MSの診断・治療 | 症状(痛み・しびれ感以外)[共通] |
NMOの診断・治療 | 痛み・しびれ感 [共通] |
抗MOG抗体疾患の診断・治療 | 再発・見分け方 [共通] |
MS/NMO/抗MOG抗体疾患いずれか不明の場合の診断・治療 | 妊娠・出産 |
リハビリ・回復の見込み・後遺症 [共通] | その他 [共通] |
2016/12/5更新
A: MS患者で、閉経や出産後のエストロジェンの血中濃度が低い時期には再発が起こりやすいとの調査結果が報告されています。 また、最近の別の論文ではエストロジェンは、MSの再発や増悪を軽減するとされています。
しかし未だ比較的少数例での報告ですので、今後の多数例での調査で確認して行く必要があります。
エストロジェンがMS再発を抑制するとしたら、どの薬剤の、どの用量が適正なのかなど、未確定です。
一方、MSの動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)に投与した実験では、病理像の改善が報告され、エストロゲンは神経保護的に働くと解釈されています。
我々の患者さんで、更年期障害薬を服用しておられる方が数人おられますが、特に問題は生じていません。ただし、どの方もフィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)、ナタリズマブ(タイサブリ)、インターフェロンなどの治療薬と併用しておられます。(2015/3/16現在)
A: 一卵性双生児で一人がMSになった場合、もう一人もMSとなる確率は、欧米での多数例での研究で、30%強と言われています。日本での私の個人的経験はもう少し多いです。
この結果から、MSの遺伝性は30%強であると言われています。一卵性双生児は遺伝的に全く同一人物で、ほぼ同じ育ち方をしているにも関わらず、70%近くはMSを発症しないため、遺伝以外の要因、即ち環境、具体的には感染症、日照時間、食事、その他様々な要因が影響している度合いの方が多きいわけです。環境因子は未だ、幼児期の日照(紫外線)以外は、ほとんど未知です。 一方、MSを発症し易くする遺伝因子は研究が進んでおり、200以上あります。女性であること、各種の免疫関連遺伝子など、多数あるのですが、1つ1つの影響は、MSになる可能性をせいぜい2倍にする程度ですが、多数の因子の組み合わせが、30%強を決めるということです。
日本人は一般にMSになりにくく、MSのなり易い遺伝子が少ないか、なり難くする遺伝子をもっていると考えられています。
日本人のMS患者さんで家族にもう一人MSのあるかたは100〜200人に1人、1%以下です。
3人以上がMSを発症した例は日本では聞いたことがありません。欧米人では数%−10%の患者で、家族に2人以上のMS患者があると言われています。
カナダでは一族に20人以上患者のある家系が報告されています。
従って、貴方の子供さんがMSを発症する可能性は非常に低いと言えます。相手が西欧人であれば、可能性が少しだけ高くなるかもしれませんが、
ほとんど心配する必要は無いでしょう。
A: NMOは放置したり、多発性硬化症とまちがっわれて治療されると、重い再発が生じ、後遺症が残ることが多い疾患です。
しかし、正しい治療を長期に受ければ、障害の進行がなく、通常の生活を維持できる可能性が大きい疾患です。
国内ではステロイドの点滴や経口薬だけで治療する医師が大半ですが、再発を充分に抑える量では副作用が出ます。
ステロイド長期使用の副作用は、肥満、動脈硬化の進行などは避けられませんが、高コレステロール血症、糖尿病、骨粗鬆症、白内障、緑内障、脱毛、白髪、吹き出物、にきび、その他があります。
ステロイドのみでの治療は、私はお薦めしません。副作用がほぼ必ず出現します。
「免疫抑制剤」といわれるお薬を使い、ステロイドは初期から少なく用い、次第に中止にもってゆきます。
この15年間、多数の患者様で利用していますが、適切な使用方法で、適切な注意をはらうことで、これまで副作用がでた患者さまはありません。
A: 結論的には、大丈夫と考えます。妊娠中に風疹感染があると、胎児に難聴などの奇形が発生する率が高いので、事前のワクチンは重要です。
先ず、一般にMSの方がワクチンを接種して再発が誘発されるか、活動性が増加するかについては、これまでいくつかの報告があります。 総合すると、ほとんど悪い影響は無いと考えられます。
一方、感染症や無症候の感染(検査でのみ感染が発見されるが、症状の無い場合)の後にMSの再発が増加しており、 感染はMSの初発や再発の誘因の一部であることは、多数の過去の報告で確かめられています。
従って、感染防御によりMSの再発や進行を抑制できる可能性があることを考えると、ワクチンを利用することを禁ずる理由はありません。
NMOの方でもデータや見解はこれまで報告がありませんが、私はMSに準じて対応しています。
今回は風疹ですが、現在の風疹ワクチンは生ワクチンです。生ワクチンとは軽い感染を意図的に起すことで、免疫を得るタイプのワクチンです。 健康な人では軽度の感染を生じさせても、通常は短期間で治癒し、効率良く免疫を得られるわけです。
その他のワクチンは不活化したウイルスや細菌を用いますので、感染は全くありません。
以下に列挙するものが現在日本で利用されている生ワクチンです:
BCG、ポリオ、麻疹風疹混合(MR)、麻 疹(はしか)、風 疹、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)、水 痘、黄 熱、ロタウイルス。
もし免疫が抑制されている時に生ワクチンを接種すると、弱い感染が本格的感染となり有害である可能性がありますので、 MSやNMOの治療として免疫抑制剤を利用している時には注意が必要です。
例えばステロイドのパルス点滴や経口の中等・高用量(プレドニン換算で5mg以上)、アザチオプリン(イムランなど)、 ミトキサントロン(ノバントロン)、シクロフォスファミド(エンドキサン)、高用量のシクロスポリン(ネオーラル)やプログラフ(移植用用量)やの治療中などは注意が必要です。
インターフェロン、フィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)、ナタリズマブ(タイサブリ)、BG12,低用量プログラフやネオーラル、 ブレディニンなどは免疫調整治療であり、一般的な免疫抑制効果は軽度と考えられます。
貴女のように少量のステロイド服用が2ヵ月前に終わった状態では、全く問題ありません。
A: 貴方に対応した保健所の担当者の説明は、大変不十分で、間違っています。担当の先生も誤解しておられます。
実際は月毎の自己負担が1万円以上の月が3回となった証拠書類をそえ、所定の追加手続きをすれば難病患者として認定されます。
保健所は特定疾患(難病)の初回申請書を提出した方のうち重症度が規定以下の軽症のために認定できないとの通知をする時に、
「軽症でも高額な医療の継続が必要な方は追加の申請により認定される」ことを説明することとなっています。
即ち、新制度では「医療費助成制度の対象となるのは、指定難病で@病状の程度が一定以上の方、
もしくはA高額な医療を継続することが必要な方」であると規定されています。
具体的には以下のように記載されています。
<高額な医療を継続することが必要な軽症者の特例>
助成の対象は症状の程度が一定以上の者であるが、軽症者であっても高額な医療を継続することが必要な者については、医療費助成の対象とする。
「高額な医療を継続すること」とは、月ごとの医療費総額が33,330円を超える月が年間3回以上ある場合
(例えば医療保険の3割負担の場合、医療費の自己負担が1万円以上の月が年間3回以上)とする。
フィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)などによる多発性硬化症の再発・進行防止の治療を受けられますと、必然的に上記の規定に該当し、
「高額な医療を継続することが必要な軽症者の特例」となります。初期の検査などだけでも上記の金額を超えることは多いと思います。
さらに、一定期間が経過しますと、以前に紹介しました「高額かつ長期」の自己負担上限額の対象者となります。
「高額かつ長期」とは、月ごとの医療費総額(自己負担ではない)が5万円を超える月が年間6回以上ある者
(例えば医療保険の2割負担の場合、医療費の自己負担が1万円を超える月が年間6回以上)です。
従いまして、比較的高い自己負担は短期間で終わり、上に書いた新難病制度の該当者になります。貴方が早期に治療開始できることを祈ります。(2015/3/25現在)
A: 関東甲信越以北の方でも無論受診できます。一度だけでの受信でも結構です。秋田、群馬、茨城、沖縄などから年に1〜4度、通院しておられる方もあります。地元の病院との関係など、事情により色々な方法がありますので、ご遠慮なく斎田に電話でご相談ください。
A: 国内、国外のいくつかの施設へ有償、無償の検査を依頼することができますが、信頼性、利用し易さに優劣があります。 しかし、ホームページ上で具体的な施設間の比較情報をお伝えすることは、公開された情報のある下記の一部の施設を除いてはできません。
神経内科の先生は、こうした情報をご存じでは無いことが多いと思います。
現在、内外の大学や研究所が無償、有償での検査を行っていて、各施設のホームページなどで、申し込み方法や、検体(血液)の送付方法、 患者情報の記載方法と条件、結果を知らせる時期、有償か無償か、などの情報を見ることができます。
検査の技術、実施方法が施設間で若干相違しますので、結果の信頼性(感度、特異性などで表現されます)に、かなりの相違があります。 施設の間の差異は、望ましいことではありませんが、互いに学問的に競争しているという側面があり、統一できていません。 患者様の正しいMSやNMOの診断が前提であり、そうした患者で陽性、陰性が何%であった、ということで比較が可能ですが、 ごく一部の大学はMSとNMOの診断基準が異なっており、混乱の原因ともなっています。
全国的に有名な検査会社が、かなり高い値段で健康保険が使えない検査を受託しており、だれでも依頼が可能です。 しかし、現在利用している検査方法はELISA法という方法で実施しており、
擬陽性(実際は陰性だのに陽性と報告される)と擬陰性(実際は陽性だのに陰性と報告される)例がかなりあることが判明していますので、 結局はより信頼できる検査を受け直していただくこととなりますので、お勧めできません。
A: 神経組織には中枢神経(脳、脊髄、視神経)と末梢神経(脳や脊髄の外側で、軟膜に包まれていない部分)があります。 末梢神経にはかなりの再生能力があります。末梢神経は切断されても、1日に1mmづつ、1月で30mm(3cm)神経突起(軸索)が伸びます。 中枢神経はわずかな再生がある場合もありますが、一般に神経細胞と突起の再生は殆どありません。 再生が出来ない仕組みを抑制、排除し、あるいは再生する能力を導入し、再生を可能にしようと、研究が続けられています。(2015/5/15現在)
A: MSにおけるウートフ現象とは、過去に出現した病巣の症状が表面的には消失しているか軽減しているが、病巣は未だ完全には消えておらず、体温が上昇した時に、隠れた残存病巣による症状が再度でてくる現象です。
体温を低下させれば、直ちに消失します。MSの再発や悪化ではありませんので、過度に心配する必要はありません。
風呂、サウナ、日照、湿度の高さ、高い室温などで、同じ症状がでたり、倦怠感が強くなったりする方がありますが、残存病巣が多く、平常の症状も重い方です。
過去にほとんど症状が出ていない方では、ウートフ現象がでる可能性はほとんどありません。 また、人間には呼吸、血流量の調節、発汗などによる体温調節機能が働いており、温度の高い地域で生活しても、ほぼ同じ体温が維持されます。(2015/6/13現在)
A: 温帯地方で1日に10分程度の日照を浴びれば、必要なビタミンDは体内で生成されるそうです。 MSの発症に母の妊娠中や小児期の日照が足りないことが発症要因となっていることは、明確に示されています。
北欧やロシアからイスラエルへ移民する場合、10歳までに移民した人ではMS発症は少なく現地での発症率となりますが、 10歳以上から成人で移民した場合、母国でのMSの高い発症率が維持されます。
また、成人女性でビタミンDをサプルメントとして服用していた人ではMS発症が少ないことも示されています。 しかし、発症後のMS患者が摂取したり、日照を多く浴びることで再発が減ったり、重症化が防げるかどうか、未だ明確なデータはありません。可能性はあると言えます。
日照は紫外線が有害ですので、適度として、サプルメントとして活性型ビタミンDをとることをお勧めしますが、効果を保障するものではありません。(2015/6/13現在)
A: 日本で利用可能な薬剤は、全てが保険適応です。しかし、保険では3割自己負担となるため、かなり高額となることもあります。 しかし、そうした負担を減らすための制度として、特定疾患の制度があり、視神経脊髄炎や多発性硬化症の方は、それを利用することが可能です。
過去、現在の状況により、制度の利用方法は一律ではありません。(2015/7/31現在)
A: MSの発症のリスクがタバコ喫煙をしている人では1.5倍程度増加していることは、反復する研究で確認されています。発症し易くなるということです。
発症しているMS患者さんで、喫煙を続けることが、MSの障害進行速度を速めることも、最近のスエーデンでの研究で明瞭に報告されています。
1日20本程度の喫煙はMSを考慮しないでも、発癌、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞、腎不全などのリスクを増大させ、平均寿命を10年短縮します。
また、無治療患者を含むMS患者さんでは、平均で約8〜12年の寿命の短縮があります(スカンジナビアでの3つの研究結果で、治療はあまりされていない時代を含みます)。
従って、タバコは一般に非常に有害ですが、MS患者さんでは一層有害であると言えます。こうした有害物を、税金を徴収するため政府が公認していることに大きな問題があります。何れ完全禁止の時代がくるでしょう。
禁煙外来を活用し、強い意志で喫煙を止めるようお勧めします。(2015/9/13現在)
A: 多発性硬化症と診断されたが軽症の場合は、成人の場合、長期高額医療が月単位で年3回以上必要であった実績を証明すれば、難病として医療費減免制度の対象となります。2015年から始まった制度です。3月は3割負担をし、高額医療であれば、一般的な高額医療費の減免制度の適用を申請することとなります。
子供の場合、こどもの医療費助成制度を各自治体が個別に定めています。年齢や、額などの条件が、自治体により異なっています。
京都市、府の場合は中学卒業までは、外来では月額3000以上までを自己負担し、それを超える自己負担額を市、府が負担します。
東京都であれば、中学卒業まで(?)は無料ではないでしょうか。
高校に入れば、同じ制度で減免される自治体は、一部に限られますが、住所地の制度をお調べください。
もし1月に治療を開始すれば、4月以後は大人と同じ難病の負担軽減制度の適用を受けることが可能です。
大きな病院の医療費の相談窓口や、市、区の福祉の窓口、保健所などで教えてもらえるはずです。最近に制度が変わり、複雑でもあり、神経内科の医師でこうした制度の詳細を理解していることは稀です。(
2015/12/2現在)
A: 明確な証拠のあるMSに有用な食べ物はありません 。
私は一般的な健康のために動物性脂肪の多い肉食を少なくし、魚や野菜、大豆などの豆、穀物を主体とした、バランスの良い食事をお勧めしています。
青い背の魚を多く食べることでMSの発生が少なくなる可能性が示唆されていますが、証拠は不十分です。その他の様々な食べ物とMSの関係でも同様です。「個人の経験です」との記載がサプルメントや食品で良くありますが、根拠としては大変弱く、専門家による科学的手法での評価では、いずれも証明できていません。そうした作業を省いたまま、営業のために宣伝している物がほとんどであり、信用に足りるものは存在しません。
ビタミンDの摂取、感染の防御が、MSに一定の良い効果をもたらす可能性があり、タバコ喫煙と非常に強いストレスは悪い効果があります。(2015/12/5現在)
万が一死亡されたとき、遺体を研究のために利用して欲しいとの希望は、崇高なもので、頭が下がります。
献体というのは、医学生の解剖実習への協力で行うものです。貴方の考えておられるのは、MSの原因追及、診断や治療の確度をあげるための、病理解剖への協力のことだろうと推測します。
病理解剖はどの病院でも可能ですが、そうした研究をしている医師に連絡をとることが望ましいでしょう。
(2015/12/5現在)
A: MS患者の海外移住につき、意見を聞いておられます。
恐らく小脳症状によるフラツキと会話のたどたどしさなどの症状が改善しない、周囲のMSに関する理解のレベルが低いなどの理由で、海外移住を考えておられるとのことです。
貴方に関する情報量が少ないので、意見を言うのは難しいです。
最も重要なのは貴方の語学力です。何語が喋れるのか、仕事ができるレベルの言語力があるのか、友人を作れるのか、既に友人がいるのか、などです。 会社で海外勤務の話がでたとのことですが、渡航先の国を貴方が選べるのでしょうか?
MS医療とサポート体制が進んでいて、健康保険制度の充実している国となると、カナダ、オーストラリアです。スイス、北欧、オランダ、ドイツ、フランスなども進んでいます。
しかし国により、外国人の移住には、色々な条件が有ります。病気があることが分かれば、移民としては受け入れない国が多いです。民間保険に入るのにも条件があります。移民後の発病であれば問題はありませんが。
私のMS患者さんの中で、過去に4人がオーストラリア、カナダ、アメリカへ移住しました。全員20台の若い女性で、MSは軽症で、あまり英語は上手ではありませんでしたが勇気がありました。現地で結婚し、帰国時にハーフの赤ちゃんを私に見せるために、訪問してくれた方もあります。
私は30代の時に米国に4年近く住み、順調に研究をし、大学での良い地位を提供され、家族全体で永住して米国人になるか迷った時期がありました。あのまま米国人になった方が良かったか、全く別の人生が開けただろうと思うこともあります。
移住、移民にはエネルギー、努力、勇気が必要で、そう簡単にできることではありません。
(2015/12/30現在)
A: カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、EU諸国、北欧諸国はいずれも日本と同様の国民皆保険制度でMS治療がカバーされています。英国は地域毎に予算で対象者に制限があり、治療開始に時間がかかることがあると言われています。 アメリカは企業が保険会社と契約しており、あるいは個人で契約をして、自己負担は殆どありません。
EU諸国、ニュージーランドなどではフィンゴリモド、タイサブリを第一選択で利用することが出来ません。主に予算の都合です。
個別の国で少しづつ違いがありますので、事前に詳しく調査することをお勧めします。
また、MSのような病気を持っていることが分かっている場合に、民間保険への加入に制限がある可能性があり、個別に調べる必要があります。 (2016/1/20現在)
A: MS患者でのMRI撮影検査の頻度、間隔については一律の決まりはありません。病型、過去および最近の臨床再発の頻度、MRI病巣発現部位とその出現頻度、治療内容と反応により異なります。
その他の社会的要因として、患者の多忙さ、病院でのMRI機器利用・撮影の容易さ困難さ、経済的条件、健康保険監査者の見解、国民医療経済の効率性の観点なども考慮に入れる必要があります。
国により、個人と医師により、実際には大きな差が有ります。
活動の高い場合に理論的には4週1回程度の頻度での脳MRI撮影が望ましいのですが、医療経済、時間と社会活動、個人経済などの制約とのバランスを考えると、研究以外では4週毎の撮影は過剰と判断されると思います。
貴方の場合、最近に再発(「違和感」のみの場合は必ずしも再発とは限りませんが)やMRIでの新病巣(脳?)の出現の確認があったようですので、再発が無くても当面は3月に1回程度の脳MRI撮影が望ましいでしょう。再発があれば追加することもありえます。
フィンゴリモド治療で多くの患者さんでは臨床、MRI活動の安定化が得られますが、全員でそうであるわけではありません。また、治療開始初期の3月ないし6月の間は、治療効果が100%とはならないことも考慮に入れる必要があります。
本薬服用中のリンパ球の数と感染症頻度、重症度の間には関連性が見られていませんので、よほどの減少でなければ服用頻度を減らす必要はありません。私の500名以上、8年間での経験でそうした方は有りませんでした。子供さんでも同様です。
(2016/2/30現在)
A: 急性虫垂炎、大腸ポリープはいずれもいわゆる腸内細菌とは無関係です。 EBウイルスやその他の感染症はMSの初発や再発の引き金として一定の関連があることが分かっていますが、詳細は分かっていません。
急性虫垂炎は腸の感染症ですが、MSとの関連に定説は有りません。
MSと腸内細菌との関係はまだ色々の学説の中の一つであり、関連をしめす明確な証拠はまだありません。一定の影響を及ぼしている可能性は有りますが、あくまでも可能性の段階です。
(2016/6/30現在)
A: MS患者さんの障害の進行速度についてご質問です。
その大学の先生が間違えたか、患者さんが間違えて記憶したかで、正確ではありません。
時間経過による障害の進行についての大規模な研究は、欧米人MSで治療法がほとんど無かった20世紀の患者さんでの研究しかありません。治療の無い時代の自然経過の観察です。
その結果の主な点は以下のとおりです。全て発病時(初めての症状=初発症状があった時)からの時間です。
50%の患者さんが杖1本が必要となる時期は15年後。
50%の患者さんが車椅子が必要となるのは25年後。
50%の患者さんが再発緩解型から二次進行型に変化し、障害の進行が持続するようになるのは10年後。
障害度がEDSS3(中等度の障害が回復しなくなった状態であり、他人が障害を認めることが出来るが、歩行は連続で1km以上可能)となると、その後杖1本が必要なEDSS6となるまでの時間はほぼ一定で5〜7年程度で、障害の進行が止まらなくなる。
MSの患者さんにとっては非常にショッキングなデータです。平均値ですので個人による差はかなりあります。
しかし、その後のMS再発、進行抑制治療薬の開発成功、利用の拡大により、状況はかなり変わっていると思われます。
私のフィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)の治療を治験が始まった8年前から利用し続けている多数の方たちは、ほとんどの方が全く障害の進行を認めていません。
1990年代の終わりごろから始まったインターフェロン(ベタフェロン、アボネックス)による治療しかなかった時期には、一定の割合で障害が進行してしまう方がありましたが、それでも上記の全く治療が無かった時代とはかなり違います。
ただ、治療開始時にすでに持続的な進行が始まっていた一次進行型、二次進行型MSの方たちの多くは、その後にも進行が続き、進行を止めることに成功しているとは言えません。進行速度が遅くなっているのではないかとは思えますが。
出来るだけ早い時期に効果の高い治療を受け、継続することが重要です。(2016/7/25現在)
A: 結論を先に申し上げますと、子宮頸がんワクチンとMSとの関連が有るとの証拠は全く存在しません。貴女が不安を感じる必要は全くないと思います。
多数の若い女性に子宮頸がんワクチン接種をした後に多発性硬化症が発生したとの報告を調べましたが、同年齢の一般女性でMSが発生する率より高率に発生しているという事実は確認できませんでした。
私の約1000人のMS患者さんのなかでは、子宮頸がんワクチンとの関連を疑わせた方、訴えの有ったかたは有りません。
MSは若い女性の方に多いので、ワクチンを実施した後で、様々な時間を経て発症したかたは間違い無くあるだろうと推測します。私自身で特に質問したり、調べたことはありませんが。
日本で特に問題になっているのはワクチン後の疼痛を中心にし、倦怠感などで登校できない女子学生が多いとの報道です。
これに対する医師の間の多数意見は、こうした症状は「身体表現性障害」(昔、ヒステリー性障害といわれたものとほぼ同じ)と言われるもので、女性に多い症状であるというものです。心因性とも言われ、社会、人間関係、環境などに対する心理的な反応に原因があると考えられます。
疼痛や倦怠感はワクチンを接種しなくても、身体表現性障害としてかなりの若い女性が訴えます。原因となる可能性のある身体疾患が見つからない時に身体表現性障害と診断します。
昔からそうした患者さんは主に女性に一定の割合で見つかります。多数の患者さんを診ている医師はそうした女性によく遭遇しますので、ワクチン後に特に増加はしていないと感じています。調査でもそうしたことが示されています。
(2016/7/30現在)
A: 診断が正しいのであれば、殆どの多発性硬化症の方は治療をするべきです。一定の約束事を守れば安全な治療が可能です。
担当の先生に、私へのセカンドオピニオンの資料作成の依頼をされてはいかがでしょうか。他の医師の意見を聞いてみたいとの依頼に対応するのは医師の一般的な義務です。病院としては推奨しているはずです。これまでの病歴、検査データ、MRIなどと、治療方針についての担当医の考えを記載してくださるはずです。 医師や病院は過去のデータを提供する義務がありますので、正式に申し込めば全ての資料の入手は可能であり、ご心配する必要は無いと考えます。
受診されたら、私の考え方を担当医師に報告させていただきます。
もしご希望であれば、一度診察した後、千葉県、東京都などでの適切と考える他の医師を紹介させていただくことも出来ます。 (2016/9/20現在)
TEL 075-468-8642
FAX 075-468-8657
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