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2016/12/5更新
A: ジレニア・イムセラは効果が高く利用し易い薬剤です。MSは妊娠を希望する親にとっての大きなリスクであり、同時に生まれてくる子供の人生にも親の健康は影響があります。MS治療には効果の高い治療を早期に始めることが重要であり、治療のリスク(副作用)は知識と熱意のある医師であれば防止が可能です。
フィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)を服用していて妊娠に気づき、妊娠を継続して出産をした女性が269人あり、生まれた子供の奇形率は6人(2.2%)であったと報告されています。無治療の健康女性の出産での奇形率が2.1~4.1%であり、流産などの異常の増加もありませんでした(2015年10月ヨーロッパ多発性硬化症学会発表)。さらに例数を蓄積する予定で、それまでは妊娠を希望する2月前には服用を止めるようにと勧告されています。
しかし、妊娠が分かったら服用を中止することで、大きな問題はなさそうな結果であると言えます。
しかし現時点では妊娠希望の2月前に服用を中止するようにとメーカーの添付文書は記載してあります。
アボネックス、タイサブリではもう少し多数例での結果が報告されており、奇形の増加は無さそうなデータです。タイサブリ、コパキソンでは妊娠中もそのまま治療を続けたが、出産も新生児にも異常が無かったとの報告があります。
こうしたデータは有りますが、アボネックス、タイサブリ、コパキソンでは、妊娠が判明した時点で治療を中止し、妊娠中は治療しません。
妊娠中、特に後期では再発は少なくMSは安定します。出産後には再発のリスクが通常より高まりますので、しっかりとした治療の早期開始が必要です。
私もこれまではフィンゴリモド服用中に妊娠を希望する場合は、希望の2月前に服薬を中止していただき、タイサブリ、アボネックスの何れかへ変更し、妊娠すれば治療を再開し、問題は経験していません。一方、時に妊娠希望時や出産後に治療中断を希望する方があり、重い再発を経験しています。
上に書きましたようにフィンゴリモドを妊娠判明まで服用していても大きな問題は無さそうですが、断言するにはもう少し時間がかかると思われます。 (2015/12/30現在)
A: (1)フィンゴリモド(イムセラ、ジレニア)使用開始して活動性が停止し病巣の修復が進行しているようですが、治療を中止したり、より効果の低い第1世代MS薬であるアボネックス、ベタフェロン、コパキソンへ変更した場合には、2月目以後に再発やMRI新病巣の出現が始まることをかなりの頻度で経験しますので、一定のリスクが有ると言えます。
タイサブリは一番効果の強い薬ですが、強すぎるということはありません。1年半はどなたでも安全に利用が可能ですので、安心して使えます。その間に妊娠して中止すれば問題ありません。
質問:タイサブリを使用する場合について教えてください。
(2)タイサブリの初回点滴する前日までイムセラを服用して問題ありません。
(3)フィンゴリモド中止して2ヶ月経過したら妊活を始めて結構です。生理が不規則なら、4,5週間毎の点滴を継続しつつ、生理が1月半の間無ければ、自分で尿による妊娠テストを実施するか、婦人科を受診して、妊娠が確定すれば点滴を中止することで問題ありません。タイサブリ点滴をする間隔は4週間ですが、開始から3月を経れば、6週間まで変動しても大丈夫です。
(4)フィンゴリモドで何の問題も無かったのであれば、出産後は戻るのが通常です。フィンゴリモドで完全には安定していなかった方の中にタイサブリをやめると再発することが有ります。
(5)コパキソンで様子をみて妊活中に再発があればタイサブリ切り替えて妊活続行という方法では、再発による障害や病巣が残るリスクが有ります。
(2016/6/19現在)
A: @もし将来に妊娠を希望しているが予定は無く、アボネックス治療中に脳に新病巣が見つかったので、より有効性の高いMS治療薬への変更を考慮しているのであるなら、フィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)かナタリズマブ(タイサブリ)のいずれかへの変更を検討すべきです。タイサブリでなければならない理由はありません。
将来妊活を始める時には再考が必要です。
Aタイサブリは2年以上の使用は難しいのは、約半数の患者さんでの話です。抗JCV抗体インデックス値が一定以上の方では確かにそうです。低い場合は、陽性でも使用継続可能です。
インデックス値が高い時には、フィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)への切り替えをお勧めします。来年中にはおそらくフマル酸ジメチル(テクフィデラ)が利用可能となり、有力な候補になると思えます。
B私の場合は、効果と安全性、利用しやすさ、妊娠をすぐ希望するかどうか、などを総合し、お勧めする順位をつけ、患者さんに選んでいただきます。極く稀なリスクをのぞけば、何れの治療でも一定の注意を払えば安全な利用は可能ですので、効果が重要だと考えます。
(2016/8/10現在)
A: (1)フィンゴリモドは妊娠希望日の2月前には服用を中止するように勧告されています。タイサブリ治療を開始してすぐにPMLリスクが始まることはありません。1年半はどの人でも問題がありません。
タイサブリ治療中、あるいは中止直後にPMLが生じるのは、JCV抗体インデックスが一定以上高い方のみであり、陰性や低値の方では、いつまでもPML発生は有りません。
またインデックスが高く将来はリスクが始まる方でも、1年半まではPML発生はありません。
インデックス1.5以上の場合で1年半〜2年で1000人に1人のPML発生リスクであり、2年以後は100人に1人の頻度です。
0.9以上の方は2年を超えると1000人に1人のリスクが始まります。
従って、そうしたリスクの始まる前に使用を中止し、リスクを回避することが可能です。
JCV抗体インデックスは事前に調べることが可能です。しかし、データに関係無く、1年半は問題がありません。その間に妊娠できるように、時間を無駄にしない科学的な作戦を立てることをお勧めします。
(2)ディメチル・フマール酸(テクフィデラ)は来年には利用可能となると期待されています。この薬剤でも妊娠の2月前には中止が勧告されています。発売から2年程度ですので、間違って妊娠し出産した新生児のデータの蓄積は多くありません。
(3)タイサブリかフィンゴリモドを中止した場合、平均するとタイサブリを使用していた人の方が再発の増加が多いのですが、その理由はタイサブリを使用している方は使用前のMSの活動性がより高かった方が多いためです。どの治療でも中止後に再発を増やすということはありません。どの治療の場合でも、利用開始前に再発が多かった方や、利用中にも再発が有った方は、中止後に活動性が高まる可能性が高いので、無治療の時期を設けることは危険です。そうした方では有効性の高い治療の継続が必要です。
(2016/8/15現在)
A: フィンゴリモドを妊娠判明時に使用していた269人での出産、流産などの結果は薬を使用していない健康女性の妊娠、出産と全く差がありませんでした。健康女性でも一定の割合で問題が生じており、それと差が無かったという意味で、問題が起きないと保証するものではありません。
一方、インターフェロン、グラチラマー酢酸塩(コパキソン)、ナタリズマブ(タイサブリ)は歴史が長く、より多数の同様の事例が報告されています。それらでの胎児、新生児の奇形、流産などの結果は、いずれも上記のフィンゴリモド269名での結果よりやや異常の頻度が高いが、ほぼ正常範囲内であると考えられています。
また、MS活動性が高いため妊娠期間中にも利用した結果も次第に集積されています。
タイサブリ、コパキソンでは、これまでの報告では、妊娠中に利用しても問題の発生が無かったこと報告されています。
γ-グロブリンも同様ですが、MS治療薬ではありません。しかし、旧い間違った情報に基づき、現在でも利用する医師が有ります。
グラチラマー酢酸塩(コパキソン)が妊娠に対し比較的安全性が高いとされている唯一の根拠は、米国FDA(医薬品の審査を担当)が約20年前の同薬承認時に、妊娠に対し比較的影響がすくないと考えられるグループであるcatergory
B に分類したことによります。これは動物実験で奇形発生が無かったことに基づいています。人での実際の使用中の結果を反映したものではありません。
全ての薬で開発の初期に基礎的な催奇性を調べる動物実験をし、当局へのデータ提出が求められます。人間に使用する量の100倍などの高用量の薬を妊娠マウスなどに投与し、胎児の奇形発生がどのような頻度で出るかを調べます。グラチラマー酢酸塩以外のMS薬では、非常な高用量でマウスなどには一定の奇形や流産を誘発しています。フィンゴリモドは人間での治験の初期に利用した5mgの10分の1である0.5mgでも有効であり、低い量の方が肝障害などが少なく、より安全であったので0.5mgを利用することになりました。
また、人での治験ではすべてのMS治療薬で妊娠しないことが求められていて、正式のデータが存在しないため、薬務当局はコパキソンを含めた全てで妊娠したい時には利用しないことを求めています。しかし、実際には市販後に何れの治療でも使用中に妊娠した女性が多数あり、その結果の報告が集積されています。また、MSの活動性が高いため妊娠中にも利用した結果も報告されています。
殆どの医師はこうした報告を直接に自分で調べないで、添付文書やたまたま目に触れた一部資料、主張を参考にして判断、行動しておられますが、旧い資料に基づくことが多いのが実際です。
重要なのは実際に人間のMS患者さんで利用してどのような問題が起きているかです。これまで集積された人間でのデータでは、インターフェロンMS治療薬、コパキソン、フィンゴリモド、タイサブリなどでの奇形や流産の発生は、治療無しの健常女性での結果と殆ど差がありません。そうした多数の報告をもとに、以下、返答します。
1. イムセラからコパキソンに切り替えた場合、再発のリスクは上がるか?
A: 上がります。インターフェロン(ベタフェロン、アボネックス)への変更でも、同様です。
私は、一定のMS活動性がある方には、妊娠を希望したらナタリズマブ(タイサブリ)への変更をお勧めし、多くの方が利用しています。再発を経験することは、これまで有りません。
2. イムセラを中止した場合、すぐにコパキソンを使用できるのか、休薬期間があるのか?
A: 休薬期間を設けるべき理由、根拠はありませんが、多くの医師が休薬期間を設けているようです。MSの治験期間にはそうしたことが、その薬の効果、問題点と出現する時期のデータを集積する目的で要求されるのが一般的です。それを慣習的に継続している医師が多いのが理由でしょう。
全てのMS治療薬において、休薬は不要というより、休薬することは危険でMS再発のリスク上昇を予期する必要があります。どの治療への変更の場合でも同様ですが、本人の活動性が高いほど、また有効性の高い治療薬ほど、休薬は危険です。
3−1.妊娠直前までコパキソンを使用して、妊娠したらやめるのか、
A:全てのMS薬の添付文章では事前に中止するように求めています。
しかし、これまでの実績から判断すると、妊娠が判明したら中止することで充分に安全です。
生理が来なかったら直ぐに投薬を中止し、妊娠診断をしてください。陰性なら、直ぐに再開。
妊娠なら、そのまま出産まで中止します。
3−2.妊娠中もコパキソン治療を継続したほうがよいのか?
A:妊娠中をとおして利用した報告はまだ少なく、通常は妊娠判明と同時に中止します。初期ほど再発リスクがありますが、実際には再発の経験は少なく、通常のMS女性ではあまりご心配する必要はありません。
4.胎児のリスクはどうなのか?
A:上記したとおり、胎児へのリスクが完全には保障できないから、中止します。
5.出産後は再発リスクを考えイムセラに切り替えたいですが、テクフィデラが発売される予定のようで、その事も知りたいです。宜しくお願い致します。
A:テクフィデラは来年中には発売されると予想していますので、出産後には利用可能でしょう。ただ、イムセラより優れているかどうかは問題が有ります。効果は少し劣ると思っています。イムセラの使用になれていない、あるいは問題があった患者さんには良いかもしれません。
(2016/4/30現在)
A: 出産直後から再発のリスクは妊娠前以上に高まります。
従って、出産後にこそ、より効果の高い治療を早期に開始するべきです。
私の治療方針では、出産後1ヵ月は無治療で母乳を与えて頂きます。途中MRIで脳の潜在的な活動性病巣出現が生じていないことを確認します。1ヵ月後から効果の高いフィンゴリモドやタイサブリなどの治療薬で治療を開始します。
この方針で多数のMS女性が問題なく出産、育児をしておられます。
本ホームページ、Q&Aで反復していますが、“MSにより回復しない障害や認知症を生じるリスク”の方が“効果の高い治療薬を使うことにより回復できない副作用障害を生じるリスク”よりはるかに危険です。治療薬のリスクは医師が正しい知識を持ち、正確に対応すれば十分にコントロール可能です。こうした事を患者さんに正確に理解していただくことは、医師の責任であると考えます。
一般論ですが、副作用により責任問題となることを非常に恐れるが、治療しない、あるいは不十分な治療による損失は医師の責任では無いかのように考え、行動する医師が存在することは残念なことです。
(2016/2/20現在)
A: フィンゴリモド使用開始後、再発を抑える効果は毎月、徐々に強くなり、3月後で75%程度の効果、6ヶ月後にはほぼ100%の効果に達します。
最初の12ヵ月間での再発率は、IFN-β1a筋注(アボネックス)治療中の再発率の半分程度です。しかし、その再発の半分程度は最初の3ヵ月以内に発生しています。
従って貴女の場合、次第に再発が減ってゆくことが期待できます。ただ、一部のMS患者さまでは、その後も時々再発がみられることもあります。
インターフェロン(アボネックスやベタフェロン)で再発があり、フィンゴリモドに変えた患者さまで、その後も再発が時々有る場合、インターフェロンに戻すことはお薦めしません。
来年にでもタイサブリが使用可能となりそうですので、その時には、タイサブリに変更するかどうか、改めて判断するべきです。現在は、その他に治療法がありません。(2013年7月現在)
現在進行中の治験薬への変更の可能性も無いわけではありません。
しかし、フィンゴリモドを使用している方が、使用を中断しても、6ヶ月の治療中断期間を置いて初めて治験参加が可能となるとの条件があります。
そうした長い治療中断期間を作ることは、非常に危険であり、お薦め出来ません。
A: NMOSDか、他疾患なのかにより治療は異なります。
NMOSDなら、安全な免疫抑制剤を開始するべきです。プレドニンは有効ですが長期に使用すると弊害が大きくなりますので、短期間で中止します。
プレドニン単独治療の中断、無治療は大きなリスクがあります。重症再発で後悔をしている方を多数見ています。そうした危険を冒すべきではないと思います。私のNMOへの免疫抑制剤使用で後遺症状を残す副作用が出た方は、これまでありません。
ホームページの情報をお読みください。
NMOSDであるとすると、妊娠中にも服薬継続が可能な治療があり、安全に出産、育児をしておられます。通常の生活の継続が可能です。 治療を継続しつつ、何時妊娠しても問題ありません。
一方、プレドニン単独治療であれば、減量し中止するのですが、妊娠まで、出産後に、再発のリスクが高まります。何年経てば安全とは言えませんし、治療中止はお勧めしません。
(2016/5/5現在)
A: 先ず、お薬を自己判断で「時に中止」することは危険ですので、必ず医師と事前相談をしてください。
プレドニンなどのステロイド薬は、極少量や短期服用を除き、長期服用は妊娠の有無に関係なく様々な副作用を生じることは明確ですので、効果と副作用の比較を行い、また他剤での効果、副作用と比較を行い、必要最小限とするべきです。
私は主にステロイド以外の2種類の経口薬を利用し、ステロイドの利用は短期間か、一部の例外的患者さまに限定しており、NMOsdの患者さんの大半で非常に長期に再発が無い治療ができています。妊娠中にも服用を継続することも可能です。腎機能に問題が無い方であれば副作用も血中濃度を管理することで問題は生じていませんが、血液検査の結果により第3の治療に切り替えることは時にあります。
ご希望でしたら、一度外来を受診してくだされば、地元の先生に説明のお手紙を作ります。
ご質問にある胎児に対する影響は、現在の服薬量であれば、それほどご心配する必要は無いでしょう。
妊娠中、特に器官形成期(4〜7週程度)は薬による催奇形性が高い時期であり、ステロイド内服で、胎児に口蓋裂が生じるリスクが3.35倍になることが報告されています。また、低体重児での出生の増加や、脳性麻痺の増加の報告もあります。しかし、これら胎児への影響は、「ステロイド」が必要なほど、母体が不健康な状態であることが与える悪影響も考慮する必要があり、決定的な証拠があるわけではありません。
一方、胎盤には、プレドニンなどの「プレドニゾロン」を不活性化する11β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素が多く存在するため、胎盤で薬がほとんど不活性化され、胎児にまで到達しないので、1日20mgまでであれば胎児への影響は無いと言われています。副腎皮質ホルモン「ステロイド薬」は多くが胎児の安全性カテゴリAに分類され、妊婦に対しても使用できる薬と評価されています。従って、妊娠中の少量ステロイドの服用は、それほど重大な奇形を生じる可能性は低いと言えます。
他方、再発時に利用する大量(1000mg)点滴パルス療法は胎児の発育を若干遅らせ、体重、身長の小さな新生児となる可能性があると考えるべきですが、やむを得ず実施することがあります。
(2016/8/20現在)
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