不十分であり、その後はほぼ一定の効果に達しますが、フィンゴリモド、ナタリズマブに比べると、その後も効果は不十分なことが多いです。
ナタリズマブ(タイサブリ)でも治療開始直後には、一部で再発がありますが、1ヵ月を超えると再発を経験することは稀です。
A: 脳萎縮の防止には有効性の高い治療を早期に開始することが一番です MRIで普通の30代にはない脳の隙間があるということは、一定の脳萎縮があるという事です。萎縮の有る方ではより強力な治療を早期に開始することが勧められています。
全てのMS治療薬で脳萎縮の進行抑制効果を調べる研究が実施されていますが、フィンゴリモドでは服用開始6月後と、最も早期からの萎縮進行抑制効果が証明されています。こうした研究の結果には、研究の方法、対象患者の選択など研究技術の巧拙も影響しますが、一般に、より効果の高いMS治療薬を発病早期から利用すれば、より効果が高いと考えられています。
ナタリズマブ(タイサブリ)とIFNβ1a筋注(アボネックス)でも治療開始2年目には脳萎縮抑制効果が証明されています。その他の薬剤(コパキソンも含め)では効果が証明できていません。
(2015/12/5現在)
A: (1)アボネックスなどのインターフェロンで肝機能の数値が悪化しても、症状(食欲不振、吐き気、だるさ、黄疸など)がでることは稀です。私は数値が1000を超え、入院していただいたことが20回あります。全員でもとに戻りました。 ほとんどの方では、インターフェロン治療を再開して問題ありませんでした。二回大きく数値が上昇し中止となった方はわずかです。 数値が上がる方の半分程度は、肥満と脂肪肝、あるいはアルコール性肝炎がある方です。
(2)フィンゴリモドでは肝数値が若干上がる人が、長い間に2−3割とやや多いのですが、多くの方では継続できるレベルです。短期間で危険な数値となることはかなり稀です。しかし、長期には問題がある場合があります。そうした方では、インターフェロンかタイサブリしか選択はありません。
(3)タイサブリで肝障害はまず起きません。 MS患者さんではJCウィルス抗体陽性が6割ですが、陽性であっても、2年間はPMLが起きることは、まずありません。それ以後でも、抗体の数値が低い人では PMLは起きていません。 2年たった時点で抗体の数値が高い時は、他の治療がほんとうに出来ないのか、効果が無いのか、慎重に検討をします。 PMLが起きても、早期に発見できれば、あまり障害を残さずに治療が可能ですが、そのためには、早期発見のノウハウがあり、医師の熱意、知識、経験が必要です。 以上、一般論ですので、もっと具体的にお知りになりたければ、一度受診してみてください。これまで治療の空白がありますが、空白は最大限避けるべきです。かなり病巣と障害があり、これ以上進行をさせないことが、2次進行型に変化させない上で非常に重要です。
A: ナタリズマブを使用開始するためには、処方をする医師は安全な使用のための知識につき、インターネットを利用した試験を受け、合格することが必要です。 医師用のパンフレットも用意されています。従って、安全な使用について、患者さまが心配される必要は、ほとんど無いとおもわれます。 医師から指示された約束を守ることで充分でしょう。 ナタリズマブによる副作用の可能性にどのようなものがあるか、先生から既にお聞きでしょうか? 私の約100人での使用経験では、副作用は2回しか経験していません。いずれも点滴中の軽度の症状で、直ぐに消えています。 一人は、喘息がある患者さまが、点滴中に少し息苦しくなり、中止しました。 もう一人は、点滴中に少し気分が悪くなり、中止。症状は直ぐに回復。後で、抗ナタリズマブ中和抗体が陽性となって効果が失われていることが判明しました。 医師が正しく使用すれば、他の薬剤より、むしろ安全な使用が可能な治療だと思います。ほとんどの方で効果は非常に高く、優れた治療です。 医師が過度に警戒し、利用しないことの方が大きな問題であると感じています。 JCVウイルスとPML(進行性多巣性白質脳症)の予防法については、本ホームページの記載を勉強してください。(2015/7/4現在)
A: 抗JCV抗体が高い場合、ナタリズマブ治療を2年以上継続しますと、150人に1人くらいにPML(進行性多巣性白質脳症)という病気が発生しますので、2年で治療を中止し他剤へ変更するかどうかを決めます。
治療を継続しても、定期的に脳MRIを実施すれば、もしPMLが出ても、発症前の無症状の時期に発見することが可能であり、治療中止する事によりPMLの治療が可能と言われています。
少なくとも2年間はほぼ安全な治療が可能と言えます。
我々のMSセンターでは、関東や中部地方などの遠隔地の患者さんにタイサブリ点滴を導入し、途中からは地元で4、5週に1回の点滴をしつつ、3、4月に1回は当方で点滴とMRI検査をするというスケジュールで治療を続けています。この治療がもっと普及すれば、地元の先生にお任せすることも可能となると考えています。(2016/1/25現在)
A: 生ワクチン接種はナタリズマブやインターフェロン治療中には問題ありません。(2016/1/30現在)
A: (1)フィンゴリモド(イムセラ、ジレニア)使用開始して活動性が停止し病巣の修復が進行しているようですが、治療を中止したり、より効果の低い第1世代MS薬であるアボネックス、ベタフェロン、コパキソンへ変更した場合には、2月目以後に再発やMRI新病巣の出現が始まることをかなりの頻度で経験しますので、一定のリスクが有ると言えます。
タイサブリは一番効果の強い薬ですが、強すぎるということはありません。1年半はどなたでも安全に利用が可能ですので、安心して使えます。その間に妊娠して中止すれば問題ありません。
質問:タイサブリを使用する場合について教えてください。
(2)タイサブリの初回点滴する前日までイムセラを服用して問題ありません。
(3)フィンゴリモド中止して2ヶ月経過したら妊活を始めて結構です。生理が不規則なら、4,5週間毎の点滴を継続しつつ、生理が1月半の間無ければ、自分で尿による妊娠テストを実施するか、婦人科を受診して、妊娠が確定すれば点滴を中止することで問題ありません。タイサブリ点滴をする間隔は4週間ですが、開始から3月を経れば、6週間まで変動しても大丈夫です。
(4)フィンゴリモドで何の問題も無かったのであれば、出産後は戻るのが通常です。フィンゴリモドで完全には安定していなかった方の中にタイサブリをやめると再発することが有ります。
(5)コパキソンで様子をみて妊活中に再発があればタイサブリ切り替えて妊活続行という方法では、再発による障害や病巣が残るリスクが有ります。
(2016/6/19現在)
A: コパキソンの効果はインターフェロンとほぼ同等です。ナタリズマブ(タイサブリ)、 フィンゴリモド(イムセラ、ジレニア)や1,2年先に利用が可能となる見込みのBG12(テクフィデラ)(内服薬)に比べて明らかに有効性は低いです。
安全性が高く、発熱や倦怠感、重大な副作用がほとんど無い点が最大の長所でしょう。
しかし、毎日自己注射をする必要があることと、注射時の疼痛がインターフェロンに比べても強いことが、欠点です。
私は平均的なMS患者さんであれば、有効性の高い治療を選択する事をお勧めしています。初期からしっかりと疾患の活動を抑えることが重要であると考えています。
長年インターフェロンで問題なく治療が出来ているように思われていた患者さんでも、突然に再発があったり、持続進行が始まり止まらなくなることを経験しているからです。
有効性の高い治療が何かの理由で継続できない時には、当面は、インターフェロンと共にコパキソンも選択肢であろうと思われます。(2015/10/3現在)
A: IFNβ1b皮下注(ベタフェロン)とグラチラマー酢酸(コパキソン)では皮膚障害が多い。
自己注射の薬では皮膚反応が生じる可能性がありますが、特にベタフェロンでは潰瘍など強い皮膚障害を生じることがあります。
皮膚障害を恐れるのであれば、自己注射ならアボネックスを、または自己注射でないフィンゴリモドやタイサブリを選ぶべきでしょう。 (2015/12/5現在)
A: 共に遺伝子工学的に作られるインターフェロン・ベータで自己注射薬です。
インターフェロン・ベータは人を含む動物で感染と戦うために白血球がつくる糖鎖が付いたタンパク質です。
(1) インターフェロン・ベータ1b(ベタフェロン):
大腸菌で作られるため糖鎖を持たないタンパクで、タンパクの構造にも1個のアミノ酸が人のもととは違っています。
糖鎖を持たないため水への溶解が難しく、凝集しているタンパクが多く、効果を発揮しにくいのでタンパク量を多く注射する必要があります。
注射方法が、2日に1度、1mlの自己皮下注射となります。
実際は皮下ではなく深く注射しないと皮膚反応や壊死が起きやすいために、皮下の結合織中に深く注射しますので、筋注用のアボネックスと大きな差はありません。
(2)インターフェロン・ベータ1a (アボネックス):
哺乳動物であるハムスターの卵細胞を利用して作るので、糖鎖を持つタンパクであり、水に溶けやすいために少ないタンパク(ベタフェロンの約1/7)量の注射ですみます。
注射方法が、週に1度、0.5mlの自己筋注です。
両者を比較すると、アボネックスはベタフェロンに比べて、
(1) 注射時の痛み:皮下注射のベタフェロンの方が筋注のアボネックスにくらべ、痛みが少ないと言われることが多いのですが、実際はほとんど差はありません。
(2) インフルエンザ様症状(発熱、筋肉痛、倦怠感、頭痛):殆ど差がありませんが、注射の度に生じますので、アボネックスの方が注射頻度が少ないだけ楽です。
(3) 注射部位の発赤、皮膚壊死などの副作用がベタフェロンで多く、アボネックスでは殆ど出ません。
(4) 中和抗体出現:出現すると注射の効果が失われます。ベタフェロンでは30%程度であるのに比べ、アボネックスの方が出現が稀です。
(5) 治療継続性:アボネックスの方が注射回数が少なく、副作用も少ないために、
注射を正確に継続できる方の割合が高い。ベタフェロンでは注射の打ち忘れや、意識して注射回数を減らす患者さんがやや多い。
(6) 効果、有効性:
厳密な比較をした研究はありませんので正確なことは言えません。しかし私見ですが、いくつかの比較研究のデータ、多数の治療成績のデータ、私自身の経験などを総合しますと、
ベタフェロンの効果を1としますと、アボネックスの効果は7〜80%ではないかと考えます。
しかし、アボネックスの注射回数を5日に1回とするなど、頻度を少し増やすことでベタフェロンと同等の効果が得られる可能性があります。しっかりしたデータはありません。
A: 通常は使いません。
しかしフィンゴリモドなどの他の治療が出現する前に、解熱剤でコントロールできない発熱などのインフルエンザ症状が強い方に、短期間使用することはありました。
ただ、注射前に服用しているとのことですが、インフルエンザ症状が出現するのは注射後4,5時間経過してからですので、注射2,3時間後に服用する方が、効果の持続が良いでしょう。
数か月の間、週に1回、10mgを内服することによる副作用は、ほとんど心配はいらないと思われます。新しくアボネックスを始められた方でインフルエンザ症状が軽度なら、半数以上の方では、早期に解熱剤もプレドニゾロンも不要になる可能性が高いと思われます。
A: セマフォリン4Aが高値の方は、ベタフェロンが有効でないという研究結果はまだ研究段階で臨床には活用されていません。
ベタフェロンの有効性は6-12ヵ月追跡すれば、臨床とMRIでほぼ判定可能です。
A: アボネックスもベタフェロンも、良く効く人が3割、少し効くが再発や障害進行が続く人が4割、効果の無い人が3割程度あり、 全体を平均すると、再発が30%減り、障害進行に一定の抑制効果がありますが、全体に進行は続きます。
両者に共通する最大の欠点は、初期には注射による発熱、倦怠感、頭痛、筋痛などのインフルエンザ症状がほぼ必発であることです。 いつまでも続くことも2割程度にあります。
自己注射であることも欠点ですが、慣れに個人差があり、いつまでもストレスが続く方もあります。 注射部位の皮膚発赤も多く、自覚はしないが肝機能数値があがることも少なく有りません。
アボネックスの方が、週一回の使用ですから、樂で継続し易いのは明らかです。 しかし、効果はベタフェロンの方がやや高い可能性があります。貴女にどちらが適しているかは、MRIを含めた疾患活動性の評価、個性、生活様式など、お話をうかがい、
アドバイスすることとなります。
経口薬であるフィンゴリモドはベタフェロン、アボネックスにくらべ、効果が高く、安全性でも、ほとんどの方では問題が発生しておらず、継続できている割合が非常に高いです。
脳萎縮や障害進行を長期に抑える高い効果があることが、判ってきています。 未だ経験が無いあるいは少ない医師が多く、試験を受ける必要があり、普及が遅れています。我々の所では5年半の経験があり、すでに270人以上の方が使っておられます。(2013/8月現在)
何れにしても、無治療で放置はしないことをお薦めします。
インターフェロンのMSに対する効果は、有効でほとんど再発や活動病巣が出なくなる方が30%、少し有効だが再発や活動病巣出現が時々ある方が40%、無効が30%程度で、平均で再発頻度が30%低下します。
70%の方では効果が不十分であるとも言え、効果が高いとは言えませんが、10年近く前まではこれしかありませんでした。10年長年の結果でしか、個々人での本当の有効性は判断できない点がMS治療の難しい点です。
私の1990年代から始まったインターフェロン治療の長期経験では、非常に軽症で始めた方でも、ほとんどの方で、10年以上の経過で脳MRI病巣は次第に蓄積し、症状が進行することが大半です。開始時にすでに歩行障害があるか、MRI脳病巣が多めの方では、10年以上にわたってインターフェロンを使用し、再発が無いか、ほとんど無く、非常に有効と判断した方でも、途中からゆっくりとした症状の増悪が持続するようになることが多いです。無論、治療を受けなかった場合と比べて障害進行が軽いことは多数例でのデータで証明されているのですが。
最近ではより有効な治療が存在し、安全性も、ほとんどの人では問題なく使えます。私自身がMS で診断が確実であれば、第二世代薬を選択します。そうした治療ですとほとんどの方で再発がなく、MRIの病巣や身体障害度も減少改善しています。
A: ベタフェロンなどのインターフェロン、ジレニアその他のMS治療は何れも、男性が利用していて子供に影響がでることはありません。唯一ナタリズマブ(タイサブリ)では、添付文書に男性が利用中に妻が妊娠すると子供に影響することが否定できないと記載されています。しかし、これまで全世界で多数が利用し、奥さんが多数妊娠しているはずですが、問題があったとの報告は全く存在しません。
A: 非アスピリンの解熱鎮痛剤は多数あります。問題なく開始できます。
A: アボネックスを中止すると、再発を抑制する治療効果が失われますので、多発性硬化症の再発が起きやすくなります。 脊髄に再発があったのはそのためと思われます。
脊髄再発による症状とは別に、記憶力、計算力の低下などの脳症状の出現ないし進行を自覚しておられるとのことです。
アボネックス中止の直接の影響により、症状の悪化が生じることはありません。
しかし、アボネックスは再発や症状進行の抑制効果が一定程度ある薬剤です(全ての方で効果があるわけではありませんが)。 これを中止したことが影響して、脊髄だけでなく大脳にも再発病巣が発生していることが、最も考えられる原因だろうと思われます。
MRIによる大脳の検査は中止後に実施しているでしょうか?
もう一つの可能性のある原因は、再発ではなく、二次進行期(型)への移行が始まっていることです。 ゆっくりとした症状の悪化・進行が1年以上にわたって持続するようになっているか、今後そうなるなら、その可能性があります。
これは貴方の長期の経過を知る医師でなければ、判定できません。(2015/7/4現在)
A: アボネックスを含め、全てのMS再発防止治療の途中で再発が有った場合、その治療の効果が不十分である可能性を考える必要があります。 より有効性の高い治療法へ直ちに切り替えるという選択は合理的でお勧めできます。
しかし、現在の治療を単純に中止することは、悪化のリスクを高めるのみで、根拠がありません。 再発があったからステロイド・パルス点滴治療を開始するとの理由で長期的再発進行防止治療を中断する医師がおられます。この選択も根拠がありません。
他の治療を開始しないのなら、アボネックス注射は継続しつつパルス点滴を実施するべきです。(2015/7/8現在)
A: ベタフェロンを発熱のために半量しか打てないとのことです。解熱剤は当然利用しておられるのだろうと推察します。効果は1本全量打つのに較べてかなり低いと思われます。他の治療を選ばれる方が良いと思います。
2000年以後の再発や進行がどうかを考慮して、以下の選択をするべきでしょう。
コパキソンの副作用はあっても軽微です。毎日の注射が苦痛でないなら、選択枝だと思われます。
アボネックスは週1回の注射ですので、週末に打つことで仕事に影響しない治療にはなりますが、1日の発熱はあるでしょう。一つの選択肢だと思います。
これらは何れも効果が低いのが最大の欠点です。
フィンゴリモド(ジレニア)の肝障害のほとんどはアレルギーではりません。アレルギーであるとの根拠は何でしょうか?
肝機能値は何がいくつまで上がったのでしょうか。
肝保護剤の併用で80%程度の方は継続使用が可能となっています。再度試みることも選択肢ではないでしょうか。
ナタリズマブ(タイサブリ)も2年間は安全に利用できます。これも選択肢です。
私はJCV抗体価が高値でも、かなり多くの方で、2年を超え治療を継続しています。MS活動性が高い方であれば、MSリスクの方がPMLリスクを上回ると判断されます。定期的なMRIチェックでPMLリスクを大きく軽減することが可能です。
イムランはMS治療効果が低く、副作用もありえるので、利用価値が無いと思います。 (2016/4/30現在)
A: 3日前から急に脱力が増強し、歩幅が10cmとなり、歩行速度が明らかに低下したが、MRI(胸髄?)にて新病巣を確認できなかったので、パルスを見送ったとのことです。
MRIで病巣が確認できない場合は、一般に重度の再発はありえませんが、臨床的に急激な増悪があれば再発であり、パルス療法の対象になります。
頻繁にパルス療法を反復することは副作用がありお勧めできませんが、毎月でなければパルス療法の副作用は、ほぼ心配ありません。
症状が改善する保障は確かにありませんが、だからと言って見送るのは消極的だと思います。
症状の悪化がいつからかわからないように、ゆっくりと半年、1年と継続して増強する場合は、再発ではなく、慢性(持続)進行であり、パルス療法の効果は期待できないのは事実です。そうでなければ、パルス療法を試みることをお勧めします。
A: MSだとした場合のステロイド大量点滴(パルス療法)の効果は、病巣の炎症を抑える、浮腫をとる、リンパ球の増殖を抑えるなどが主です。 その結果、出現している症状を軽快させます。 効果の持続は1週間程度です。しかし、炎症が押さえられれば組織の修復が進行しだすので、その後も症状の回復が続きます。 しかし、炎症を抑える効果は一時的ですので、新しい炎症再発で病巣ができるのを押さえることはできません。 パルスを頻回に反復すれば効果は持続するかもしれませんが、副作用が強いので反復治療には限度があります。 MSの治療で最も重要な長期的な炎症の再発の反復を抑制するためには、フィンゴリモド(ジレニア/イムセラ)、インターフェロンベータ(アボネックス、ベタフェロン)、 タイサブリなどの治療を長期に続ける必要があります。
A: パルス療法後の経過は、パルス終了後3日程した時点で、パルス療法開始直前に悪化した障害の度合いが、どの程度回復しているかで、おおよそ予測することができます。
私の多数例での経験では、パルス終了3日後までに約半分程度回復していれば、後で、ほぼ完全に回復することが多いと思います。もう少し遅くても、回復傾向が始まっていれば、ほぼ回復することが多いです。
その時点で回復が悪ければ、悪さの程度により、3日から5日間の2回目のパルス療法を追加します。経口のステロイドを投与してもあまり回復促進に役立っていると感じることは有りませんので、私は点滴しかしません。
直前の悪化の前から障害があり、それと同じ部位に同じ種類の障害が新しく上乗せされた再発増悪がある時には、パルスをしても、回復が不十分で、障害が一歩進行して固定化することが多いと思います。
以上のルールは、歩行障害であろうが、視力低下であろうが、感覚鈍麻であろうが、ほぼ同様だと思いますが、あくまでもおおざっぱな目安です。無論、悪化の始まりから、どれだけ時間が経ってからパルスを開始したのかは大きく影響します。また、悪化が重い程、回復には時間がかかります。
障害進行が止まれば、早期にリハビリを開始することも大切です。
A: 増悪症状の回復が不十分なら、パルス2,3回まで追加します。重症なら最初から5日連続点滴をします。
パルスを入院でしか実施しない病院が多く、入院日数を減らすために経口に切り替える病院があります。
私は原則外来で実施しています。感染症の経験はありません。
経口ステロイドを漸減で追加するのは、パルスの追加が出来ない時です。パルスの方が効果が明確です。
同量の経口ステロイドを服用すれば、同等の効果はありますが。
A: ステロイドパルス点滴治療は、MS、NMOのいずれでも、ほぼ同様な使用方法で、効果も同様です。 NMOのほうが効果が明らかで分かり易いことが多く、MSではパルスをしなくても自然回復が遅れてみられる割合が少し高いです。
パルス療法の効果の発現時期は、点滴開始から2日から5日程度で明らかになることが最も多いのですが、同じ患者さんでも毎回同一ではなく、予測は困難です。 再発症状が重く、急速であれば、反応を見ながら5日間点滴をし、3日ほど中休みをし、回復の始まり、進行が不十分であれば、再度、3〜5日間のパルスを追加します。 平均的には、MSの発症初期には回復が良いことが多いのですが、最初から重症で回復も悪い場合もあり、一律ではありません。
非常に重症の再発、初発であれば、パルス療法と並行して血漿交換を実施するべき場合もあります。 通常は2回のパルス療法への反応が不十分であれば、後遺症を残さないために、できるだけ早期に、症状の始まりから2週以内に血漿交換を開始します。
1月以内なら開始することもあります。
A: 貴方は再発時にステロイドパルス点滴をすると、一時的に脱力が生じることを経験しているとのことです。 私の患者さんの中にも、貴方と同様の経験を訴えるMS/ NMOSD患者さんが、10人ほどおられます。パルス療法の副作用の一部であろうと考えられますが、原因などの詳しいことはわかっていません。 強い疲労感、脱力、苦しい、全身のむくみ、尿量の減少、などでパルス点滴が出来ない場合もあります。 パルス点滴の一過性の副作用には、その他に不眠、興奮、精神症状、しゃっくり等があります。 パルス療法にともない反復する一過性の症状は、MSの再発とは全く異なる現象であり、後に後遺症を残すことはありません。
A: パルス後の一定期間続く、体の痛み、リンパ節と思われる部位の痛みがでるかたが、時々おられます。 原因は不明ですが、大量のステロイドはリンパ球に強く影響することが関係しているかもしれません。(2015/5/17現在)
A: 次第に歩行障害が強くなりつつあるようです。ステロイド点滴で以前は改善があったり、1月くらいは改善が続いたりしたが、最近は効果が見られないとのことです。
こうした経過はよく見られる一般的なものです。ステロイドを大量投与するとMSで髄鞘がはがれた裸の神経細胞膜に直接働き、電気活動を改善する効果があり、一次的に機能改善がみられることがあります。
しかし、経過が長くなり、神経細胞や神経軸索突起が変性すると、そうした効果が見られなくなります。 そうした一時的な効果を得るために大量ステロイド点滴を反復することは、副作用の可能性も高くなるので、勧められていません。
大事なことは、再発で障害が強くなる、進行することを食い止めることです。ベタフェロンでは効果が充分ではないと考えられます。 治療薬を変更することを検討することをお勧めします。(2015/6/21現在)
A: 反射異常が続いているという理由でパルス点滴治療を開始したり、追加したりすることはありません。
パルス点滴の目的は炎症や免疫機序による攻撃を抑制し、安定化することです。炎症を抑え出現した病巣の回復が早まることを期待します。
炎症が抑制され安定化しても、炎症により生じた病巣が消えるとは限りません。 障害の回復の速度や程度は、攻撃を逃れた細胞が修復作業をどれだけ遂行できるかによって決まります。リハビリテーションが回復を早める場合もあります。
バビンスキー反射や反射亢進が最近に出現したのであれば、最近新しい病巣が加わった可能性があり、通常は同時に運動麻痺の悪化があります。 そうした場合にはパルス点滴が有効である可能性があります。しかし、多くの場合は後遺症の一部であり、パルスを行う意味はありません。(2015/8/26現在)
A: 新しい病巣が出現しても、症状が無ければステロイドパルス点滴治療は要らないとの説明は、一般論としては間違いです。 現時点では無症状でも病巣の蓄積は阻止するべきです。将来の障害に結びつく可能性があります。
ただ、新しい病巣が何時出現したのかが問題です。
撮影時点で病巣の活動性があるか、続いているかを調べるため造影撮影をします。 もし造影が陽性なら、撮影時点で病巣形成がつづいていて、さらに拡大する可能性があります。
造影が陰性でも、撮影の間隔から、あるいはその形やDWI陽性なら、新鮮な病巣であることが判定可能です。
活動している、あるいはかなり新鮮な病巣であると判断されるときには、パルス点滴をして、病巣の拡大を抑えたり、修復を早めることが望まれます。
糖尿病や感染症があり、パルス点滴をすることに弊害があると判断されるときには、パルスをしない選択をすることもあります。 パルスをする時には必ず入院をすると決めている病院があり、パルス実施を躊躇する先生もあります。
また、フィンゴリモドを開始して6ヵ月を経ても再発や新病巣の出現があれば、ナタリズマブ(タイサブリ)使用を考慮するべきです。(2015/9/9現在)
A: 貴方の症状は感覚症状であり、シビレ感、冷感、痛みなどの異常感覚であり、感覚鈍麻(鈍さ、分かり難さ)や感覚麻痺などの機能の低下ではなく、刺激症状に限られているようです。こうした症状は機能低下になる前の警告のような症状で、神経組織の障害の程度が軽いことを意味しています。不快でしょうが重い症状ではなく、緊急性は低いと言えます。
パルス点滴はMSと確定しなくても、色々な原因の炎症や腫脹(はれ)を抑える効果があり、大した副作用もありませんので利用されます。症状が深刻でないから、簡便に利用しやすい経口ステロイドを用いているのかもしれません。
MRI画像がどの程度MSらしいのかは、見ないと分かりませんので、私には判断が出来ません。(2016/6/25現在)
A: MSの診断が間違いなければ(NMOでなければ)、ステロイドを3週間以上使うことは、有りません。
MS急性期にパルスをした後に経口ステロイドを追加しても、全体で3週程度以内に中止しましょうというのが、標準的治療法です。
再発が連続して反復すれば、長くなることは時にありますが、私はほとんどの場合、経口ステロイドの追加はしません。
回復が不充分なら点滴パルスを最大で最初からの全合計10日まで実施します。
A: MSなら経口ステロイド(プレドニンなど)は3週で中止します。中止したために悪化が生じるとは考えられていません。それ以上使用しても効果が無く、むしろ副作用が心配です。 未だ、症状やMRI病巣が消えていない場合でも、プレドニンをのんでもそれらがより早く消えることは期待出来ません。早く診断を確定し、MSならフィンゴリモドやインターフェロンなどの再発・進行防止薬を早期に使用開始することが重要です。 経験ある医師なら、これまでの経緯から、現在残っている症状が今後消えそうかどうか、多くの場合、予測可能です。
A: 英国人であり経過を合わせると、NMOの可能性はほとんどありません。
プレドニン治療は全く間違っています。MSの治療開始が急がれると思われます。
A: MSと診断されているのであれば、インターフェロン(ベタフェロン、アボネックス)、フィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)、ナタリズマブ(タイサブリ)などによる長期療法を早く開始するべきです。
少量のプレドニンが再発を抑えるとのデータは存在しません。
A: プレドニンの長期服用は治療にはなりません。血漿交換は急性の重い悪化があった後、できるだけ早く、遅くとも1月以内に実施しなければ効果は期待できません。
昨年やそれ以前に出現し、残っている症状は、後遺症であり、残念ながら根本的に無くする治療はありません。しかし、症状毎に軽減する治療はある事も多いので、医師に相談するべきです。
A: MSないしMS疑いでステロイドの内服を続ける治療をすることはありませんし、間違いです。 しかし、MSに類似した症状を呈することのある他の疾患、例えば脳血管炎や悪性リンパ腫などが否定できない場合には、長期にステロイドをのむ治療もあります。そうした疾患では無いと否定されているなら、中止するべきです。
A: 多発性硬化症と確定していなくても、ステロイドで治療をすることはあります。多発性硬化症以外でも効果のある疾患があります。
短期間のステロイド治療は、副作用を恐れる必要性はほとんどありません。(2015/8/4現在)
A: これまでの貴女の再発と障害進行にたいする治療は、再発時のステロイドパルス点滴治療とプレドニン内服のみですが、診断が本当にMSであるのなら、間違っています。これまでの治療では進行をとめることが出来ません。
再発進行防止薬であるインターフェロン(ベタフェロン、アボネックス)やグラチラマー酢酸塩(コパキソン)自己注射、フィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)内服、ナタリズマブ(タイサブリ)点滴の、いずれかを長期に使用するのがMSの治療です。
本ホームページにも記載していますが、パルス点滴治療はMSの再発時に短期間、1月以内に限り、実施しるものであり、再発による炎症を抑え、浮腫をとり、急に出現した症状の回復を促進する効果があります。
しかし、ステロイドの長期内服治療は、次の再発や障害の進行を防止する効果は、殆ど無いかわずかであると考えられています。
視神経脊髄炎であれば再発の防止効果がありますが、有効量ですと副作用がほぼ必発です。
バクタ内服はステロイド(プレドニン)の副作用としての感染を防止するためです。 ワンアルファ内服はやはりステロイドの副作用である骨粗しょう症を防止するためです。
ステープラは過活動膀胱による頻尿、尿の我慢しにくさを和らげるための薬です。何れも、MSの再発や進行を防止する治療ではありません。(2016/3/30現在)
A: BG-12は、欧米でのデータが当局に提出され審査中です。ベタフェロン、アボネックスより少し有効性が高い可能性があります。 しかし、現時点では、いずれの国の審査当局も、有効性、安全性につき審査中であり、未だ有用であるとは判定していません。長期安全性のデータは未だ存在しません。
従って、現時点で、日本ではベタフェロン、アボネックス、フィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)が使用可能であるのみです。 それらは長期の有効性、安全性に関する信頼できるかなりの量のデータが発表されています。適切に利用すれば、重大な副作用なしでの利用が可能です。
「副作用」として記載されているもののかなりの部分は、その薬により生じたのではないと断定することも出来ないと医師が判断した問題点が記載されています。
言い換えれば、副作用であると結論されたから記載されているのではないものが多数ふくまれています。 治験では薬を投与されなかった(偽薬を服用した)人たちがあり、そうした人達でも、色々な問題が生じています。
即ち、「副作用」として記載されている問題のかなりの部分は、薬をのまなくても起きる問題(他の薬によることもある)が含まれています。
BG-12については国内での試験が始まろうとしていますので、参加可能です。(2013/3月現在)
A: 治験は既に終了しています。現在バイオジェン・ジャパン社がデータをまとめつつあり、2016年中頃には厚生労働省へ使用申請を提出する予定です。提出後9月程度後(2017年春)には使用承認が下り、夏ごろから実際の一般使用が始まると予測しています。
従って、2017年中頃に使用開始となるのではないでしょうか。(2015/12/30現在)
A: ファンプリディンに再発防止効果は有りません。
A: 本薬の歩行改善効果は比較的軽度であり、顕著な改善は期待できません。完全な車椅子生活で起立が全く不能の方が歩けるような効果は期待できません。欧米での治験で歩行速度が改善した割合は偽薬服用グループで9%に対しアンピラ服用者グループでは43%でした。服用前と比較して、歩行速度改善の程度は全体の平均値で25%程度でした。効果のある人のみの集団での改善の平均はそれ以上だと言えます。
最も効果を期待できるのは、歩行障害の若干の改善で生活上の意味ある変化を期待できる方だと言えます。現在利用している関節安定装具、杖、四点杖、歩行器などの必要が無くなるような期待はできません。(2016/2/30現在)
A: テクフィデラ(治験コードネームBG12)は1日2回、1カプセルを服用する経口のMS再発、進行防止薬です。効果が高く、副作用も軽微で利用しやすいと期待されており、欧米では2年前から利用が開始されています。
テクフィデラの国内利用開始時期は?
国内治験は終了し、欧米人とほぼ同等の効果と副作用であることの証明に成功しました。今年4月19日、日本の医薬品審査機構に承認申請の書類が提出されています。
従って、来年前半には日本での利用が可能となる見込みですが、審査が終了するまでは確実なことは誰も言えません。
効果の比較は?
2つの薬剤を厳密に比較するには、直接比較の試験が必要ですが、そうした試験は未だありません。別々に実施された偽薬対照試験の結果を比較することには慎重であるべきとされています。
そうしたリスクを承知で、発表されているデータを比較し、両薬剤を使用した私自身の経験を加えた感想としては、フィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)の方が効果は高そうです。
ただ、全てのMS患者さんでそうであるかは、未だはっきりしません。
ナタリズマブ(タイサブリ)、フィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)、第1世代薬(アボネックス、ベタフェロン、とコパキソン)の3群の間には、明確な差があり、個人により効果が逆転することはないと思われます。
テクフィデラの効果は第1世代薬とフィンゴリモドの間にあるが、フィンゴリモドに近く、効果は高いと言えると思われます。
フィンゴリモド(イムセラ、ジレニア)を使用していて調子が悪いとのことですが、再発が有ったのでしょうか? そうであれば、タイサブリの使用を考慮するべきでしょう。リンパ球数の減少(200以下が継続しない範囲)と感染の増加は関係が無いことがデータで示されています。私の500人以上での経験ではリンパ球数が200をしばしば切っても、感染症の増加には結びつきませんし、継続が可能です。
(2016/5/30現在)
A: BAF治験というのは二次進行型の方に対する国際的な治験です。結果発表が未だですが、間もなくでしょう。
効果が確認できていれば、1年半ぐらい後に利用が開始されるかもしれません。(2016/7/25現在)
A: 現在の障害が数年以上前から存在して固定化している時には効果は期待できないと思われます。
およそ2,3年以内に出現した症状はある程度は押し戻す可能性があります。
半年以内の悪化であれば、改善の可能性はより大きくなります。 リハビリが最も重要です。(2016/7/30現在)
A: ファンプリディンは歩行改善薬ですので期待できますが、効果の無い方もありますので、使ってみないと分かりません。
利用開始は早くても来年ですが、認可が決定されるまで分かりません。 (2016/7/30現在)
A: フマール酸ジメチル(テクフィデラ)の日本治験が終わり、医薬品機構へデータが提出されています。12月の審査で承認されるのではないかと推定されていますが、決定されるまで分かりません。12月に決定されれば来年春には利用が可能になると期待されています。
決定された後に利用の仕方につきメーカーと当局で協議があり、おそらく来年の早い時期に詳細が決まります。利用できる医師や施設について条件がつくかどうかも、その時に決まりますので、現時点では不明です。治験に参加したような病院、医師は最初から利用できると思われます。
フィンゴリモドがご自分に合っていないとのことですが、どのような理由でしょうか。
医師または本人の誤解により中止していることが多いので、気になります。
私がこれまでフィンゴリモドを利用していただいた約600人の患者さんで、止めざるを得なかった方は、妊娠希望、再発がある、MRIで新病巣がでたが主な理由です。肝機能値の上昇が続いていても、多くの方では肝保護剤を利用すれば低下します。リンパ球数、白血球数の低下では、感染症の増加はみられませんので、止める理由になることは経験していません。黄斑浮腫は重大な副作用であり1名でありました。
癌や悪性リンパ腫の発生があれば、中止することがあります。稀ですが重い感染症、慢性感染症があれば、中止の理由となります。いずれもフィンゴリモドが引き起こしたと断定は出来ませんが、中止したり他剤への変更を考えます。
(2016/9/30現在)
A: 大変残念ですが、再発から1年経過しても残っている後遺症症状は、今後の改善はあってもわずかである、と覚悟し生活設計をする必要があります。
今後1年程度の間に、これまでに改善した程度の1〜2割(最大で3割)が改善することは期待できますが、全く改善しない可能性もあります。
1年を経てのリハビリテーション継続の主目的は(これまでリハビリテーションを正しく実施してきたのであれば)、片麻痺の原因である「運動神経」の機能回復より、神経機能の維持と「筋力」の増強です。
筋肉は鍛えれば量が増え、力は強くなります。運動を継続しなければ、逆に筋肉は減少(廃用性萎縮)し、現在出来ていることも出来なくなります。
今後もリハビリテーションの継続は必要であり重要です。頑張ってください。
また、麻痺による歩行障害を改善する薬(ファンプリディン)の治験が進行中で、2年後に利用が可能になる可能性が高いでしょう。欧米ではすでに利用されています。
もう一つ残念なことは、インターフェロンからジレニアへの切り替えが遅かったことです。
3年前から利用が可能となりましたので、その時期に利用開始していれば、再発が減り、片麻痺は起きず、障害も軽度にとどまった可能性が高かったでしょう。
フィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)は今後の再発進行の防止薬であり、既にある片麻痺を改善する効果は期待できません。(2015/2/21現在)
A: 私はMS,NMOの方にビタミンDを追加的な補助薬として薦めていますが、アボネックス、ベタフェロン、フィンゴリモドに替わる薬ではありません。
MSに一定の良い影響がある「可能性がある」以外に、様々な健康増進、維持への効果が報告されています。
また、ビタミンDには多種ありますので、量も含めて、担当医師に相談されるほうが良いでしょう。
A: シンメトレルはMSに多い疲労感、倦怠感に効果があり、精神的活動性をも高めることがあります。 パーキンソン病における運動障害を改善する効果もあり利用されます。
神経細胞の機能、持続力が低下しているのを高めることでMSにおいて疲労を回復させるのではないかと考えられます。 脳卒中や脳外傷後などの意識レベルを高め、精神活動を活発にする効果もあります。ただ、MSの患者さんでも、人により全く効果がみられないこともあります。
A: (1)MSの認知症に対する治療薬は?
MSでの認知症に対し効果を検討した研究はごくわずかしかありませんし、対象数もあまり多くなく、決定的な研究はありません。
アリセプト(一般名・ドネペジル塩酸塩)が一定程度有効であったという論文がある一方で、有効性は確認できなかったとの報告もあり、総合すると、MSの認知症に有効性が証明されているとは言えません。
現在ある認知症治療薬は全てアルツハイマー型認知症を対象とし正式の治験が行われ、有効性が証明された治療薬です。
最も古いのは、国内で平成11年に発売されたアリセプト(一般名・ドネペジル塩酸塩)。 アリセプトは、アセチルコリン分解酵素(コリンエステラーゼ)を阻害し、アセチルコリンの減少を食い止めるメカニズム(作用機序)です。
平成23年には次々と新薬が登場し、レミニール(一般名・ガランタミン臭化水素酸塩)、イクセロンとリバスタッチ(ともに一般名・リバスチグミン)はアリセプトと同じ作用機序で、コリンエステラーゼ阻害薬です。
(2)MSによる認知症はどの様にして起こるのでしょうか?MSによる認知症症状の特徴はありますか?
MSで一番多いのは、大脳白質に点在する広範な病巣による「皮質下認知症」と言われるタイプです。あらゆる脳の情報処理速度がスローダウンし、思考、運動反応など、感情などすべての脳活動がゆっくりとして、効率が低下します。
次に、アルツハイマー病と同じ、側頭葉前部にある海馬と言われる部分が両側で、時には左側のみで障害されている場合です。この場合にはアリセプトなどのアセチルコリン分解酵素(コリンエステラーゼ)阻害薬が効く可能性があるかもしれません。
3つ目は、大脳の中心部にある視床といわれる部分に病巣があり障害される場合で、視床性認知症とよばれます。
お嬢様の場合、CTでは脳に異常が見つからないそうですが、MRIでは病巣が見つかる可能性が高いと考えられます。
最近に変化が在ったのであれば、ステロイドパルス点滴療法を実施し、フィンゴリモドへの変更を急ぐべきだと考えます。ペースメーカーが入っているのであれば、フィンゴリモドの循環系副作用が出現することは無いと思われます。
(2015/5/9現在)
A: ビタミンDは多発性硬化症の発症に関係があり、再発にも一定の関係がある可能性がありますが、NMOと関係している証拠は今のところありません。
無いとも言えませんが。
DHAはさらに関係しているかどうかの研究は無く、不明です。(2015/5/17現在)
A: (1)
中国では、一部のインターフェロンのみが利用可能ですが、高額であるので実際にはほとんど利用できない、あるいは継続できない状況です。有効性の高い第二世代のMS治療薬は承認されていません。
また、保険制度も不備であり、日本の特定疾患(いわゆる難病)への医療費補助制度も有りません。
(2)
また、日本で定期的に治療を受ける(お薬をもらう)としますと、当事者が日本人であるかどうか、日本国内に現住所が残されているかどうか、どのような保険が利用可能かで、料金が全く異なります。
私の患者様には中国人で本土在住の方で日本に家族が居住している方、日本人で中国に住んでいる方、中国以外在住で時々日本に帰国し治療を続けている方などがおられます。
状況により、相談にのります。細かなことは、電話で相談ください。
あくまでも、北京での診断が正しいとの想定での話です。病院により、医師により診断の確度は大きく異なります。
(2016/3/30現在)
A: 認知症状が最近に出てきたが、MRIでは脳に新病巣、造影病巣の出現は無かったとのことです。
恐らく以前からあった脳病巣と脳萎縮にもとづく症状であろうと推察されます。
新病巣の出現、活動病巣の出現と同時に出た症状は、認知症、精神症状、その他の症状であっても、数か月以内に回復することもあります。
脳MRIで変化が無いのに出た症状の回復は期待できません。
このホームページの「Q&A」と「よくある質問」に、既に認知症の治療について記載していますので、お読みください。
MSにおける認知症の改善のための治療で確立されたものは存在しません。
ステロイド(プレドニンなど)内服に効果は無く、副作用があり有害です。
アルツハイマー病の認知症状改善のための薬剤や心理療法を試みる以外に方法はありませんが、改善効果はあまり期待できません。
読書、音読、会話、テレビを見るなどにより、精神的な刺激を継続することと、運動、身体活動を可能な限り行うなどが大切です。(2016/5/10現在)
A: MS再発の急性期の治療は、@ステロイド・パルス点滴治療(3ないし5日間、2回まで反復可能)が中心(外来で実施可能です)ですが、再発症状が重症の時には、出来るだけ早期に、パルス点滴と並行して、または終了後に、A単純血漿交換療法を実施します。
単純血漿交換療法の効果はMSの半数以下でしか期待できませんが、事前に予測する方法が現時点では有りません。
血漿交換療法には他に、2重膜ろ過法、免疫吸着法があり、日本では間違ってMSに利用する医師がありますが、これらの有効性は証明されていません。 (2016/5/10現在)
A: 治療中に一定期間治療を中断した場合、治療効果はどうなるか、それまでの治療の効果が失われるか?とのご質問です。
以前の効果が失われたり、無駄になることはありません。空白期間分はマイナスですが。
妊娠期間中は一種のホルモン療法がおこなわれている効果があり、妊娠出産回数が多くても重症化し易くなることは無い結果が報告されています。 (2016/7/30現在)
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