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講演記録 講演者 斎田孝彦

多発性硬化症と視神経脊髄炎:
障害進行の無い治療を安全に受けるために

2018年10月22日 大阪府北ブロック広域講演会における講演内容です。  


MS/ NMOsd/ MOG抗体疾患の共通点:中枢神経グリア細胞の自己免疫疾患

まず、この3つの疾患に共通することはすべて自己免疫疾患ということです。

自己免疫疾患とは、自分自身の細胞を正しく認識する働きに異常が起きて、自分自身の細胞の構成分子を異物と間違って認識し、 免疫の機序で排除、破壊する仕組みが働いてしまう疾患のことです。

関節リウマチ、甲状腺機能亢進症、1型糖尿病、潰瘍性大腸炎などが頻度が高く日本でも有名ですが、その他多くの疾患があります。欧米ではMSも頻度の高い疾患です。

3疾患は、いずれも中枢神経(脳、視神経、脊髄)のグリア細胞(神経膠細胞)に対する「自己免疫」による破壊が生じる慢性疾患です。同時に神経細胞にも障害が生じると回復が難しくなります。

リウマチや肝臓などの病気との大きな違いは、中枢神経細胞は再生ができないという点です。
皮膚などはけがをして再生します。肝臓は手術で切っても増殖して元に戻ります。末梢神経の場合も再生して伸びていくことができます。けれど脳、脊髄の中で神経細胞は再生できません。

ですから、いったん神経細胞とその軸索が切断され消失すると、ほとんど再生修復ができないので障害が残り固定化します。
現在では障害が起きるのを未然に防ぐことが唯一の対策です。中枢神経の病気に共通する大きな問題です。神経再生医療の研究の発展が待たれます。



MS/NMOSD/MOG抗体疾患の基本的な違いは?

では、3つ病気の違いは何でしょうか。

MS
MSでは稀突起グリア細胞(オリゴデンドログリア)が標的として攻撃を受けます。
オリゴデンドログリアという細胞は、その突起が神経細胞の突起である神経軸索にとりついて、 細胞膜が布で包むように軸索の周囲をクルクルと回転して、20~50回ほど巻きつきます。その結果できる神経線維は電線とよく似たものです。
細胞膜が何重にも巻き付いてできた膜を日本語で“髄鞘”、英語では “ミエリン”と言います。
その髄鞘とそれを作るオリゴデンドログリアが免疫異常による攻撃で壊されるのが特徴です。

このように、攻撃される標的細胞や分子が異なり、免疫的攻撃のメカニズムも異なり、MRIでも病巣の特徴の違いが見つかり、 治療にも違いがあるので区別が必要ですし、区別可能です。

NMOSD
NMOSDでは、グリア細胞の一種である星状グリア細胞(アストログリア細胞)が攻撃を受け、抗体や補体の攻撃による破壊が主です。
アストログリア細胞は、星状の形をした細胞で、神経細胞やその突起の神経軸索を補助し、 栄養物、電解質を血管から受け取って神経細胞に渡したり、逆に廃棄物を送り出したりします。

この細胞の細胞膜表面に水分子を血管から細胞の中へ取り込んだり、送りだしたりするタンパク質であるアクアポリン4という分子が存在します。
NMOSDではこの分子を攻撃する異常な抗体が作られるため、アストログリア細胞が破壊されます。

MOG抗体疾患
最近は第3の疾患としてMOG抗体疾患が発見されました。
小児に多いのですが、大人にもあります。MS・NMO類似疾患100人に2人程度の頻度です(関西MSセンターでの経験)。

血液検査で抗MOG抗体が検出されます。攻撃されているのは髄鞘オリゴデンドログリアでMSと共通です。
抗MOG抗体疾患ではBリンパ球が作る抗体による攻撃が主体であろうと考えられています。Tリンパ球細胞による攻撃が主体のMSとは攻撃の機序がことなり、治療法が異なります。
急性散在性脳脊髄炎(ADEM)や視神経炎、脊髄炎(長い脊髄炎が多く、NMOに類似)で発症することが多い。
視神経炎反復、脊髄下部障害で排尿、排便障害を起こしやすい、などが特徴です。




3疾患の症状 一部に違いがあるが、ほとんど類似。症状だけでの区別は難しい

3疾患は共に脳、脊髄、視神経に病巣が出るため、症状が非常に類似しています。
そのため、症状だけでは完全に区別できないことが多く、最近まで専門医でも正確には区別できていませんでした。
疾患は異なっても病巣のできた部位が同じですと、同じような症状がでます。


従って、以下、病巣の出現した部位ごとの症状を説明します。

脊髄に問題が起きると、上下肢や体幹のしびれ感、感覚低下(鈍麻)、運動麻痺(脱力)や歩行障害が出ます。
また、排便排尿のコントロールに問題が生じ、我慢しにくいとか、出しにくいということが出てきます。

視神経に問題が起きると、視力低下や視野の異常を来たします。7、8割の方が眼球を動かすと目の奥の方の痛みを感じます。
ただし、痛むからと言って視神経炎とは限りません。頭痛、頸部痛の一部として、眼痛は非常に多いのです。

脳の下部にある脳幹という場所がやられますと、物が二重に見えたり、眼振がでたり、しゃべりにくくなったり、飲み込みが悪くなったりということが出ます。

小脳は脳幹の後ろ、後頭部の下にあり、障害されると、片足で立つなど、バランスをとることができなくなります。

大脳病巣の大半は症状としては自覚されることはありません。
脳の中で圧倒的にボリュームの大きい大脳は、精神活動の中枢です。

非常に働きが微妙かつ曖昧で、傷がついてもすぐにご本人自身が自覚できないのが特徴です。 脳の中の各部をつなぐ非常に複雑なネットワークがあるのですが、予備回路が事前に用意されています。
また可塑性といって他の目的の回路や予備回路を利用して、障害を代償したり、新規の回路を作ったりします。

このように大脳には大きな予備能力があるため、脳に病巣があっても異常はすぐには起きません。
これがMSで大脳に病巣が積み重なっていても、一定のレベルを超えるまで症状を自覚できない理由です

大脳の中でも、前頭葉は人間で特に発達しており、大脳の半分程度の体積を占める大きな器官ですので、MSの病巣も最もしばしば生じます。
前頭葉の働きは、我慢するとか抑制するとかいうことに大きな比重があります。

今自分が必要なところにだけ集中できるように、その瞬間にあまり重要でない神経のネットワークの働きを抑えるのです。
これにより、重要でない刺激に無駄に反応しないようにし、今必要な作業に精神の力を集中させ、持続させます。

長い先を見越して、企画・プランニングする働きもあります。時間や場所を判断する働きもあります。
前頭葉の働きは人間にとって非常に大事ですし高度です。残念ながら、こうした機能が何%かやられたとしても本人、家族のみならず、医師にもなかなか分かりません。



再発や進行の仕方

急性増悪、再発期:
3つの病気は共に多くの場合、比較的急に症状が悪化します。急というのは半日から1月でピークになります。
まれに悪化が連続して2~3カ月の間に症状が重くなることもあります。しばらく悪化が続いた後ゆっくりと良くなることが多い。
しかし元通りにならず、一定の後遺症を残すことが問題になってきます。

緩解・安定期:
かつては臨床症状の再発の無い、安定しているように見える時期を「緩解期」と呼びました。
最近では頻回のMRIでも新病巣の出現が認められない時期を、一応「緩解期」と呼びます。

しかし、MSでは(少なくとも無治療では)「疾患の活動が無い時期」、完全な安定期はほとんど無く、 症状を表しやすい部位に大きな病巣が出ていない時期であり、水面下では顕微鏡レベルの微細な活動が続いていることが分かっています。

NMOやMOG抗体疾患では再発と安定期が明瞭で、微細な活動の持続は証明されていません。

持続進行期:
MSの一部の方では急に悪化することが無く、1年以上にわたり持続的にゆっくりと悪化が続きます。これを持続進行と呼びます。


以下、3つの病気を詳しくみていきましょう。



多発性硬化症(MS)


どんな病気?


MSの患者さんが世界的に増えています。

日本では1970年頃には3000人程度だったMS患者数が、最近では1万5千人くらいになっています。世界各国でも同様に増えています。

なぜ増えているのか十分に分かっていないのですが、衛生状態が良くなっているということ、 太陽の光を女性が嫌うようになったこと、食生活の変化などが関係しているのではないかといわれていますが、明確な証拠はありません。

太陽の光は、MSにかなり影響があります。太陽の光は人間の皮膚にあたってビタミンDを作ります。ビタミンDは免疫にかなり影響します。
MS発症は太陽の光の少ない、血中のビタミンDレベルの低い地域に多く、MS患者さんの血中ビタミンD濃度が低いと、重い再発が多いことが分かっています。



MSがなぜ起きるか

と言いますと――血管の中をリンパ球が循環していますが、MS患者さんではそのリンパ球の一部が自分の体の一部を攻撃します。

すなわち、脳、脊髄、視神経の髄鞘(ミエリン)に特異なタンパク分子を攻撃するリンパ球が増えています。
この異常リンパ球は脳、脊髄、視神経の血管壁を通過して神経組織内へ侵入します。

そこで髄鞘タンパク質を見つけると炎症反応を起こし、髄鞘を壊します。軸索を覆っている髄鞘(ミエリン)が破壊され、軸索が裸になった状態を脱髄(髄鞘が脱げた状態)と言います。
こうして形成されるMSの特徴的な脱髄病巣をMSプラーク(斑)と呼びます

炎症が強いと、髄鞘だけの破壊でなく、その中に隠れている軸索も破壊・切断してしまいます。こうなると神経線維は再生できなくなります。

こうした攻撃には波があります。最初の臨床的症状が現れる増悪、2回目…と何回も再発が起こります。増悪、悪化、再発、発作など色々の呼び方がありますが、同じです。

増悪の後には一定の改善があることが多いのですが、改善の無いこともあります。増悪と増悪の間の安定しているように見える時期を緩解期と呼びます。
かつては緩解期には全く問題が生じていないと考えたことが有りますが、そうではありません。




臨床症状の変化を伴わない、水面下の病巣出現とMRIでも見えない変化の継続が主体です

治療してない自然の経過で、頻回にMRIをとりますと、(すぐには)症状を出さない病巣が症状を出す病巣の何倍もの頻度で出現していることが分かります。特に大脳では症状を出さない病巣が殆どです。

またMRIでは分からない細かい顕微鏡レベルの炎症や神経線維の変性、脱落もしばしば発見されます。一見正常にみえる部位にも顕微鏡レベルの病巣の出現が見つかります。

水面下で疾患の活動がつづいていて、血管の周りにちびちびと炎症が起きますが、症状にはなかなか繋がらないということが分かっています。

最近、神経線維の特異タンパク質であるニューロフィラメント(neurofilament L chain)の血液での測定が可能となり、MS患者さんでは、ほぼ常に神経の破壊進行が持続していることが明らかになりました。  

MSの治療でいくつかの大きな問題が残されています。
第一の問題は二次進行型への移行です。初期には再発の後に一定の回復期があるのが、平均で15年ほど経過すると、じわじわと持続的な進行が始まります。
再発を繰り返している時期は再発緩解期。止まらない進行がゆっくりと進みだすという時期を二次進行期というように分けます。
この二次進行が始まると、症状の改善がほとんど無くなり、ゆっくりと進行が続きますので厄介です。

第二の問題は、中枢神経の病気に共通する問題ですが、一度神経線維の切断が起きると、修復・再生できないことです。
髄鞘だけが壊れる脱髄では神経軸索が保たれていますので、髄鞘のまき直しが可能で、回復するんです。このためMSの初期には回復が良いのです。
しかし、炎症がきつく神経線維が切れてしまいますと回復しなくなります。MSの経過が長くなるとそうした切断された神経線維が次第に増え、回復しなくなります。

脳萎縮の進行も重大な問題ですが、これも神経線維の切断が次第に増えるために進行します。神経線維の切断の蓄積と脳萎縮の進行の速度の平均値は発病の初期から二次進行型になっても、長期にわたって、ほぼ同じです。

ですから症状がでていないから治療は必要が無い、何か問題が起きてきてから治療すればいい、という考えは間違っています。早期の治療開始が必要な一つの理由です。


MSの治療


MS治療の目標

従来の治療の目標は 「再発がない」、「障害が進行しない」、「MRI上で新しい病巣が出ない」という、3つを指標にしていました。
最近は、4番目の指標として「脳萎縮の進行がない」が加わりました。年に一回きっちり画像をとって評価し、萎縮が進行していないことを確認します。


全ての治療は早期にこそ有効性が高い

今ある薬はどれも初期にこそ効果が高く、遅れて10年、20年後に同じ薬を使っても効果が得にくくなっています。
初期であればあるほど効果は出やすいですが、一番の問題は、診断した時にもうすでに病巣が多数ある方が結構いて、 本当の初発がいつだったのかの判断がなかなか難しいということです。

関節リュウマチも自己免疫疾患でMSと共通点が多い病気ですが、関節の発赤腫脹、痛みで始まりますので容易に発病時期を確定できる点がMSとは異なります。既に有効性の非常に高い薬が10種類以上利用可能となっています。
そうした治療を発病時から(診断時からではない)2年以内に実施すれば活動が停止し、長期に安定化します。

MSでも同様である可能性が高いのですが、MSでは発病の時期が最初に症状が出るより以前で水面下であることが多く、確定できないため、証明が難しいことと、効果の低い治療薬を使う医師が多いのが現状であり、問題です。

症状が無いから、最近は再発が無いから、と効果の低い治療を続けるのは、せっかくの治療機会の時期を逃しており危険です。


MS治療薬の選択に進行性多巣性白質脳症(PML)回避が重要で可能

有効性の高いナタリズマブ(タイサブリ)、フィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)、ジメチルフマル酸(テクフィデラ)などのMS治療薬に共通する重大な問題点は、使用が長期になると、リスクの有る方の極く一部に、副作用として進行性多巣性白質脳症(PML)が発生することです。

PMLの発生頻度はタイサブリで多く、テクフィデラでは非常に稀で、薬剤により大きな差があります。個別薬剤毎の対策が異なります。
発症すると重大な障害をきたす可能性があるので、薬剤毎の防止策を知ることが重要です。担当医の知識、対応能力、熱意により大きな差がでます。
不十分な知識のために過剰に恐れて、リスクの無い方にも有効な治療をしない弊害が生じています。 正確な知識を持って回避することが大切ですので、以下に説明します。


PMLはJCウイルス(JCV)の脳感染症
PMLはJCV (John Cunningham氏から分離されたウイルスの意味) 感染者の極く一部でのみ稀に発生するJCウイルスの脳感染症です。
ウイルスに感染しているMS患者さんが長期にMS治療薬を利用していると稀に発生することがあるので、自分にリスクは無いのか、リスクが有るのならどの程度かを知ることが大切です。

JCVはもともとマウスのウイルスですが、日本人の70%程度に慢性的に感染しています。
口から感染すると言われていますが感染経路は良く分っておらず、感染を防ぐことは困難で加齢に従い感染率が高くなります。
リンパ球、腎臓など各種臓器に潜伏して感染し、尿中にも排出されていますが、障害を生じることは無く、人間と平和共存しています。健康人では脳に感染することはありません。
通常はTリンパ球がJCVウイルスが脳の血管内皮を通り脳内へ感染するのを防いでいます。
一部のMS薬はこの作用を低下させ、脳へのJCV感染を起こす事があるようです。

PMLを発症している脳に感染しているJCVを調べるとウイルスが変異(変化)していますので、そうした変異したウイルスをもっている稀な方でのみ脳への感染が起きるのではないかと言われています。

JCVウイルスは脳のオリゴデンドログリアに主に感染します。オリゴデンドログリア細胞はMSの免疫攻撃標的となる細胞で脳の白質に多く存在しますので、MSと同様に脳白質に病巣が主に出現します。


MRIによる無症候PML病巣の早期発見で発症防止が70%で可能。遅れた診断が後遺症をもたらす
リスクの有る場合は専門的MRI撮影を3月毎に実施することが重要です。
フレア法MRI撮影で、無症状のPML脳病巣を発見する事がほぼ可能。症状の無い段階で治療を中止することで70%は発症せず治癒すると言われている。ただ、進行が速い例外もある。

脳神経内科の多くの医師にとっては稀な疾患であるので知識に乏しいことが多い。これまでMS治療中に発生した例のほとんどでは、定期的なMRI撮影ができておらず、早期発見、早期診断がされず、治療が遅れることが悪い結果や死亡につながってきた。
正確な対応、予防が重要であり、万一PMLが発生しても早期診断により症状・障害の出ない結果に止めることが重要である。


MS治療中発生したPMLへの対応
PMLが発症すると、現時点ではMS治療薬使用を中止除去することが最大の治療であり、他に明確に有効な治療はありません。
治療薬が体内で減少あるいは除去されると自らのTリンパ球が感染JCVウイルスを強く攻撃できるようなりますが、数か月間進行が続いた後、進行が停止して回復に向かいます。しかし重大な後遺症を残すことが多い深刻な副作用です。

PMLは白血病やHIV感染でも発生するが、免疫能を正常化することが困難であることが多く、治療困難で死亡例が多い。

MS治療薬で発生したPMLは原因となった治療を中止することで、4月程度後で進行は停止する。
タイサブリ点滴やフィンゴリモド服用中止の3,4月の後に進行拡大は停止し、回復に向かう。リハビリテーションが重要。重大な後遺症が残ることが多い。発見が遅れれば死亡もあるうる。

PMLで障害が残るリスクに較べて、MSの再発や進行のリスクの方が可能性が高く重大と判断し、JCV抗体価が高くても治療を継続する方もあります。
安全性確保の問題は、医師の診断能力、システム、熱意が大きく影響します。

以下有効性の高い順番に現在利用可能な治療を紹介します。




ナタリズマブ(タイサプリ)

これは2014年の夏から利用できるようになった、最も効果の高い治療です。
関西多発性硬化症センターではこれまでに約250人以上が治療を受けておられます。

4、5週に1回、外来で1時間の点滴を受けます。
効果出現は最も早く、ほとんどの方が全く再発を経験せず、障害の進行もなく、非常に有効性の高いMS治療薬です。
しかし、使用開始から半年以内に約2%で中和抗体が持続出現し、注射時に不快なアレルギー反応が出ることが多く、治療効果が無くなります。中和抗体は検査で調べることができます。

治験に関西多発性硬化症センターから50人の患者さんが参加され(全国で110人)、現在も多数の方が治療を継続しておられます。専門的な指導で効果の高い治療を続けることができます。

ナタリズマブ(タイサブリ)4週間隔点滴継続中のPML発生リスクは治療期間と抗体値で変化する
この治療の最大の問題は、4週毎に点滴を継続していると、JCウイルスに感染している方に限り、進行性多巣性白質脳症(PML)という脳疾患が稀に発生することであり、対策が重要です。
何年間安全に治療が可能かを判断し、計画を立てることで安全な治療が可能です。

抗体インデックス 治療期間とPML発生頻度の関係  表1
 JCV抗体  治療期間  PML発生頻度
(過去に免疫抑制剤利用がない場合)
 <0.6    リスクほぼ無し
≧0.6    2年  1/5000人
 3年  1/2500人
 4年  1/2000人
>0.9    1年  1/3300人
 2年  1/1250人
 3年  1/500人
  >1.5  1年  1/2000人
 1.5年  1/>500人
 2年  1/400人
 5年  1/100人

上記の表(2016年9月改訂)は、全世界で多数例を対象とし継続された治験対象者から集められた詳細なデータで再評価し計算し直した結果であり、従来の数値と若干の違いがある。 過去に免疫抑制剤を利用している場合、リスクは上の表の2倍になる。最近の国内での経験からは、フィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)治療から直接にナタリズマブ(タイサブリ)治療に移行した場合も同様であると推定される。進行速度や時期も早まる可能性がある。


表1にあるように、抗体インデックス値と治療期間の組み合わせで、PML発生のリスクが大よそ推定可能です。  JCウイルス抗体陰性ならリスク無く利用が可能です。治療中にも6月に1回、反復して陰性であることを確認します。 JCウイルス抗体陽性(感染が有る)で低値の場合、安全な利用開始が可能です。6月後の再検査で陰性化することもあります。

JCウイルス抗体価の高い人でも1年間は安全に治療が可能と言われています。治療開始から1年を経過すると、PMLが稀に発生するようになり、長期継続でそのリスクは高くなります。
このため抗体インデックス値によって、治療を1年や2年で中断する選択も可能で、副作用の可能性をほぼ回避できます。途中で治療を変更し、発病早期などに期間限定で効果の高い治療を受けることが可能です。


ナタリズマブ(タイサブリ)6週間隔使用でPML発生を回避可能
2018年2月の米国MS学会で全米の過去15年間のタイサブリ使用者全例の点滴間隔とPML発生頻度の解析結果が発表され、点滴を4週毎でなく6週毎に実施していた例では1例もPMLの発症が無いことが報告された。

6週毎点滴治療中の再発率も4週毎点滴例と差が無かった。
関西多発性硬化症センターでは、70例以上の方で6週毎の点滴を続けており、PMLは発生していないし、再発も1例を除き経験していない。再発があったかたは、4週間隔でも再発のあった稀な例のみです。



経口治療薬・フィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)

経口薬(1日1カプセル服用)で、商品名はジレニアとイムセラの2つありますが、全く同じ製品です。注射の痛みや、インターフェロンで必発である発熱倦怠などの副作用もありません。
効果はインターフェロンやコパキソンの2倍あるいはそれ以上と高い効果があります。

早期から脳萎縮進行を抑える効果が証明されているのは本剤のみです。
関西多発性硬化症センターでは、これまでに670人以上が使用し、85%以上の方が長期に服薬を継続し、ほぼ再発が無く、障害進行が停止、改善しています。一部で再発進行があり、タイサブリなどへ治療を変更します。

リンパ球数の血中での低下を理由に服用量を減らす医師がいますが、効果の低下、消滅が報告されている一方、科学的な方法での有効性は報告されていません。体重に応じた一定以上の減量は根拠の無い不完全な「治療」であると言えます。


フィンゴリモド使用中のPMLと年齢
本薬でも最大の問題は長期使用の抗JCV抗体陽性者に限りまれに出るPMLです。
国内で1年半の間に4名発生が報告されました。抗JCV抗体陽性者が2年以上フィンゴリモドを使用した場合、最大で400人に1人PMLが発生すると計算されます。欧米人で同じ計算をすると最大で4500人に1人程度の発生頻度ですので、日本人ではかなり高い可能性があります。この理由は不明です。ただ、この1年半は発生していませんので、偶然に多く発生したが、実際は欧米と同様である可能性もあります。

全世界で22名(2017年12月)PMLが発生していますが、殆どは2年半以上継続使用して発生しています。1名のみは18月で発生しています。従って、ほぼ2年以上の使用でリスクが始まると考えられます。  PML発生は年齢と関係があります。19名のうち36才が1名、40-45才が1名、17名は45-70才と高齢に多い。これまで35才以下では発生していない。


その他の問題
実際の問題発生は非常に稀なものですが、医師の正確な知識と正しいフィンゴリモド専門指導とにもとづき、一定の注意を払い、問題があった場合に医師への迅速な連絡、医師の適切な対応が大切です。
リンパ節から一部のリンパ球が血管の中へ出てゆくのを抑制しますので、血液中のリンパ球、白血球が減少しますが、感染症一般は増加していません。この点を過度に懸念する医師が多いのですが、適切な感染症への対応を正確に実施する事で重症化を防げることが殆どです。薬の副作用によると判定される問題はほとんど起きていません。

関西多発性硬化症センターにおいてフィンゴリモド治験に参加し、治療を継続した35人のうち、ほとんどの方は、すでに8年前後の治療を続け、安全に通常生活を送っておられます。障害度(EDSS)が進行した人はほとんど無く、障害の平均値が治療開始時の約1/2と改善が得られています。

軽度の肝機能検査値の上昇が30%程度の方で時々見られるのが最も頻度の高い問題です。症状はでません。数値が高ければ、肝臓保護薬をのんでいただきますと、多くの方では問題がなくなりますが、一部の方では他の薬に切り替えます。中止で元に戻ります。脂肪肝、アルコール肝障害があると異常値が出やすい。

年間に4万人に一人程度でクリプトコッカスなどのカビの感染・髄膜炎での死亡があります。ほとんどは寝たきりの重症の方ですので、そういう方には注意が必要です。

帯状ヘルペス発生と軽度の肺炎が一般に比べて2倍程度多い可能性があります。いくつかのウイルス感染の事前の抗体検査を実施します。稀に見つかる免疫が無い方にはワクチンを実施します。

皮膚の癌とリンパ腫がやや多いことが確認されており、皮膚の異常に注意を払い皮膚科を年に1度は受診することが勧められています。しかし欧米人では皮膚癌は日本人の7倍多く、紫外線を浴び過ぎないよう警告されています。

こうした非常に稀な副作用の可能性を理由にMSの水面下の進行を無視することは、より危険であると言えます。しかし適切な対応、防御処置は大切です。



経口薬ジメチル・フマル酸(テクフィデラ)

2017年2月に日本でも利用可能となった経口薬です。
関西MSセンターではすでに350人以上の患者様が利用されました。
欧米では4年になり、現在、世界で最も多数、約25万人が利用している薬です。
効果はフィンゴリモドよりやや低いが、自己注射薬に較べると差は明瞭で、高い有効性があります。
妊娠が分かれば治療を中止することで、安全な妊娠、出産が可能です。

最も多い副作用は、顔面、頸部、手などの火照りで、約70%が経験します。治療が不要な場合が多く、1,2月で消えるのが普通です。アスピリンが有る程度効果が有ります。
次に多い副作用として、腹痛、吐き気、下痢などを経験するかたが15%程度ありますが、1,2月でほぼ消えます。有効な薬剤が有ります。
250人の内で皮膚発赤のため2人が治療を中止しており、中止で症状は消えます。 医師の正しい知識、指導が重要で、脱落を減らせます。


ジメチル・フマール酸(テクフィデラ)服用中のPML
海外での発売から4年経過し、25万人服用した中で5人発生しています。
約2年前頃、1年にわたってリンパ球数がほぼ500を切っている場合に限って発生していることが判明し、6ヵ月連続でリンパ球数が500を切ると中止を勧告する、6ヵ月連続で800を切った場合は、継続するかどうか真剣に考えるようにとの注意が出されました。

こうしたリンパ球数の継続した低下が起きるのは、全体の2%程度であり、簡単に発見するこが可能です。本薬はリンパ球数の長期モニターをつづけ注意をはらえはPMLの回避がほぼ可能と考えられています。

この警告が医師に周知されてからは、1名(5例目)発生の報告があったのみです。この5例目は警告を順守せず、リンパ球数測定が余りされていなかったが、測定された数値は500を切るものでした。



インターフェロン(アボネックス、ベタフェロン)

日本では2000年から使用可能に、北米、ヨーロッパでは1993年から利用可能になりました。
過去のデータが多いので効果評価の基本となる治療薬ですが、その後の薬と較べますと効果が低く問題も多いと言えます。
2種類あります。

一日おきに打つもの(ベタフェロン)と、週に一回のもの(アボネックス)とがあります。効果はほぼ同じです。

治療しなければ1年間に平均1回再発が起きるとしますと、30%程度再発数が減ります。ただこれは平均値ですので、 分析しますと、3割の人では良く効いて再発がほとんど止まりますが、3割の人は全く効きません。
中間の4割では不十分だが一定の効果があります。全体を平均すると再発が年に30%減少します。逆に言えば、70%の人ではわずかの効果しか期待できない治療です。

治療開始初期には発熱、倦怠感がほぼ必発であり、過半数の方では数か月で消失しますが、消失しない方がかなりあり、脱落の原因になります。鎮痛解熱剤を併用することで、ある程度発熱、倦怠感は減少します。

ベタフェロンでは皮膚反応や硬結、皮下石灰化、壊死などが起きることが有ります。




グラチラマ―酢酸塩(コパキソン)

日本で2015年12月から利用開始になった治療法ですが、欧米では20年以上前から利用されてきました。
安全性が高く、検査での異常値などもほぼでないのが特徴です。

しかし、インターフェロン同様に、再発が平均で30%程度減少と効果が低いのが最大の欠点です。
インターフェロンとの違いは、患者による効果のばらつきが少なく、ほぼ全ての人で30%程度再発が減り、特に良く効く人や全く効かない人が無いと言われています。

第二の欠点は毎日の自己注射であり、1ml打つのでインターフェロン以上に痛いと言われています。



将来のMS治療薬

二次進行型MSの進行防止効果のある経口薬「シポニモド」は国内も含めた治験も終了し、1年以内に利用が開始されると予定です。欧米では2018年10月に承認が決定されました。日本では2019年秋の承認が期待されています。

一次進行型MSに対し「オクレリズマブ」点滴が、進行抑制に有効であることが証明された唯一の薬剤です。欧米では利用が開始されています。国内試験が計画されています。

非常に有効性が高く、欧米では利用されている「アレンツーツマブ」治験も計画されています。5日間点滴し、1年後に3日間点滴し、その後4年間は投薬は不要です。

有効性と安全性の高いオファツムマブ(Ofatumumab)治験が2018年3月に開始されました
海外で2017年に使用が承認されたオクレリズマブをさらに改善した新薬です。欧米でのデータでは非常に効果が高く、PML発生の報告が無い有望な治療です。



視神経脊髄炎スペクトラム疾患(NMOSD)


どんな病気?

NMOSDの最大の特徴は、アクアポリン4抗体が血液に出現することです。

アクアポリン4とは、アストログリアという脳、脊髄、視神経のなかにある細胞の膜に発現しているタンパクです。
アクアというのは水で、ポリンというのは穴のことです。水を外から取り込んで中へ入れる、あるいは中の水を外へ出すという通路ですね。非常にエネルギーが少なく、効率良く水を出し入れできる仕組みです。この分子をアクアポリン4と言います


この分子に対する抗体が脳などに侵入し、アストログリアを破壊するのが、NMOSDという病気です。
従来は視神経脊髄炎NMOと言っていました。視神経脊髄炎とは、視神経炎と脊髄炎の両方があるのが前提で、診断の基準の中心でした。
しかし、そういう患者さんは、アクアポリン4抗体陽性の患者さんの中の半分くらいにしか過ぎません。
視神経炎と脊髄炎の両方持っていない患者さんが結構多いんです。脳だけの症状の方もあれば、視神経炎だけ、脊髄炎だけ、という方もいて、こういう方は視神経脊髄炎の呼び名は付けられません。

それで、これと同類の病気ということで、全部揃ってなくても、何か一つ中枢神経の症状があればもう同じですという意味で、スペクトラム疾患というように枠を広げました。
学問の世界での呼び名が変わったのですが、日本では行政が視神経脊髄炎という言葉を使っていますので、今後どうなるか分かりません。

視神経脊髄炎の患者さんは中高年女性に多く、男女比は1:10で、女性に多いのが特徴です。




NMOSDの診断

脊髄のMRIで特徴的な所見があり、3椎体以上にまたがる脊髄の中心部の長い病巣が認められます。

このMRIの見方や観察の仕方が大事で間違いが多いのです。横切りで細かく見る必要があります。 たくさんの横切りの、どの横切りでも連続して上から下までずっとつながっているということと、6割以上のスライスで真ん中に病巣があるということが大事です。
その辺の判定が難しく、間違いが多いです。

また、血液中の抗アクアポリン4抗体が8割くらいの患者さんで陽性です。
2割くらいは抗体が陽性でない患者さんがおられますが、その場合はこの長い脊髄病変だけが診断の頼りとなることがほとんどです。




NMOSDの治療

ほとんどの患者さんで、現在ある治療で、充分にコントロールが可能です。


急性期、悪化直後の治療

MSと全く同じで、ステロイドパルス点滴です。これの効きが悪いと思ったら、できるだけ早めに血漿交換を行います。
MSの場合も同じ治療をしますが、残念ながらMSの場合は血漿交換療法は43%で有効で、57%は有効ではありません。やってみないと分からないんです。

それに対して、視神経脊髄炎の患者さんは早期に正しい技術でやれば必ず効きます。
ですから視神経脊髄炎で、もし重い再発があるのなら、最初からこの治療をやるべきです。

パルス療法も効くことが多いですが、パルス療法を1ヶ月近くやって、やっぱりだめだったから血漿交換法をやろうかという時にはもう効きません。
ですから判断を1週間目から10日目までの早い段階にするべきです。非常に重い再発が来たら、最初から同時にやることが大事です。



長期的再発予防の治療

長期療法で再発が起きないための治療には、ステロイド(プレドニンなど)が一般に使われ、良く効きます。これは短期的には正しい治療です。

しかし、良く効くが、有効な量を飲み続けると副作用が必ず出るのが大きな問題です。長期に続けると副作用がでるので量を下げると、また再発が起きる、そこが一番問題です。 どうやってそれを避けるかということが大切です。



ステロイド(プレドニン、副腎皮質ホルモン)の副作用

いろいろあります。
骨粗しょう症、肥満、糖尿病、高脂血症、動脈硬化、高血圧、感染症が増える、ニキビや皮膚の疾患の増加、白内障、緑内障などです。 個人差もありますが、やはり一定の量以上使えば必発です。

以前はステロイド単独で再発の有る時にやむを得ず免疫抑制剤を追加して併用することが行われていました。
単独で再発を経験しながら、仕方がないから使ってきました。日本では未だそうした方針の先生もおられますが、それは間違いです。



効果も安全性も高い免疫抑制剤治療

我々のところでは12年前からより安全で有効性も高い独自の治療薬を用いています。初発時や増悪直後には、最初から独自の安全で効果の高い薬剤とステロイドを使い、ステロイドは半年くらいで中止します。
そうすれば副作用はほとんど問題になりません。大体9割の方が上手くいき、一部で再発が起きる方もありますが、重い再発は殆どありません。

免疫抑制剤には色々あり、安全で効果出現が早いものを選ぶことが重要です。長期に有効かつ安全に使うノウハウがあり、知識と経験が必要です。

一部は妊娠中にも安全に利用可能であり、我々の経験では妊娠、出産、出産後に全く問題が有りません。

アメリカでこの病気を見つけた大学(メイヨークリニック)では、再発ではない時には免疫抑制剤だけで治療を始め、プレドニンは使いません。
急性増悪・再発の直後であれば、プレドニンと免疫抑制剤(アザチオプリン・イムラン)を同時に開始します。そして1年程度で免疫抑制剤のみとします。
アザチオプリン・イムランの欠点はやや再発が多く、充分に効果が出るのに半年近くを要し、核酸に作用するために時に脱毛、白血球減少、感染、癌の軽度増加などの副作用があることです。安価で保険が利用し易いためよく利用されます。




NMOSD新薬の治験

トシリズマブ(アクテムラ)に治験の結果が発表され有効性が証明されました。2018年後半には使用が可能になることが期待されています。
その他にも効果の高い新薬治験が行われていますので、必要な方は希望により受けられます。
しかし、すでにある薬で再発が止まる方がほとんどであり、治験が必要な方は非常に稀です。



日常生活で勧めたいこと

「日常生活で勧めたいこと何かありませんか?」「役に立つ食べ物はないですか?」などと、いつも患者さんから聞かれます。

心の平安、笑いのある生活が第一に大切です。免疫には人間の感情が非常に影響していて、免疫の働きを安定化させます。

太陽の光のところでお話ししましたビタミンDは大事です。ビタミンDをサプリメントで摂るか、薬として出すことも可能です。再発が減る効果も報告されています。
アメリカの看護師さんの研究で、ビタミンDを摂っていない人でMSの発生率が高く、飲んでいる人は発生率が低かったのです。
インターフェロンのMS治験で、血中ビタミンD低値の方では重い再発が多かったことも分かっています。

患者さんから、「この食べものを食べれば免疫が活発になると書いてあったが、有効か?」「免疫を抑えるというサプリメントがいいか?」「 さるのこしかけはどうか?」 などいろいろ聞かれます。

しかし、ほとんどは免疫に対する効果は全く実証されていないだけでなく、3つの疾患での効果も研究されていません。
3つの疾患の患者さんが免疫が低下して、あるいは異常に亢進しているわけではありませんので、免疫を上げる、下げることを考えることは無意味です。

サプリメントなどでお金を使うのは無駄です。貯金をするか、おいしいものを食べてください。多額のお金と時間をかけて、効果と安全性が研究された治療薬を利用するべきです。

MSの再発の過半数では感染症が引き金になっていることがわかっています。そのかなりの部分は不顕性感染といわれ、症状は出ていないものです。
視神経脊髄炎、MOG抗体疾患ではまだ明確な証拠はないのですが、多分そうだろうと考えられます。

MSではヘルペスグループのウイルス、なかでもEVウイルスといわれるものの関連が疑われています。
しかし、特定の一つのウイルス、細菌の感染で起きるのではなく、いろいろな感染が免疫を揺さぶって、結果として発症や再発の要因になっているんじゃないかと思います。

ですから感染が明らかにある人からはマスクで守ります。
あとはうがいが大事。人の実験で、ヨードの液体と水のうがいを比較したら、水の方が勝ったということがあったので、水で十分です。

タバコはMSに悪いです。これは明確な論文があります。

動物性の脂肪が良くないとか、青い背中の魚が良さそうとかいうのは証拠が十分ではありません。

人間ではどうかまだ分かりませんが、最近の動物モデルでは食塩が良くないと分かっています。

激しいストレスはMSの再発を増やすことが分かっていますが、日常的ストレスの程度ではありません。
アメリカ軍の兵隊でMSの方で、本土のキャンプにずっといた人と、戦場に行かされた人とを比較すると、戦場に行かされた人は2倍くらい再発が多かったそうです。

それからデンマークのMSのお母さんの追跡調査では、突然に予期せず赤ちゃんをなくしたお母さんは、一年間くらいは再発が倍ぐらいあったそうです。
そういう強烈なストレスは、かなり影響があると考えられます。普通の生活での夫婦喧嘩や仕事の影響は気にしない方がいいでしょう。
同じストレスでも本人の受け取り方次第です。できるだけ心を平静に保つことが大事と思います。

身体的な問題がある方もない方でも、運動することが非常に大事です。
人間の体の全ての細胞には、利用し、刺激が与えられなかったら自殺するプログラムが事前に組み込まれています。

私の妻が腕を骨折し、2週間ギブスを付けていてギブスを外したら、腕の太さが反対の腕の半分になっていたということがありました。
刺激が何も来ない状態が続きますと、その細胞自身がもう自分は要らないと判断し、体にとって負担になると、無くなっていくのを選ぶような遺伝子が組み込まれています。
ですから脳も体も利用し続けることが必要です。

現代の普通の生活をしていたら、運動量が少ないために、70歳の方は20歳に較べ筋肉量が半分になります。
MSがあるために動かせない、動かさないということになると、これを加速させることになります。
動かせるものはできるだけ動かし、毎日続けることが大切です。

本を読んだりテレビを見たり会話をすることも、脳を活性化させるために大事です。
社会生活、職業生活を続けることもいいことです。
全ての皆さんに普通の社会生活、普通の家庭生活を維持できるよう頑張っていただきたいです。

将来の夢があるなら、その実現のため、病気の進行を停止する、効果の高い治療を開始し、続けてください。
それが可能な時代になっています。私もできる限りサポートさせていただきます。

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