| MSの診断・治療 | 症状(痛み・しびれ感以外)[共通] | 
| NMOの診断・治療 | 痛み・しびれ感 [共通] | 
| 抗MOG抗体疾患の診断・治療 | 再発・見分け方 [共通] | 
| MS/NMO/抗MOG抗体疾患いずれか不明の場合の診断・治療 | 妊娠・出産 | 
| リハビリ・回復の見込み・後遺症 [共通] | その他 [共通] | 
2016/12/5更新
 
              
               
              
               
              
               
              
               
              
               
              
               
              

A: MSで経過が長くなると、物忘れ、認知症がでることは珍しくありません。初発症状として、あるいは経過が短くても、出現することもあります。
        これは脳MRI検査で、@ 以前から脳に病巣が多かった場合か、A 多くなくても以前から脳の視床や海馬などの記憶機能と関係の深い部位に病巣のある場合、
        あるいは B 最近、脳病巣が増えた時です。@の場合には、脳萎縮がゆっくりと進行し、同時に認知症も次第に強くなることが普通です。
        
        発症から3年と経過は長くないのですが、発症時には既に大脳に多数の病巣が見つかることはよくあることです。
        症状の出る前に潜在的に病気が始まっていて、病巣が蓄積するのはMSの一つの特徴です。あるいは、最近急に脳病巣が増えているか、いずれかが考えられます。
        もし、そうしたMRI所見が無い場合は、他の原因を調べる必要があります。
        MSにおける認知症の治療に有効な薬はまだ開発されていません。MSの治療をしっかりと行うことが重要です。   あとは自己の脳の残された細胞が修復してくれて、症状が軽くなるのを期待して待つしかありません。
        アルツハイマー病で用いられる記憶改善薬が有効に見えることもあり、利用することもあります。アルツハイマー病であるとの診断が無いと、健康保険が使えません。
        アルツハイマー病は高齢者の病気ですので、若い患者さんでは利用が難しい面があります。
        もう一つ大切なことは進行や再発防止の治療が適切ではない可能性があることです。臨床的は再発があるか、臨床的な急な変化が無くても、定期的に脳MRIを撮り、前回の脳MRIと比較することが重要です。
        Bの最近に新しい病巣が出現したか、造影される病巣が見つかったことがある、あるいは臨床再発がある、など変化を見つける努力、検査をしているでしょうか。
       
        認知症状が1年以上にわたって、ゆっくりと悪くなりつつあるのであれば、MSが再発緩解型ではなく、進行型(一次、二次があります)である可能性が高いと考えます。
        二次進行型の方には、新しい進行防止を期待する新薬の治験が進行しつつあります。
       
       いずれにしても、現在の治療(アボネックス)を続けるか、治療を変更するか、再検討することは必要です。
       再発緩解型で脳MRIで@の場合、脳萎縮の進行を抑える効果がもっとも証明されているフィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)へ変更することが勧められます。(2015/2/12現在)
   

A: MSで便失禁がある場合、殆どの方は尿失禁も強いのですが、時に便失禁が主の方もおられます。
        
        多くの方は、便秘になっており、定期的に浣腸や、座薬による排泄をする方が多いです。訪問看護婦さんにより、定期的に摘便をしてもらう方もあります。
        
        人工膀胱瘻を作ることは時にありますが、人工肛門を造設した方は2人で、2人とも歩行不能の方でした。
        
        尿失禁や便失禁症状を起こしている原因病巣を確認できないことは、珍しくありません。現在のMRIの限界によるのでしょう。 診察していないので、確定的なことは言えませんが、婦人科の手術歴などの他の原因が見つからないのであれば、MSによると考えるべきだろうと思います。

A: 「MS特有の疲労・疲労感」は@再発に伴い炎症物質がリンパ球などから分泌され疲労、疲労感をもたらすものと、A脳、脊髄、視神経の病巣(MRIで見えるとは限りません)内の神経細胞、神経軸索の機能が低下しているにもかかわらず活動せざるをえませんので、疲労を生じやすいことによるものとがあります。
        
        その他B運動麻痺(脱力)や小脳失調などの障害がある方が体を動かすと障害のある部位を無理に動かし、残っている機能に関連した筋肉を過剰に使うこととなり、筋肉に疲労が生じやすいのは、他の原因で障害があるかたも同様で、特有の疲労感とは言えません。
        
        軽症の方、再発の無い方ではMS特有の疲労感は出現しないはずです。C鬱や神経症にともなう疲労感も非常に多く、MSに限らずあります。
        MSでは鬱が多いのですが、MSのような診断を聞いただけで、また障害があれば、鬱になるのは理解できます。
        再発や病巣・障害の蓄積を生じない治療を受けていれば、先回りして心配する必要は無いと思います。
       

A: 視野中心部の欠損は中心暗点とよばれます。MSで出やすい視野障害の一種です。 
        パルス点滴3日で少し狭くなったとのことですが、できるだけ早い時期にもう一度3日間の点滴をしたほうが良いと思います。すでに時間が経ってはいますが。
        現在視力0.2ですので、今後一定の改善はあると思われますが、元の状態には戻らない可能性が強いと思われます。 
        
        視野の中心の像は網膜の中心部である黄斑といわれる部分に映ります。 この部分は視神経の細胞が周辺部に比べて密に集積していて、細かく精密に画像を見ることができますので、この部分の能力により視力が決まります。周辺部の視野では、大雑把にしか物を見れません。
        
        視野の中心部で精密に物を見る能力で視力が決まりますので、視野の中心か見えなくなると視力の低下が強く出ます。(2015/5/4)
        

A: 「物忘れ」はだれでも経験する一つの現象です。一定の限度を超えれば、認知症の一症状である判定されます。
        「皮質下認知症」(皮質下痴呆)は認知症の一つで、大脳の深部白質が障害された時に出現し、様々な精神現象のスローダウン、精神活動の速度、処理速度の低下を特徴としています。
        皮質下と言っても、前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉、大脳基底核などの障害の程度により、症状にはバラエティがあります。 
        多発性硬化症で脱髄が中心であれば、処理速度の低下、スローダウンが特徴となります。 血管障害による時は前頭葉障害が中心であれば、無為、積極性の低下、抑うつなどが前景に立ち、アルツハイマー型認知症のような記憶力の低下は目立ちません。
        

A: 症状からは、てんかん発作の特殊なタイプ、循環障害、心因性(転換性障害)などが考えられます。 多発性硬化症でてんかん発作がでることもありますが、貴方の症状はてんかん発作としても、非典型的です。 
        いずれにしても、しっかりとした神経内科で調べていただく必要があると思われます。(2015/6/25現在) 
        

A: 脳幹の最下部の延髄、上部頚髄、胸髄などに病巣があると呼吸不全、呼吸困難がでることがあります。 胸郭の動きが悪ければ呼吸不全になります。肺疾患はおそらく調べてあり、無いのでしょう。担当医に聞けば説明があるのではないでしょうか。 
        
        睡眠時に酸素濃度がさらに低下している可能性があり、脳障害などを起こすことがあります。 プレドニンを長く服用していて肥満があると、睡眠時無呼吸が一層起こりやすくなります。対策が必要なのではないでしょうか、担当医にお聞きください。(2015/6/28現在)
        

A: 耳鳴は特定の疾患の無い人でも、かなり頻度の高い症状です。 
        しかしMSの患者さんではさらに頻度が高く、一部の研究では耳鳴、難聴、めまいなどの前庭症状の少なくとも一つがあったMS患者の割合は非常に高かったと報告されています。
        
        MS患者での耳鳴だけの頻度を調べた論文は見つかりませんでした。 
        
        総合しますと、貴方の耳鳴がMS病巣に基づくと断定することは非常に難しいのですが、その可能性が高いと言えます。 
        
        ご質問にはありませんが、MSの再発進行防止治療を現在していない点が気になります。
        脳の病巣数は少なくないようです。そうした方では何年間も表面的に変化が無いように見えても、ある時から進行型MSに変化し、障害の進行が止まらなくなるリスクが高いと言えます。
        現在ある治療を上手に利用し、そうしたリスクを防止することが重要だと思います。(2015/7/15現在)    
        

A: 手足のむくみ、特に下肢に浮腫があるようです。
        また、朝起床後に下肢(?)を動かしにくいとのことです。 
        
        四肢の浮腫は多発性硬化症とは直接の関係はありません。心不全、腎不全、電解質異常、低タンパク血症、内分泌異常、その他など、内科的原因が疑われます。
        多発性硬化症の再発進行防止薬とも関連はありません。 
        従って、程度が強いのなら、早く近くのしっかりとした内科を受診することをお勧めします。
        神経内科の先生でも、原因追究は可能ですが、専門とは言えません。 
        
        同時に、朝下肢を動かしにくいようですが、いつも下肢の浮腫みがあるときに限って動かしにくいのであれば、浮腫が原因でしょう。 
        多発性硬化症で午前中にのみ動かしにくくなる原因は、考えにくいです。寝起きで体温が上昇しているときに、麻痺症状が強くなることはあります(MSのウートフ現象)。
        その場合は浮腫と関係なく、出現するはずです。
        (2015/7/19現在) 
       

A: MSの病巣の出現や分布は、利き手、利き脚とは関係ありません。右利きか、左利きかとも関係ありません。 病巣の出現する場所が症状を決めるのですが、利き側とは無関係に、不規則に出現します。 左脚の麻痺が出現したなら、脊髄の左側、又は脳の右側に原因の病巣があるはずです。

A: バビンスキー反射や反射亢進があるのは、その筋の運動を指令する脊髄のレベルより上部で、脊髄・脳の損傷があることを意味しています。 
        筋が伸展した時に、筋の収縮を生じる反射が脊髄の中で生じるのですが、正常な場合は、そうした反射を抑える脳や脊髄の上位の部分からの信号により、筋の収縮反射が抑えられています。
        しかし、上位の脊髄や脳に障害あると、そうした抑制の情報が下へ伝わらなくなり、筋の勝手な反射的収縮が起きてしまう結果が、バビンスキー反射や反射亢進です。
        

A: MSにより誘発される頭痛は、MS病巣による三叉神経痛や頸部の感覚障害が引き起こす頭痛があります。 感覚神経の障害がない場合、MSが痛みや頭痛を引き起こす事はありません。
        
        MS患者さんの頭痛のほとんどは、MSとは無関係な、一般的な筋緊張性頭痛、片頭痛、脳底血管片頭痛、群発頭痛、血管性頭痛、脳腫瘍による頭痛、感染症に伴う頭痛、うつ病に伴う頭痛、などです。
        頭痛の頻度は高く、MS患者さんでも偶発的に合併症としてこうした頭痛を持っている方は珍しくありません。
        
        貴方の頭痛もMS由来ではないと思われます。 
        神経内科医は一般に頭痛の診療をしますが、頭痛を専門に診療している神経内科、脳外科の医師がおられますので、相談されることをお勧めします。 
        
        アボネックスで頭痛が出現することは珍しくありません。インフルエンザ症状の一部として、熱、頭痛、倦怠感、筋肉痛、関節痛のいずれか、あるいは複数の組み合わせで症状がでます。 
        しかし、副作用としての症状は注射日から1日(最大で2日)程度であり、それ以上持続するのであれば、他の原因を考えます。 
        貴方の場合は継続する頭痛のようですので、関連はなさそうです。 
        
        フィンゴリモド(イムセラ、ジレニア)への変更を予定しておられるとのことですが、アボネックス治療中に再発があったのですから当然の判断であり、急ぐべきだと考えます。 (2015/8/24現在) 

A: カクカクと連続的に動く、意志によらないリズミカルな筋の収縮は、筋クローヌスと言われる不随意運動の一種です。 麻痺が改善しつつあるとは断定できません。麻痺した神経組織の一部で興奮能力が復活しつつある兆候である可能性はあります。
        
        急に脊髄病巣が出現して強い運動麻痺が生じた直後には、筋肉がダラリとなる弛緩性麻痺が生じ、炎症がおさまると次第にツッパリが強くなる痙性麻痺に変化することがあります。 
        
        しかし、麻痺の改善は意志に基づく動き(随意的な動き)が出てくるか、強くなるかどうかで判定します。 この1〜3か月で筋収縮が次第に強くなってきたのであれば、今後も改善の持続を期待できます。変化ないのであれば、今後の改善は期待できません。
        

A: MSで下肢に運動障害がある方には、膝に負担(関節や周囲の筋・腱の小さな外傷の反復)がかかるため関節の障害が出ることがしばしばあり、関節や周囲組織の痛みを伴います。
        
        痛み軽減のためには、膝への負担の軽減のための装具使用や、鎮痛剤服用、湿布塗布などが有効です。担当医がご存じのはずです。 
        
        ツッパリが強く、運動や歩行の障害となるのであれば、様々な抗痙縮薬の内服が通常の対応ですが、強ければボトックスの筋肉への注射、脊髄髄腔内への持続注入ポンプを用いた抗痙縮薬の持続注入、などを利用します。
        これらも担当の神経内科医師がご存じのはずです。 
        
        MS歩行改善薬ファンプリディンの利用開始は2017年中であると期待されています。 
        MSで歩行障害がある方の約半数では、一定の改善効果があると言われています。試してみる価値は十分にあると思います。 ツッパリ・痙縮を軽減する効果が見られることもあります。しかし、痛みやツッパリの治療は事前に、あるいは平行して行うべきです。(2015/9/9現在) 

A: 排尿の中枢である脊髄の下部に病巣ができていると思われます。
        排尿は筋肉の袋である膀胱の収縮と、腹筋、横隔膜筋の収縮による力みにより膀胱内圧を高めることで可能となります。 同時に尿道下部を締め付けている括約筋をゆるめる(弛緩させる)ことも必要です。
        
        膀胱筋の収縮を助ける内服薬が何種類かあり、単独や組み合わせて利用できますので、神経内科や泌尿器科の先生にお願いして、いろいろと試みてください。
        力む、下腹部を手でトントンと叩くことも助けとなります。
        (2015/10/5現在) 

A: MSで頻度の高い症状の一つに疲れやすさ、倦怠感、だるさがあります。しかし、こうした表現の症状は様々な他疾患や、疾患が無く健康と思われる人でも見られますので、MS患者さまが訴える時に全てがMSの症状であるとは言えません。 MSと診断されている人における「倦怠感、疲労感、だるさ」にはいくつかの種類があります。 
        診察をしないで貴方が下記の何れにあたるかを診断することは非常に難しいことです。複数の原因が重なることも多いです。 
        (1)MS特有と言われている「倦怠感」に2種類あります。
        @ 
        炎症物質がリンパ球などから分泌され全身的な疲労感、倦怠感をもたらすもの。 疾患活動性が高く、臨床的再発やMRI上だけの再発(造影病巣や新しいT2病巣の出現が続いている)時期の倦怠感。MS特有と表現されますが、感染症や他の免疫疾患の活動期にも同様な症状が見られます。
        安静時を含め、ほぼ常時倦怠感があるが、疾患活動性が低下すれば無くなる症状です。 
        タイサブリではこうした症状が無くなることが多く、フィンゴリモドでもよく経験します。疾患活動をしっかりと抑制することで効果がでると考えられます。 
        
        A 
        脳、脊髄、視神経の病巣(MRIで見えるとは限りません)内の神経細胞、神経軸索の機能が低下しているにもかかわらず活動せざるをえませんので、疲労を生じやすいことによるもの。
        動作や運動、連続した注視や集中した精神活動など、脳や脊髄の神経の連続活動が一定時間続いた時に発生し、一定時間の休息で消える症状です。 
        だれにでも生じる疲労感ですが、MSでは神経線維の機能低下があり、神経終末から活動時に分泌されるさまざまな神経伝達物質の貯蔵量が低下しているため、疲れ現象が早く出やすくなっているためです。
        
        MS以外の神経疾患でも類似現象が見られます。重症筋無力症で易疲労性と言われる疲れ現象のでやすさが特徴といわれているのと類似しています。 
        
        
        (2)残存する神経や筋の機能に負担が集中するために生じる「疲れ易さ」 
          :MS特有でなく他疾患の障害時にも共通 
        障害があり機能低下している機能を稼働させる時に、残存する低下した機能に負担が集中し酷使するために、早い疲労現象が生じる現象です。 
        運動麻痺(脱力)や小脳失調などの障害がある方が体を動かすと障害のある部位を無理に動かし、残っている機能に関連した筋肉を過剰に使うこととなり、筋肉に疲労が生じやすいのは、他の原因で障害があるかたも同様で、特有の疲労感とは言えません。 
        
        
        (3)精神的原因 
        MSのある患者さんではうつ病、鬱症状を経験する方が40%はあります。 MSが無くても、うつ病、神経症は軽度の方をいれると頻度の高い病態です。診断されてなくても、軽度のものは非常に多く見られます。
        
        そうした場合いの最も多い症状が倦怠感です。不眠、身体各所の痛み、シビレ感も多い症状です。
        
        医師は脳や身体的原因を見つけられない時に精神的原因を疑いますが、軽度の時に診断することには躊躇します。診断していても、患者さんへは告げないこともしばしばみられます。
        
        (2015/11/10現在)
       

A: 非常に強い排便と排尿困難があり、時間がかる、少しずつしか出せないとのことです。 
        排尿、排便をコントロールする自律神経のセンターは、直接は脊髄の下部にありますが、MRIでは病巣は見えなかったとのことです。ただ、MSで排尿、排便の障害がありMRIで検査をしても、その時点では病巣が見えないことはしばしばあります。過去の脊髄障害が出現した時点の検査データでは見つかることもあります。 
        
        腹圧をかける腹筋、横隔膜筋の収縮が弱いようですので、腹部ないし胸部以下に強い運動麻痺があることが一つの要因であると思われます。そうした麻痺がある方の多くは便秘と排便困難がありますが、貴方が記載されているほど強い方はそう多くありません。
        
        
        自律神経機能の強い障害を特徴とする他の神経疾患の合併も否定する必要があると思われます。貴方の全身的状態、麻痺の分布、程度、他の自律神経の異常がないか、などを神経内科で評価した上で、排便、排尿機能を測定、評価する必要があります。
        
        
        脊髄病変では排尿筋外括約筋協調不全が認められます。外尿道括約筋の筋電図で神経原性変化が認められるときは仙髄Onuf核以下に病変があると考えられ、多系統萎縮症でそうした異常が認められることがあります。 
        
        
        排便機能は肛門・直腸外科が評価してくれます。 
        少量ずつの硬い便しかでないのは、便秘のみでなく、直腸に異常があり通過障害がある可能性も調べる必要があります。 
        これまでの便秘への対策・治療の中身も点検してくれるはずです。
        
        排尿困難は泌尿器科で評価診断します。 
        排出障害の有無と程度を評価するには尿流測定と残尿測定を行います。尿流低下が認められる場合は膀胱内圧流量測定(pressure flow study)を行うことで膀胱収縮筋力の低下か膀胱出口部の閉塞かの推定を行うことができます。膀胱収縮力の低下が認められた場合は蓄尿障害も評価します。
        
        
        こうした総合的な評価・検査が可能な医療機関を担当医と共に調べ、検査をお願いするべきだと思います。
        (2015/12/15現在) 
        

A: ご主人に記憶障害がでてきたとのことでご心配のことと思います。 
        もし同時に、MRIで新病巣が大脳の記憶に関連する部位(視床や側頭葉全部など)に出現しているのであれば、MSの再発増悪であり、パルス療法や血漿交換で改善する可能性が有ります。
        
        MRI新病巣の出現が無いのに、記憶障害が現れ、その程度がゆっくりと持続して強くなるのは、2次進行型MSへの移行によると考えられます。脳萎縮が中等度以上に進行している方で、よく見られます。運動や歩行の障害の進行が同時に進むとは限りません。この場合には進行はゆっくりと継続すると覚悟する必要があります。一定期間、進行が無く安定しているように見えても、改善は難しいです。 
        
        アルツハイマー病で認知障害症状を一定程度改善することがあるお薬がMSでの認知症状にも試されていますが、明確な改善効果は示されていません。鬱症状が重なることがありますので、優しい思いやりのある見守り、援助が必要です。また、知的な刺激、活動と身体的活動の何れもが症状の軽減にある程度効果が有る可能性があります。
        
        
        フィンゴリモドや活性型ビタミンDが認知症出現や悪化の原因となることは考えられません。偶然の時間的な一致であると考えられます。 (2016/2/5現在)
        

A: MS患者さんにおける“めまい・平衡感覚の異常”で耳鼻科的な原因、頸部の異常、眼振などの眼科異常などがない場合、MSによる症状である可能性がありますが、対応する病巣が確認できることはあまりありません。MSに関係の無い、原因不明のめまいは非常に頻度が高いため、MSが原因であるかどうか断定できない場合が大半です。 
        診察をしておられる担当医でないと正確な返答は困難です。 
        (2016/2/10現在)
        

A: (1) 
        記憶障害につき質問しておられますが、MSにおける認知障害で記憶力のみが低下することは稀ですので、認知障害について記載させていただきます。 
        
        MS患者で認知障害は一般的で、全体の半分の方で問題が生じると言われています。 
        認知とは高度な脳の機能を意味し、@学習し情報を記憶する能力、A生活、行動を組織し計画し、問題を解決する機能、B注意を集中する、維持する、必要に応じ注意を移動させる機能、C言語を理解し使用する機能、D環境、状況を正確に把握する機能、E計算機能などから構成されています。
        MSにおいては病巣の分布が一様でなく差異が多く、分布に応じて脳機能障害の組み合わせが異なり、主な障害も異なります。 
        
        MSでは大脳の深部白質・側脳室周囲の白質神経線維障害が多く、そのために生じる各種情報の伝達、処理速度の低下が生じますが、出現し易いのは以下の障害です。
        
        記憶障害:新たな情報を収集する、保持する、取り出す障害。 
        注意障害:注意する、集中する、特に複数課題への注意保持の障害。 
        情報処理障害:視覚、聴覚、体感(触覚、痛覚、深部感覚、バランス感覚など)、味覚などの五感の伝達と処理の遅延・スローダウン。 
        遂行障害:計画立案、重点化の障害。 
        視覚画像情報処理障害:特に画像認識、再構築の障害。 
        言語流暢性障害:特に言語選択、取り出し(word-finding)障害。 
        
        一方、一般的な知能、長期(遠隔)記憶、会話術、文章読解力などは保持されることが多く、出現しにくい障害です。
        こうした複雑多様な脳機能の内、一機能のみの障害が出たり、数個の異なった機能障害がでることもあります。日常生活に差支えを生じる程度の認知障害を生じるのはMS患者さんの5〜10%だと言われています。重度の認知障害のために家庭での生活が不可能となることは稀です。
        
        MSによる認知障害、記憶障害であれば脳にかなりの病巣蓄積がみられるのが普通ですが、記憶障害が他の機能障害より重いときには、視床病巣によることが多く、両側または左側頭葉前部の海馬の障害や、前頭葉病巣でもでます。
        
        (2) 
        こうした症状の頻度、程度はそれまでの治療に大きく影響されます。近年治療が大きく進歩しつつありますので、今後は認知症や身体障害の頻度が低下すると予測されます。 
        貴女の場合、MS再発進行防止治療を受けておられないとのことですが、MS診断が正しいのであれば、早急に治療を開始することをお勧めします。 (2016/2/30現在)
        

A: NMOSDでは脳の下部、視床下部にある体温調節中枢が障害されることもあります。 
        脊髄の中心灰白質にある自律神経核の障害ですと、発汗機能が障害され、体のあるレベル以下の発汗が減り、上部に異常に発汗が増え、体温の上昇が起きます。 
        

A: 残念ながら体温調節障害の治療薬はありません。 
        自律神経調節障害のお薬はありますので、先生にお願いして一度試されたら良いでしょう。しかし私はこれまで効果を実感したことは殆どありません。 
        着衣や冷暖房で調節することとなります。 
        
        現在、体温調節障害薬の開発の試みはあり、将来開発に成功するかもしれません。(2016/3/30現在) 
        

A: 不明な点が多く、正確な返答が難しいのですが、 
        
        (1) 
        先ず、「多発性硬化症の疑い」では認定されませんので、認定されたのであれば、一応MS確実として申請したはずです。先生はMSであるか他疾患か100%の自信は無かったとの意味でしょう。 
        
        (2) 
        MSとの診断のもと、3年前にプレドニン10_から治療を開始し、本年3月には4_まで減薬したところで再発したとのことです。 
        もし診断がMSであれば、プレドニンを長期に服用していただくことはありません。効果が有りません。しかし、一部の医師でそうした間違った治療をすることは、現在でも時に見られます。
        しかし、プレドニンを長期に服用し再発が無かったが、減量して初めて再発が有ったということは、正しい診断がMSではなく、視神経脊髄炎か抗MOG抗体疾患の何れかである可能性を強く示唆しています。診断の再検討が必要と思われます。
        
        正しい診断に基づく長期の予防治療が最も重要です。 
        
        (3) 
        パルス2クール実施し、ふらつき、左右の麻痺が少し残っているが、「残っている症状が無くなるのでしょうか?」とのご質問です。 
        しかし、情報が不足していて、診察なしでの返答は困難です。 一般論としては、今後さらに改善する可能性が高いと言えますが。 (2016/4/30現在)
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