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ニュース

2018/2/5

MS治療薬の選択に進行性多巣性白質脳症(PML)の知識が重要

有効性の高いナタリズマブ(タイサブリ)、フィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)、ジメチルフマル酸(テクフィデラ)などのMS治療薬に共通する重大な問題点は、使用が長期になると、リスクの有る方の極く一部に副作用として進行性多巣性白質脳症(PML)が発生することです。
薬剤により頻度、発生までの使用期間には大きな違いがあります。発症すると重大な障害をきたす可能性があるので、薬剤毎の防止策を知ることが重要です。
担当医の知識、対応能力、熱意により大きな差がでます。不十分な知識のために過剰に恐れて、リスクの無い方にも有効な治療をしない弊害が生じています。 正確な知識を持って頂くことが大切ですので、以下に説明します。


PMLはJCウイルス(JCV)の脳感染症

PMLはJCV (John Cunningham氏から分離されたウイルスの意味) 感染者の極く一部でのみ稀に発生するJCウイルスの脳感染症です。ウイルスに感染しているMS患者さんが長期にMS治療薬を利用していると稀に発生することがあるので、自分にリスクが有るのならどの程度か、リスクは無いのかを知ることが大切です。

JCVはもともとマウスのウイルスですが、日本人の70%程度に慢性的に感染しています。口から感染すると言われていますが感染経路は良く分っておらず、感染を防ぐことは困難で加齢に従い感染率が高くなります。
リンパ球、腎臓など各種臓器に潜伏して感染し、尿中にも排出されていますが、障害を生じることは無く、人間と平和共存しています。健康人では脳に感染することはありません。

通常はTリンパ球がJCVウイルスが脳の血管内皮を通り脳内へ感染するのを防いでいます。
一部のMS薬はこの作用を低下させ、脳へのJCV感染を起こす事があるようです。PMLを発症している脳に感染しているJCVを調べるとウイルスが変異(変化)していますので、そうした変異したウイルスをもっている稀な方でのみ脳への感染が起きるのではないかと言われています。
JCVウイルスは脳のオリゴデンドログリアに主に感染します。オリゴデンドログリア細胞はMSの免疫攻撃標的となる細胞で脳の白質に多く存在しますので、MSと同様に脳白質に病巣が主に出現します。

MRIによる無症候PML病巣の早期発見が可能で、遅れた診断が後遺症に影響

リスクの有る場合は専門的MRI撮影を3月毎に実施することが重要です。
フレア法MRI撮影で、無症状のPML脳病巣を発見する事がほぼ可能と言われている。症状の無い段階で治療を中止することで障害を残さない治療がほぼ可能と言われています。
ただ、進行が速い例外もあります。

神経内科の多くの医師にとっては稀な疾患であるので知識に乏しいことが多い。
これまでMS治療中に発生した例のほとんどでは、定期的なMRI撮影ができておらず、早期発見、早期診断がされず、治療が遅れることが悪い結果や死亡につながってきた。
正確な対応、予防が重要であり、万一発症しても、早期診断により障害の出ない結果や、最小限の障害に止めることが重要である。

ナタリズマブ治療中のPMLでは無症候で発見し、早期に治療を中止すれば、多くの場合に障害の進行が無いか、極く軽度で治療できることが示されている。
従って、フィンゴリモドでのPMLでも、定期的なMRI撮影により無症状の潜在的なPML病巣を早期に発見し、後遺症の最小化を目指すことが望ましい。
担当医師がPML早期発見のためのMRI撮影条件と読影のノウハウを習得することが重要である。

MSにおけるPMLの治療

PMLが発症すると、現時点ではMS治療薬使用を中止除去することが最大の治療であり、他に明確に有効な治療はありません。
治療薬が体内で減少あるいは除去されると感染JCウイルスに自らのTリンパ球が強く攻撃できるようなりますが、数か月間進行が続いた後、進行が停止して回復に向かいます。しかし重大な後遺症を残すことが多い深刻な副作用です。

PMLは白血病やHIV感染でも発生するが、免疫能を正常化することが困難であることが多く、治療困難で死亡例が多い。MS治療薬で発生したPMLは原因となった治療を中止することで、4月程度後で進行は停止するので、ほぼ必ず死に至るHIVや白血病でのPMLとは異なる。

タイサブリ点滴やフィンゴリモド服用を中止し3,4月の後に進行拡大は停止し、回復に向かう。リハビリテーションが重要。発見が遅れれば、重大な後遺症が残ることが多い。

PMLで障害が残るリスクに較べて、MSの再発や進行のリスクの方が重大で可能性も高いと判断し、JCV抗体価が高くても治療を継続する方もあります。

安全性確保の問題は、医師の診断能力、システム、熱意が大きく影響します。

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