MSの診断・治療 | 症状(痛み・しびれ感以外)[共通] |
NMOの診断・治療 | 痛み・しびれ感 [共通] |
抗MOG抗体疾患の診断・治療 | 再発・見分け方 [共通] |
MS/NMO/抗MOG抗体疾患いずれか不明の場合の診断・治療 | 妊娠・出産 |
リハビリ・回復の見込み・後遺症 [共通] | その他 [共通] |
2016/12/5更新
1)MOG抗体陽性疾患 意味とMOG抗体関連脳脊髄炎
MOG抗体関連脳脊髄炎はこの2年間に提唱された疾患概念で、細かな点はまだ確定していない、研究途上の疾患です。 主な特徴は明らかにされていますが、まだ例数が多くなく、多数例の集積で全面的な特徴を確定するのに数年がかかると思われます。
視神経脊髄炎スペクトラム疾患(NMOSD)と診断されていた患者群を対象とした最近の研究では、NMOSDが3グループ、すなわち抗アクアポリン4抗体陽性、抗MOG陽性、いずれも陰性に分けられることが示されています。
抗MOG抗体陽性NMOSD群は全体の7.4%を占め、他の2群のNMOSDと比較すると、視神経炎が多い、両眼同時の視神経炎が多い、若い患者が多い、男性が多い、下部脊髄炎が多い、単相性で再発が無い例が多い、軽症例が多くステロイドで改善が良好であることが多いなどの特徴が分かっています。
一方、過去の研究では、抗MOG抗体は、NMO以外の疾患の診断基準を満たした症例でも検出されている。 成人より小児例で多く検出され、特に急性散在性脳脊髄炎(ADEM)の小児に多く発見されています。その場合、抗体は一過性に出現し消失する。 抗体が持続する場合は再発があり「MS」(?)へと移行したと報告されている。
臨床症状が一度のみ出たCIS(clinically isolated syndrome)と言われる患者でMOG抗体陽性患者では再発リスクが高いとの報告がありましたが、追試では確認できず否定されました。
しかし、MOG抗体が持続する場合は再発リスクが高いことが確認されています。
MOGとはmyelin-oligodendrocyte glycoproteinの略語で、髄鞘(ミエリン)オリゴデンドロサイト(髄鞘を作る細胞)糖タンパクと訳されます。
MOGは髄鞘に特異的なタンパクの一種で、MOGで動物を免疫してMS類似の慢性疾患を作ることが可能です。 そうした動物の病巣はMSの特徴である脱髄(神経の軸索突起は保たれ、それを覆う髄鞘/ミエリンが破壊され軸索が裸になっている状態)を呈しており髄鞘の破壊が特徴です。
抗アクアポリン4抗体陽性NMOSDの特徴であるアストロサイトの破壊とは明瞭に異なり、MSと共通の特徴を有していると言えます。
抗MOG抗体は多様で、疾患により結合するMOG分子上の部分が異なるといわれています。
抗体測定の方法による違いがあり、その意味つけも確定していません。
抗アクアポリン4抗体はNMO病巣を作ることが証明されています。一方、抗MOG抗体、あるいはその一部、が病巣を作り、疾患発生の原因となっているかどうかは、未だ研究の途上です。
(2)10歳のお嬢さまの診断は抗MOG抗体陽性NMOSD
お嬢様は長い脊髄炎がありNMOSDの診断基準をみたしますので、(1)に記載した抗MOG抗体陽性NMOSDの初発例と診断されます。 脊髄の下端である腰髄に病巣があることと、視神経炎があること、年齢が若いことなども特徴をみたしています。
抗MOG抗体関連脳脊髄炎と同一疾患の可能性が高いのですが、現時点ではデータが不足していて確定できていません。
この場合、再発が有る例と無い例があります。抗体を継時的に測定し陰性化すれば、再発の無い単発性のNMOSDであろうと予測可能と考えられますが、その確実性については未だ確定していません。
かってNMOSDの概念、診断は存在しておらず、急性散在性脳脊髄炎の診断基準をみたす例の中に単相性(再発の無い)NMOSDが含まれていました。再発例はMSと診断されていました。お嬢さまの場合も、長い脊髄病変の出現したADEMと診断することも可能です。
呼び名はどうであれ、本態は同じ疾患だと考えられます。(2015/4/27現在)
A: 貴方の病気の診断は「抗MOG抗体疾患」です。新しい稀な疾患ですので、十分には分かっていない点があります。従来、MS, 抗アクアポリン抗体陰性NMOSD, 多相性急性散在性脳脊髄炎(MADEM)などと診断されていた方に見つかることが多い。本ホームページに簡単に説明していますので、お読みください。
本疾患については正確な理解をしていない医師がまだ多いのが実情です。小児では再発の無い例が比較的多いのですが、大人では再発が有るのが普通です。
長期的な再発防止治療にはステロイドを利用することが多いが、副作用があるので安全な免疫抑制剤を用います。
現在の貴方の医師でも正しい治療ができるのかどうか、転院したほうが良いかは、難しい問題で、判断できません。
診察をしていませんので、記載されている様々な症状の全てがこの疾患によるかどうか、断言できませんが、多くは本疾患の症状であろうと推察されます。
痛みや、シビレ感は、神経組織の刺激状態ででる症状であり、新しい病巣の出現に伴う再発の症状でないことが多いのですが、時に軽度再発での症状としてでることもあり、正確な判定は医師の診察が必要です。(2016/5/15現在)
A: 無論、診察は可能です。その場合は一度、事前にお電話を下さい。
診療情報提供書(紹介状やセカンドオピニオン受診依頼)あるいはそれに替わる書類、MRIのCDロムなどが有る場合、無い場合の、いずれの場合でも可能ですが、有る方が結論を早く得やすいのは当然です。当方から担当の先生に依頼することも可能です。
(2016/6/15現在)
A: 治療法については、新しい疾患で、診断された例数も未だ少ないので、長期的な再発防止法について、根拠のある方針が確定できていません。 いわば手探りで経験を積みつつある段階です。
現在分かっていることは、@プレドニンが良く効くが、減量や中止をすれば再発することが多い、A重症の再発時には血漿交換が良く効く(開始が遅れなければ)、B治療をしていればNMOSDやMSと比べて、強い後遺症を残す事は少ない事です。
NMOSDでも同様ですが、問題はプレドニンの長期服用による副作用が避けられないことです。より安全な免疫抑制剤を併用し、プレドニンを減量したり、中止したりする試みがされています。様々な免疫抑制剤がありますが、安全性の高いものを利用するべきです。免疫抑制剤使用の経験豊富な専門医師に治療してもらうことが大切でしょう。
万一、重い再発が発生した時に備えて、迅速に血漿交換治療を開始しうる体制のある病院を確保することも重要です。(2015/6/19現在)
A: 遠距離の方ですので、地元の先生との関係を保つことは大切だと思います。 たまに診察をさせていただく、あるいはセカンドオピニオンだけ、いずれでも結構です。
疑問あれば、あるいは予約を入れる場合には 090−2287−1021 斎田 へお電話を下さい。(2015/9/13現在)
TEL 075-468-8642
FAX 075-468-8657
E-mail msnet@bg.wakwak.com