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医療講演要旨

2015/6/13 全国多発性硬化症友の会/同東京支部主催の患者総会での講演の要旨です。

(テーマ)
 多発性硬化症の新しい治療目標NEDA-4:「疾患活動性・脳萎縮進行の無い状態の維持」

(ご案内)

多発性硬化症(MS)には再発期と緩解期があり、緩解期には疾患は活動していないと考えられた時代があった。しかし、MRIの導入・進歩により、緩解期と考えられた表面的に安定している時期にも新病巣の出現があり、いわゆる「再発」は氷山の一角であって、症状をださない脳新病巣の出現は「再発」数の平均で20倍程度検出されることが明らかとなった。

近年、①臨床再発を無くするのみでなく、②MRIでのT2病巣の蓄積増加の停止と、③造影新病巣出現の停止の3指標を維持する、NEDA (No Evidence of Disease Activity) (疾患活動性の根拠無し)の達成がMS治療の目標(goal)であるべきだと考えられるようになってきた。何よりも、ナタリズマブ(タイサブリ)やフィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)のような第二世代薬の利用が可能になり、NEDAは実現可能な目標となった。

最近はさらに一歩進んで、第4の指標④脳萎縮の進行の停止をも加えた、NEDA-4の長期維持を目指すべきであるとの考えが主流となりつつある。過去には脳萎縮はMSが長期化し重篤化した時にだけ生じる現象であると考えられた。しかし近年の研究では、脳萎縮の進行は病型や病期に関係なくほぼ一定であることが示された。即ち、MSの初期から、発病から時間が経過して進行型に変化した後まで、ほぼ同様の速度で進行していることが明らかとなってきた。水面下での脳萎縮の進行の蓄積が一定レベルに達すると認知症が出現するようになる。脳や脊髄の神経細胞は高度に分化しており再生能力に乏しい特徴があり、初期から神経細胞死を防ぐことが重要である。

NEDA4の実現には有効な治療を初期から積極的に導入することが必要である。残念なことに、日本神経学会のMS治療指針では、第2世代薬はインターフェロンの利用の失敗が明らかとなって初めて利用すべき第2選択薬と位置づけられている。第二世代薬は発病初期にこそ最も有効であり、適切な医師の指導により、多くの患者で初期からの安全な使用は十分に可能である。

関西多発性硬化症センターでの500名を超すMS第二世代薬使用の経験を紹介する。


斎田孝彦
関西多発性硬化症センター所長(京都民医連中央病院/大阪・入野医院総合めまいセンター)


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