MSの診断・治療 | 症状(痛み・しびれ感以外)[共通] |
NMOの診断・治療 | 痛み・しびれ感 [共通] |
抗MOG抗体疾患の診断・治療 | 再発・見分け方 [共通] |
MS/NMO/抗MOG抗体疾患いずれか不明の場合の診断・治療 | 妊娠・出産 |
リハビリ・回復の見込み・後遺症 [共通] | その他 [共通] |
2016/12/5更新
A: MSに関節痛を合併することはかなり多いです。原因は色々あります。関節に限局する痛みは、MSの脳や脊髄病巣に直接由来する神経痛ではない、明らかに合併症です。
膝や股関節の痛みは、運動麻痺や失調で関節周囲の筋・腱、関節に負担がかかる方に多く、昔からシャルコー関節と言われて有名です。
貴女の場合は手指主体で、起床時に強いこわばりがあるようですが、関節リュウマチで非常に多いmorning stiffnessに類似しています。
かならずしも関節リュウマチに特異的ではありませんが。
関節リュウマチの検査をどの程度したのかよくわかりませんが、一部の血液検査陰性の関節リュウマチもあります。
関節リュウマチの大きな特徴は関節の腫脹、変形です。レントゲンやMRIで確認します。いずれにしても、リュウマチ膠原病専門のしっかりした先生に見ていただくべきです。(2015/3/16現在)
A: 新しくでたMS症状の回復は、軽い時は数ヶ月、重い場合は1〜2年かかります。後遺症かどうかの判定はその後となります。
A: 視神経脊髄炎スペクトラム疾患で多く見られる痛みは、脊髄の背側にある感覚上向路に傷が残っていることが原因です。痛みには2種類あります。
一つは電撃痛で、短時間、間歇性であり、テグレトール、リリカ、非ステロイド消炎鎮痛剤などが、効果があることが多いです。慢性化することもありますが、完全消失することが多いです。
2番目は、持続性の痛みを交えた異常感覚です。不快な異常感覚の表現は多様です。シビレ感、ピリピリ、ビリビリ様、熱感、灼熱感、冷感、圧迫感、ザワザワする感覚、何かが張り付いているような感覚、などです。皮膚に何かが触れる、あるいは軽い風でも増強誘発されます。
こうした痛みは原因となる脊髄の病巣が形成された後、1,2年間ゆっくりと増強し、その後はゆっくりと軽減しますが、消失しないこともあります。
現在利用可能な慢性疼痛の治療薬剤の主な物は、リリカ、トラムセット、サインバルタ、MデュロップMTパッチ、MSコンチン、メキシチール、ノイロトロピン、種々の非ステロイド消炎鎮痛剤などです。担当医と相談しながら、容量、使い方を決めます。
しかし、痛み以外の異常感覚、不快な感覚に対する治療薬は治験などで開発されたこともありません。過去にスモン病での下肢先端の異常感覚を交えた痛みに、ノイロトロピンが一定の効果があることが治験で証明されたことはあります。
一般に、疼痛が長期に継続し慢性化しますと、原因疾患に関係なく、治療は非常に困難になります。痛みの感覚を増幅する神経回路が形成され、増幅されるといわれています。疼痛を意識し、怖がって、そこに意識を集中すると、そうした回路形成が進みやすいとも言われています。
うつ病の素因のある方で慢性化しやすいのも事実ですし、疼痛がうつ病を誘発します。うつ病がでてきますと痛みが重症化することが多いので、精神科でしっかりとした治療を受けることも大切です。
アクテムラの痛みに対する効果は、現時点では評価が確定していません。再発抑制効果はありそうですが、他にも有効な薬剤が色々あります。 (2015/6/8現在)
A: 多発性硬化症の再発で痛みだけが出ることは、殆どありません。MSの再発でないのに、痛みの治療としてステロイドのパルス点滴をすることはありません。
ステロイド大量点滴は神経線維の異常興奮性を一時的に安定化させますが、1週間程度で元に戻り、効果は消えます。痛みが一時的に軽くなることもあります。そうした短期間の効果のためにパルスを実施するのは、副作用もあり得ますので、間違いです。
痛みの治療薬は、色々あります。痛みの性質、持続性か、電撃様か、広がりは?などにより使い分けます。トラムセット、リリカなどは効果が高く、良く使われます。副作用もありますので、診察をした上で、医師が処方を決めるべきものです。
全身性の慢性疼痛はMSが引き金になってはいても、一度慢性化すると、MSとは独立し、あまり関係が無くなっていると考えられます。治療は、容易ではありません。専門のペインクリニックを受診することをお勧めします。
(2015/5/21現在)
A: (1)痛みについて
MSで疼痛がでることは珍しくありませんが、ほぼ全身の強い痛みが、長期にわたり出ることは非常に稀です。私の1000人ほどのMS患者さんの中に、胸部以下、特に両下肢の慢性疼痛がある方が1人おられるだけです。
最も可能性のある診断は、MSによる足の痛みと異常運動(ジストニー)から始まった、あるいは誘発された、「複合性局所疼痛症候群」の合併です。これは、交感神経の過剰な活性化が関っていると考えられる慢性の強い疼痛です。明らかな先行した損傷がなくとも発症することもあります。MSに誘発されて生じた第二の病気ということになります。
発汗の異常を伴うことが多いのですが、いかがでしょうか?
また、MSは中枢神経(脳、脊髄、視神経)に病巣ができる病気で、痛みを感じる神経に障害ができることもあります。脊髄、脳幹の後部にある感覚神経、大脳の中心部の視床などです。
首以下の全身の痛みがあるとのことですので、頚の上部の脊髄や視床に病巣がある可能性が考えられます。MRIではどうでしょうか。
MSで痛みだけの再発(新規の病巣の出現や、病巣の拡大に伴う悪化)が起きることは稀で、感覚鈍麻の出現や拡大、運動障害など、その他の症状があるのが普通です。
MSの再発、増悪ではないなら、ステロイドパルス点滴治療は行いませんし、効果もありません。
痛みの治療には、記載されているもの以外にもあります。ペインクリニックを利用することもあります。
(2)MS診断について
元のMSの診断が正しいかどうかは、文章から判断することはできません。これまでの詳しい症状の経過や脊髄液の検査結果、MRIでの病巣の特徴などの記載が必要です。神経内科の先生の診断でしょうから、正しいのだろうと推定するしかありません。
一般に再発がある再発緩解型MSの方が多いのですが、MS全体の5%程度の方は最初からゆっくりと症状が進行する一次進行型MSであり、その可能性もあります。進行型ですと、再発が全く無いこともあります。担当医の病型診断はどうでしょうか?
(2015/5/11現在)
A: 強いシビレ感を我慢することで身体に影響があるか? との質問です。
身体的には通常は影響ありません。しかし、苦痛を我慢していることで、集中力や能率の低下が生じたり、鬱を誘発するなど精神的な影響がでる可能性があります。
テグレトールの副作用は服用直後に多いフラツキ、めまい、眠気などですが、ゆっくりと増量すれば、殆どの方で問題無く服用可能ですし、妊娠中にも服用可能です。
稀ですが重大な副作用としては、アレルギー反応による皮膚、粘膜の激しい炎症、劇症肝障害などがあり、極く一部では死亡に至る場合もあります。
症状は、初期の全身の皮膚にでる多数の小さな発疹とかゆみが殆どで、そうした場合、その段階で使用を中止することが大切です。採血検査で肝機能値が上昇する場合もあり、やはり即座に中止します。殆どが服用開始から6ヵ月以内に発生し、長期服用ではほとんど出ません。
こうした副作用の発生は服薬の量とほとんど関係がありません。
貴女の場合、睡眠前の1錠(100mgと200mgがあるが)で効果があるとのことですので、朝に1錠(100mg)を追加することで問題が出る可能性は低いと思います。
半錠を飲むこともあり得ます。フラツキ、眠気などが出れば、中止すれば良いのであり、我慢したり、恐れる必要は無いと思います。服用開始からすでに6ヵ月を超えているのであれば、上記の重大な副作用を心配する必要はほとんどありません。
プレドニンとテグレトールの服用時間を離す意味は全くありません。無関係です。 副作用では、むしろプレドニンの長期服用での問題を恐れるべきでしょう。1錠5mgと1mgがありますが、服用量が5mg以上で長期となれば、副作用はほぼ必発です。
(2015/10/26現在)
A: 痛みはNMOの後遺症で下肢運動麻痺、失明に次いで頻度の高い重大な障害です。残念ながら、再発防止法の有効性の高さに較べて、後遺症としての痛みの治療法はまだまだです。
痛み治療法には次の(1)〜(6)がありますが、通常は(1)の薬物療法が殆どです。
痛み治療法
(1)薬物療法
@NSAIDs(ジクロフェナク、ロキソプロフェン、セレコキシブなど)(ロキソニンなど)
A三環系抗うつ薬やプレガバリンといった神経伝達物質阻害剤(サインバルタ、ガバペン、リリカ、テグレトール、クロナゼパム、メキシチール、ノイロトロピンなど)
Bトラムセット、デユロテップなどのオピオイド含有鎮痛薬神経ブロック
(2)理学療法
(3)鍼灸
(4)神経刺激療法(脊髄電気刺激装置設置)
(5)心理療法
(6)神経路切断手術
(1)薬物療法の中で、
@の消炎鎮痛剤NSAIDSは、筋、関節、歯痛、頭痛など末梢での痛みで有効ですが、中枢神経性疼痛にはほとんど有効ではありません。
A、Bの組み合わせが治療の主体となります。約10種類程度が良く利用されますが、選択順位は医師により一定しません。担当神経内科医が、一つ一つ効果と問題点(眠気やふらつきなどの副作用)を点検し、その患者さんにあった薬物を決めてゆきます。
利用した薬物、量、期間、その時期の効果、問題点などの正確な記録を残し、担当医と相談しつつ自分にあった方法を探すことが大切です。
効果の程度は患者さんにより様々です。かなり効果のある方から、少ししか効いていない方までおられ、ある程度は効いていて利用価値はあると言われる方が大半です。
ペインクリニックの麻酔科医師は癌や末梢の痛みに対するブロック術に精通しておられますが、NMOのような脊髄感覚路由来の痛みの経験は少なく、私のこれまでの経験では、あまり有効な対策の提案はありませんでした。
(4)の脊髄電気刺激装置装着でも有効だったのは5人に一人程度ですが、試みる価値はあります。脳外科やペインクリニックが実施します。担当神経内科医に相談が必要です。
その他の(2)、(3)、(5)、(6)でも私は効果のあった経験がありませんが、良い専門家と出会っていないことによるかも知れません。ペインクリニック医師であれば、専門家を紹介してくださるかも知れません。
これまでの痛み治療の記録を整理し、担当の神経内科医師とよくご相談ください (2015/10/26現在)
シビレ感のみが出現し、運動麻痺(力、運動能力の低下)や感覚鈍麻、排尿障害などの悪化を伴わない場合は、
ほとんどは再発(新しい病巣がでたり古い病巣が拡大して、新しい症状が出たりこれまで在った症状が増強する)ではありません。
こうした場合の多くは、かつての再発症状として感覚鈍麻がでた後で、回復過程にある時です。
ただ稀には、これまで何の感覚症状も出たことの無い身体部位にシビレ感のみが出てきて、MRIを撮ると、新しい病巣が見つかり、再発であったこともあります。
また、再発症状は24時間以上持続するのが通常であり、短時間で消える症状であることも、再発ではないことをしめしています
。
従って、貴方の症状の場合は、再発症状ではない可能性が高いと思われます。
ただ、これまでの経過、現在の全症状、MRIの所見など、全体像がわかりませんので、断定はできません。
A: (1)膝の痛みというのは、関節痛であるのかどうか。関節痛なら運動、起立、歩行や圧迫で膝や周辺の筋、腱が局所的に痛みます。 MSで下肢に運動障害があり、膝関節にも障害がでることがあるのは昔から有名で、シャルコー関節とも呼ばれることがあります。 シャルコーはMSという病気を発見し、定義した19世紀のフランスの著名な医師です。
(2)関節痛では無い場合は、過去や現在に膝を含み感覚の鈍さがあって、後でその部位に痛みなどの異常な感覚が出現する場合で、これもMSに特徴的です。
感覚鈍麻が改善し、感覚が戻りつつある時に、しびれ感や痛みがその一部にでることが多く、1〜2年間、次第に不愉快な痛み、しびれ感などが、強くなることがあります。
これはいわば後遺症ですが、自分の体が感覚の鈍さを、感覚がわかるように修復作業をしているのが、下手で不完全に修復工事をしているためであると言えます。
神経線維の不完全な修復で、漏電や間違い配線が進行しているためです。
(1)と(2)の場合で治療薬が異なります。
A: MSやNMOにおける痛みは中枢性疼痛ですが、一般にNMOの方の痛みの方が強く、長期に続きます。
MSの方の痛みは一過性で消失することが殆どです。治療薬剤としては、テグレトール、リリカ、ガバペンがよく使われます。
筋のこわばりを伴う発作的痛みにはクロナゼパム(リボトリール、ランドセン)が最も有効です。その他の抗てんかん薬も使われます。
頑固で強度な時には、トラムセット、MSコンチンなどオピオイド麻薬類似薬を使うこともあります。
A: MSでもNMOでも、再発症状として痛みだけがでることは、あまり多くありませんが、全く無いわけではありません。
通常は、再発の症状であれば痛みの外に、同じ部位に感覚鈍麻が出現します。 するどい楊枝で皮膚をつついて、痛みが無い反対側の同一部位や、上下の部位での感じ方より感じにくいことはないか?
テイッシュペーパーで皮膚をさわり、感じにくさがないか? 冷たい金属を皮膚に押し当てて、冷たさを感じにくくないか? などを調べてください。
全く感じにくさが無かった部位に、感じにくさがでているのであれば再発が疑われます。
前回の悪化の時に感覚鈍麻があり、その後改善しつつある、あるいは改善した後、同一部位に、ジンジン感や熱感、不快な感覚、痛みなどが出現するのは、ほとんどは再発ではありません。
神経の修復が進行し感覚鈍麻を直しつつあるが、あまり上手に修復できず、信号の混線が生じ、シビレ感と痛みを生じることはNMOでは特に多い現象です。
従って、感覚鈍麻がでたことの無い部位に痛みが出ているのであれば、対応する脊髄の造影MRIの撮影を実施するべきです。
新病巣の出現や造影病巣の出現を認めた場合は、再発として治療するべきです。
もし異常がなければ、経過を観察することで良いでしょう。 痛みが強ければ、痛みを抑える様々な薬を利用するとよいでしょう。(2015/4/27現在)
A: 痛みの部位やその周囲で、感覚鈍麻、感覚の麻痺(触っている感覚の鈍さ、膜をはったようなわかりにくさ、痛みや温度が分かりにくいなど)がなければ、再発である可能性はほとんどありません。
泌尿器、整形外科など神経内科以外で、他の原因を先ず調べていただいた方が良いでしょう。
脳で痛みを感じますので、睡眠中に痛みを感じないのは当然です。強い痛みが有れば、痛みで目覚めることが有ります。 (2016/3/20現在)
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